リスク回避の円高でドル円は一時133円半ばに下落 米地銀への懸念が再燃=NY為替概況
リスク回避の円高でドル円は一時133円半ばに下落 米地銀への懸念が再燃=NY為替概況
きょうのNY為替市場でドル円は一時133円台半ばまで下落した。米地銀への懸念が再燃しており、本日の市場はリスク回避の雰囲気が広がっている。それに伴って為替市場では円高の動きが出ている格好。
米地銀については、ウエスタン・アライアンスが身売りの可能性など選択肢を検討との報道が流れた。協議はまだ初期段階にあるものの、アドバイザーを採用し選択肢を検討しているという。本日は米地銀のパックウェストも同様の発表が行われ、市場では米地銀への不信感が再燃している。ただ、ウエスタン・アライアンスは報道を否定。
ドル円は前日のFOMCを受けて上値の重い展開が見られている。200日線を下放れしているほか、本日の21日線が134円台前半に来ており、その水準を下回る展開。前日のFOMCでFRBは、予想通りに0.25%ポイントの利上げを実施したが、声明からは追加利上げを示唆する文言が削除されていた。6月以降のヒントを探っていた市場には、FRBは今回で利上げを停止したがっていると写ったようだ。
しかし、インフレが依然として高い状態が続いている中、FRBは追加利上げの可能性は残した印象。パウエル議長は「データに基づいて会合ごとに決定する」と述べていたが、予想よりも高インフレが続いた場合、利上げを継続する可能性を残すと伴に、市場の年内利下げ期待は引き続き否定していた。
前日のFOMCを受けて市場にはドル安期待が高まっている。そして、その受け皿が円との見方が出ているようだ。各国中銀が利上げサイクルを終了し、利下げを模索し始める中、主要国で唯一日銀だけが金融緩和を続けている。
植田新総裁は先日の決定会合で緩和解除に慎重姿勢を滲ませていたが、ペースはともあれ、日銀の次の行動は緩和解除との見方が海外勢中心に根強い。その場合、他国の中銀とは行動が真逆になる。それに加えて米欧では、これまでの急速な利上げの副作用として銀行問題が浮上している。米国では3行の地銀がすでに破綻しているが、さらに増えそうな気配だ。その点、日本の金融機関はその懸念が小さい。別の意味で日本の地銀は問題ありなのかもしれないが、今回の問題とは質が違う。
それらの点から、海外勢中心に円高シナリオを描く向きも少ないようだ。ドル円で125円といった声や120円の可能性まで指摘されている。本日のオプション市場では、年末までに125円にタッチする確率を60%近くで見ているようだ。
ユーロドルは一時1.09ドル台に下落する場面が見られたものの、1.10ドル台に戻す展開。1.10ドルを割り込むとファンド勢の買いも観測されているようだ。きょうはECB理事会が開催され、予想通りに0.25%ポイントの利上げを実施した。一部のタカ派な理事からは0.50%ポイントの利上げの主張もあったようだが、最終的に前科一致で決まったようだ。しかし、ECBはFRBとは違い、追加利上げの可能性を強調している。ラガルド総裁は会見で、利上げを止めるつもりはないとの認識を強調していた。
また、タカ派の理事への譲歩なのか、ECBは資産購入プログラム(APP)で購入した債券の満期償還金の再投資を7月に停止する方針も示した。ECBは3月以降、月150億ユーロ程度のペースで保有債券を減らしてきたが、ラガルド総裁によると、停止は平均で月250億ユーロに相当するという。
エコノミストからは、6月の利上げは有力視されるものの、7月はなお未知数との見方が出ている。今回の0.25%ポイントへのレベルシフトは、ECBの政策見通しにおける重要な転換を示唆しているという。インフレ指標が許容すれば、6月で利上げサイクルが終了する可能性もあるとしている。
ポンドドルは11カ月ぶりの高値となる1.2595ドル付近まで一時上昇。一部からは、ポンドドルの上昇はドル安によるところが大きいが、英国を含む欧州の銀行は米銀よりも混乱が小さいという見方も、ポンドに一定の追い風を与えているとの指摘が出ている。ただ、英中銀が年内にさらに2-3回の追加利上げを行うとの見方には共感していないとも述べている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。