為替相場まとめ10月24日から10月28日の週
24日からの週は、ドル売りが優勢。一連の米経済指標が弱含みとなったことをきっかけに、今後の米金融当局の利上げペースが鈍化することが先取りされている。米債利回りは週を通して低下傾向を示し、米10年債利回りは4.3%程度でピークアウトすると4%割れへと低下。ドル売りの動きを側面から支えた材料としては、ドル円とポンドドルの動向がある。ドル円にとっては度重なる政府・日銀の介入(覆面介入)によって、市場には150円が上値の心理的な壁となったことがドル高の調整につながっている。米国の容認姿勢も安心感を与えた。ただ、週末の日銀決定会合後の会見で黒田総裁は「今すぐ利上げ・出口来るとは考えていない」と発言、さらに日銀の11月国債買い入れ予定で、超長期ゾーンの買い入れ回数増加と緩和策が強化、円安の反応をみせた。日米金利差拡大観測が再認識される面もあり今後の動向が注目される。 ポンドドルにとっては、トラス前政権の打ち出した財源無き大型減税策がポンド急落を招いたのだが、紆余曲折がありながらも財政規律を守るスナク政権に移行できたことがポンド買いを誘った。一時1.16台とトラス前政権による混乱前のポンド高・ドル安水準を回復した。カナダ中銀は50bpと市場予想75bpを下回る利上げ幅にとどめた。市場に利上げペースの減速を印象付けた面があった。ECB理事会では市場の想定通り75bp利上げが実施された。ECB総裁会見での経済減速見通しを受けてユーロドルが下落、ドル売りが一服する場面があった。来週は米FOMCにおけるパウエルFRB議長の会見内容が注目される。近い将来の利上げペース鈍化についての言及があるのかどうか、市場は強い関心を持っている。そして、米雇用統計、その次の週の米消費者物価指数と続く。ドル相場に関する材料は豊富だ。
(24日)
東京市場は、ドル円が激しく振幅。先週末に152円手前から145円台まで値を落としたドル円、その後148円台を付け、147円台後半で週の取引を終えた。週明けは同水準近くでの推移の後、円安が進行。149円台後半までと朝から2円超の上昇を見せたところで、一気の円買いが入った。介入とみられる動きであるが、当局はノーコメント。この動きで145円台まで値を落としたものの、その後買い戻しが強まり、149円ちょうど前後まで。149円ちょうど前後で完全に上値が抑えられるも、下値もしっかりで、朝の振幅が収まり東京勢が入ってからは動きが膠着した。ポンドドルは英国23日、日本時間24日早朝にジョンソン前首相が保守党党首選の不出馬を表明し、ポンド買いに。先週末に1.13ちょうど前後で引けたポンドドルは1.14台まで上昇。167円ちょうど前後で引けたポンド円は168円台に乗せ、さらにその後のドル円の149円台後半までの上昇に168円80銭前後まで買われた。ポンド円はドル円の急落に165円台を付け、168円台に戻すという不安定な動き。その後さらに169円台まで上値を伸ばしている。ユーロはポンドに準じた動き。朝のポンド高に0.99近くまで上昇したユーロドルは、その後0.98台での推移。ドル円の上昇にも支えられ147円台前半まで上昇したユーロ円は143.80近辺まで急落。その後146円台後半へ戻した。
ロンドン市場は、比較的落ち着いた展開。ドル円は東京朝方の乱高下のあと買戻しが入り148円台後半でしばし膠着。ロンドン時間に入ると米債利回りの下げ渋りとともにじりじりと買われて149.40台まで買われている。ただ、円買い介入への警戒感もあって一段の上値追いには慎重。市場筋の推計によると21日の介入規模は過去最大の5.4~5.5兆円に上るとみられた。英国では保守党党首選でスナク元財務相が党所属議員の半数を上回る支持を得たと報じられている。週末にジョンソン元首相やモーダント候補が相次いで出馬を撤回しており、スナク首相の誕生がほぼ確定的となった。英国債が買われ、市場は歓迎しているもよう。ただ、ポンド相場は静かな展開。対ドルでは1.13台を離れず。ポンド円は169円を挟んだ上下動に落ち着いている。ユーロ相場も静か。米債利回りの上昇がややドル買い圧力となりユーロドルは0.98台半ばから0.98手前水準まで小幅に軟化。ユーロ円は146円台後半を中心に底堅く推移している。この日発表されたユーロ圏や英国の10月PMI速報値は高インフレやエネルギー不安を受けていずれも低下したが、市場は目立った反応を示していない。中国での新体制発足を受けて中国株などが大幅安となり、リスク回避圧力で豪ドルが軟調だが、その他主要通貨の反応は限定的。
NY市場で、ドル円は軟調に推移。一時148円台に下落。先週末のNY時間に財務省による大規模な為替介入が入ったと思われ、本日の東京時間やロンドン時間にもその気配が見られていた。この日発表の日銀当座預金増減要因の財政等要因のデータからは、金曜日の深夜の介入は5.5兆円規模との推測も出ている。150円を意識した介入とも思われ、市場も慎重になっているようだ。ただ、FRBのタカ派姿勢と日銀の金融緩和継続姿勢に変化がない限り、ドル円の上昇トレンドに変化はないものと思われ、下値では活発な押し目買いが引き続き入っている。ユーロドルは0.98台後半へと買い戻された。木曜日のECB理事会では75bp利上げが確実視されているが、市場では織り込み済みとみられている。12月理事会が焦点に。今後数四半期に及ぶエネルギー主導の景気後退による暗いユーロ圏の経済見通しを考慮すると、ユーロドルの強気シナリオは描きづらい。ポンドドルは緩やかな戻り売りに押され、1.12台に値を落とした。リスク回避の雰囲気が一服しており、ドル買いの動きも一服しているものの、ポンドの上値は重い。
