ドル円は上値追い続く 米CPIはインフレ鈍化を示唆もドル買いの反応=NY為替概況
ドル円は上値追い続く 米CPIはインフレ鈍化を示唆もドル買いの反応=NY為替概況
きょうもドル円は上値追いが続いており、144円台後半まで上昇した。この日の米消費者物価指数(CPI)は予想を若干下回る程度ではあったが、インフレ鈍化を示唆するには十分な内容で、短期金融市場ではFRBの年内利上げの確率を低下させている。少なくとも9月FOMCでの利上げはほぼないと見られている状況。
これを受けて為替市場では一旦ドル売りの反応が見られ、ドル円も143円台前半に下落していたが、動きが一巡すると、逆にドルの買い戻しが強まっている。
本日の米CPIは、ディスインフレ、FRBの利上げサイクル終了、そして、底堅い米経済といったソフトランディングのシナリオに沿った内容でもあり、その場合、為替市場はドル買いとの見方も根強くあるようだ。
また、この日の米CPIはインフレ鈍化傾向を示唆する内容となったものの、8月下旬にワイオミング州のジャクソンホールで開催されるFRBのシンポジウムで、パウエルFRB議長はタカ派姿勢を温存するとの見方もあり、ドル買いに繋がっているようだ。
イベントを通過したことで、円キャリー取引が復活しているとの指摘も出ている。日銀は先日の決定会合でイールドカーブコントロール(YCC)を修正して来たものの、日本の10年債利回りはさほど上昇していない。日銀は10年債の許容度を拡大させてはいるものの、実際は緩和姿勢を堅持しており、そのことが国債市場に反映されているものと見られる。
ユーロドルは1.10ドルを割り込む展開。この日の米CPIを受けて、一旦1.1065ドル付近に上昇し、21日線に顔合わせしたものの、その後は戻り売りに押される展開が見られている。このところのユーロドルは100日線でサポートされ、底堅さも見せているが、ECBがこれまでのタカ派姿勢を緩和させる中で、ユーロに対する強気な見方は徐々に少なくなって来ている。
ECBがハト派的な発言を強め出している背景には、ユーロ圏経済の軟調さがある。インフレは目標の2%にはほど遠いものの、これ以上の利上げが景気を後退させるとの懸念が高まっている。これまでユーロ圏経済の足を引っ張ってきたのは、ギリシャなどの南欧諸国だったが、いまはユーロ圏で最大の経済大国であるドイツに非難の矛先が向けられている。
これまではドイツの機関車がユーロ圏の立ち直りを支援したいたが、いまやドイツは「欧州の病人」とも呼ばれている。G7で唯一のマイナス成長国となっており、製造業と建設業が衰退し、サービス業の成長も弱体化している。それに輪をかけて、主要貿易相手国である中国経済の低迷が事態をさらに悪化させている状況で、しばらくは脆弱な状況から抜け出せないと見られているようだ。
ポンドドルも米CPIを受けて、一旦1.28ドル台まで買い戻される場面が見られたものの、直ぐに下向きの流れに戻している。7月下旬からの下落基調に依然として変化はない。
明日は6月の英月次GDPが発表されると同時に、4-6月期(第2四半期)のGDPも発表される。予想は前期比で0.0%が見込まれているが、マイナス成長に陥った場合はポンドドルは下げを加速させる可能性もあるとの指摘が出ている。
100日線が1.26ドル台前半に来ており、目先の下値メドとして意識される。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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