ドルの買い戻しが強まる ドル円は130円台後半まで一時上昇=NY為替概況
きょうの為替市場はドル買い戻しが強まる中、ドル円は130円台を回復。一時130円台後半まで上昇し、本日131.10円付近に来ている21日線をうかがう動きも見られた。ドル買いの具体的な材料は見当たらないものの、米国債利回りが上昇していたことが、ドル買い戻しを誘発した模様。
一部からは、市場が米インフレの伸び鈍化と米金利上昇を見極めようとする中でドルは高くなっているとの指摘も出ていた。米大手銀のエコノミストはレポートで、6月までに総合インフレが前年比2.25%まで伸びが鈍化するとの市場の価格設定はあり得ない話ではない。しかし、食品・エネルギーを除いたコア指数と両方でのインフレ鈍化のシナリオまでは難しいという。物価上昇との闘いが長引けば、米金利は他の先進国よりも高く推移することになり、それに伴いドル高が進む可能性があると指摘した。
一方、日銀が実施した5年物の共通担保資金供給オペの応札を受けて円金利が低下したこともドル円の買い戻しをサポートしているようだ。ただ、ファンド勢の円ショートの解消は進んでいるようだ。先週末に米商品先物協会(CFTC)が発表した1月17日時点での建玉報告によると、レバレッジ・ファンドの円のポジションは依然として売り越しではあったものの、その水準は2021年2月以来の低水準となっており、アセットマネジャーは買い越しに転じていた。
日銀が4月の総裁交代以降、早期に緩和解除に動くという思惑の半面、FRBの利上げサイクルにメドが見えて来たことでファンド勢は円ショートの解消を活発化させているようだ。
ユーロドルは戻り売りに押され、1.08ドル台半ばに伸び悩んだ。ただ、きょうのユーロドルは一時1.0930ドル近辺と4月以来の高値水準まで上昇するなど上値への期待が高まっている。大きな心理的節目となっている1.10ドルを視野に入れる動き。
タカ派なECBへの期待がユーロをサポートしている模様。ラガルドECB総裁は先週末に、「ECB理事はインフレとの闘いを止めてはならない」と述べていたが、ECBは2月、3月とも0.50%ポイントの利上げを行うと見られている。FRBが利上げに対して一歩後退したのとは違う。
市場のECBへのタカ派期待は、今年の成長見通しが予想ほど悪くはないのではとの期待もベースにあるのかもしれない。市場では今年のユーロ圏経済を上方修正する動きが出ている。昨年第4四半期のパフォーマンス改善とエネルギー価格低下から、今年のユーロ圏経済は0.5%のプラス成長が見込まれるという。従来の0.2%から上方修正。
ただ、上方修正にもかかわらず、ユーロ圏に関するシナリオはほぼ変わらず、同地域の経済は第4四半期から第2四半期にかけてほぼ停滞する可能性が高いとも指摘。ECBの引き締めが2023年と2024年の両方の成長に大きな足かせとなり、見通しに対するリスクは依然として高いという。ECBは5月までに政策金利を3.25%まで引き上げ、利上げを一旦停止すると見ているようだ。
ポンドドルも戻り売りに押され、一時1.23ドル台前半まで下落する場面が見られた。先週の英消費者物価指数(CPI)と英雇用統計のデータがインフレ鈍化の兆候を示さなかったことから、英中銀は次回2月の政策委員会(MPC)で0.50%ポイントの利上げを行うとの強気な見方が広がっており、ポンドドルは更なる上値追いを期待する声も大きい。確かにインフレが総合指数で10%超を維持している中、これまでの利上げペースが十分だったとは言えない。
しかし、英経済の先行きへの見通しが暗い中で、英中銀が慎重姿勢を堅持すれば、ポンドは下落の可能性があるとの指摘も出ている。また、ポンドの圧迫要因はそれだけではなく、EU離脱による経済的影響が顕著になって来ていることもポンドの重荷となる可能性があるという。ポンドドルは年内に1.10までの下落を予想しているようだ。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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