ドル円は一時142円台前半まで下落 ここ数日のドル買い一服=NY為替概況
ドル円は一時142円台前半まで下落 ここ数日のドル買い一服=NY為替概況
きょうのNY為替市場はここ数日のドル買いが一服し、ドル円も戻り売りに押された。東京時間には143円台後半まで上昇していたものの、NY時間に入って一時142円台前半まで下落する場面が見られた。
東京時間には日銀が臨時オペを通知したことをきっかけに円安がドル円を押し上げた。ただ、株式市場が不安定になっており、リスク回避の円高がドル円を圧迫している。一方、ドル高への期待も根強く、ドル円は下値をサポートされている模様。
米国債利回り上昇と世界的な株安を背景に、リスク回避からドルは堅調に推移していた。ただ、明日の米雇用統計を前に投資家は警戒感を強め、ドルロングのポジション調整を出していた可能性もありそうだ。
日銀は今週2度目の臨時オペを通知した。海外勢の一部からは「2つの観測が1つのパターンを作るわけではないが、いまのところ、0.05%ポイント刻みで10年物日本国債の利回り上昇を日銀が許容している可能性がある」といった声も出ている。「米国債利回りが急速に上昇する環境下では、このような緩やかな上昇は、ドル円の上昇を抑えるのを支援するだろう」とも述べた。
ユーロドルも下げ渋っており、1.09ドル台半ばまで買い戻されている。きょうは一時1.09ドル台前半まで下落し、100日線に顔合わせする場面も見られていた。
市場はECBの9月利上げの可能性を後退させてはいるものの、それへの言及も根強くある状況。ECBがコアインフレに重点を置いていることが、その大きな背景にあるようだ。しかし、経済活動の低迷、基調インフレに関する良好なニュース、理事会メンバーのハト派姿勢の広がりはすべて、ユーロ圏の金利がすでにターミナルレート(最終到達点)に達している可能性を高めている。最近発表されたデータは追加利上げが必要であることをほとんど示唆していない。
きょうはドイツの6月の貿易収支が発表になっていたが、この結果を受けて市場からは、「ドイツの輸出は経済を牽引していない」との指摘も出ている。ドイツの輸出は依然として低迷しており、6月は前月比0.1%増に留まった。貿易はもはやドイツ経済の強い回復力を示す成長ドライバーではなく、むしろ足を引っ張っている印象も受けるという。ドイツの輸出を圧迫している要因としては、サプライチェーンの摩擦、より細分化された世界情勢、そして、中国の製造業の躍進を挙げている。
ポンドドルも一時1.27ドルまで買い戻され、ロンドン時間の下げを完全に取り戻す展開。きょうは英中銀金融政策委員会(MPC)の結果が発表され、予想通りに0.25%ポイントの利上げを実施し、政策金利を5.25%に引き上げた。英中銀は「インフレが持続すれば金利は上昇する可能性」との文言を維持し、追加利上げの可能性に含みを持たせている。ただ、経済の回復力も監視していることを示す一行を追加したほか、現在の政策が「制限的」とみられていることも新しく加えた。
これらを受けて市場では、追加利上げの可能性は高いものの、利上げサイクルの終了は近いとの見方が浮上している。短期金融市場ではターミナルレート(最終到達点)の予想が低下し、現在は5.75%で利上げ終了との見方で織り込んでいるようだ。前日までは6.00%で推移していた。一時期の6.50%以上に比べれば、かなり低下した印象だ。
英中銀はまた、インフレとの闘いには長期に渡る借入条件の引き締めが必要になるかもしれないと警告している。景気へのリスクも高まっていることから、利上げサイクルは早期に終了させ、インフレを2%目標に戻すために、高い金利水準を長期間維持する方針に変更した可能性もありそうだ。
なお、一部で注目されていた量的引締め(QT)のぺース拡大については、10月以降の保有国債の売却を来月に決定すると述べていた。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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