(25日)
東京市場は、落ち着いた展開。ドル円は東京序盤に148円台半ばまで軟化する場面があったが、下値は堅くすぐに148円台後半に戻している。しかし、政府・日銀による円買い介入への警戒感から上値は抑えられ、前日終値を挟んでもみ合いとなっている。ポンドはしっかり。英与党・保守党の党首選挙でスナク元財務相が選ばれ、首相に就任することになったことを受けて、英経済への不透明感が後退。ややポンド買いが優勢に。午前にポンドドルは1.1325付近、ポンド円は168.70付近まで一時上昇したあと、上げ一服となっている。ユーロは上げ一巡。午前にユーロドルは0.9899付近まで、ユーロ円は147.42付近まで上昇したものの、その後は上値重く推移した。
ロンドン市場は、全般に動意薄。ドル円は東京市場からの148円台後半での膠着状態が継続。先週末から度重なる覆面介入とみられる激しい値動きがあり、投機的な行動がひとまず封鎖された格好。今後、米国との調整がスムーズに行くのかとうかが懸念されるが、現時点では小康状態を保っている。欧州通貨がまちまちの動き。ポンドが堅調に推移する一方で、ユーロは上値が重い。ユーロポンドが下落している。ポンド相場にとってはスナク英首相の誕生が市場の安定に寄与しているようだ。一方で、その経済手腕についてはまだ未知数な面があり、31日の中期財政計画の発表までは予断は許されない。ユーロポンドの下落には前日の上昇に対する調整の面もあったようだ。ユーロ相場にとっては10月独Ifo景況感指数が予想を上回ったことは好材料だが、Ifoエコノミストによると第4四半期がマイナス0.6%成長と予測されており、冬季のリセッションの公算が高まっていると指摘された。ポンドドルは1.1270近辺を安値に1.1340近辺まで上昇。一方、ユーロドルは0.9880近辺が重くなり、0.9850付近まで軟化している。ユーロポンドは0.8750付近から0.87台割れ水準へと下落している。
NY市場では、ドル売りが強まった。この日発表の米消費者信頼感指数を受けてドル円は一時147.55付近まで売りが強まる場面が見あった。米国債利回りが急低下しており、米株式市場に買い戻しが続いていることがドルの戻り売りを後押しした。市場ではFRBが利上げペースを緩めるとの思惑が広がっている。直近発表になっている米経済指標に弱い内容が多いことがその背景。しかし、FRBがタカ派政策を後退させるのは時期尚早であり、それは高インフレとの闘いを危うくするリスクがあるとの指摘も。11月1-2日にFOMCが開催されるが、それに向けて一旦調整の流れが出る可能性があるのかもしれない。ユーロドルは買い戻しが加速。一時0.9975ドル付近まで買い戻された。パリティ水準を意識する動きに。ポンドドルは1.14ドル台後半まで買い戻された。目先は今月初めに上値を拒んだ1.15ドルの水準を回復してくるか注目される。スナク氏が首相に就任。市場は安堵感を示している。
(26日)
東京市場で、ドル円は小幅の振幅。前日海外市場での下落の後はいったん調整の動き。昼前には148.41近辺まで買われた。日経平均が堅調だったことや、昨日変動許容幅ぎりぎりまで進んだ元安の動きが落ち着き、リスク警戒の動きが後退したことなどもドル円の支えに。しかし、午後に入ると上値が重くなり、148円台割れとなっている。ユーロドルは午前中のドルの買い戻し傾向で0.9950割れも、午後に買い戻された。前日海外市場に見られたユーロ買いの勢いがなく、落ち着いたレンジに。午前中の消費者物価指数が強めに出た豪ドルは、対ドルで0.6410台としっかりとした推移。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。前日から引き続き米債利回りの低下がドル売り圧力に。10年債利回りは4.10%付近から一時4.02%台に低下。市場では今後の米利上げペース鈍化観測が広がりつつある状況。また、この日のドル売りは対ポンドが主導している。ポンドドルは1.14台半ばから一時1.16台乗せまで買われた。トラス前英首相の就任時の水準まで戻している。対円や対ユーロでもポンド買いが優勢。スナク英首相の誕生を市場は引き続き歓迎している。前日には英財務相と英中銀総裁が会談し、両者は英経済に対する信頼と安定を回復するために緊密に協力することで合意した。きょうは英政府が中期財政計画とOBR経済予測の発表を11月17日に延期することを発表。中期的な債務削減を示す、政治的に不人気な選択もいとわず、正しい決断のために延期した、などとしている。ユーロドルも連れ高となり、約1カ月ぶりにパリティ水準(1ユーロ=1ドル)を回復した。ドル円は148円台割れから一時146円台後半まで下落した。その後はドル売り一服となっているが、前日よりもドル安の水準は維持している。
NY市場でもドル売りの地合いが続いた。ドル円は146円台前半まで下落した。本日も米国債利回りが低下し、ドル円を押し下げた。市場では、FRBが近く利上げペースを減速させるとの見方が広がっている。このところ弱い米経済指標が相次いでおり、米国債利回りも低下する中で、市場にその見方が広がっている。11月2日の米FOMCの結果発表を確認するまでは、利上げペース減速を意識した取引が続く可能性がありそうだ。ユーロドルはパリティ(1.00ドル)を回復。1.00ドル後半まで上昇した。明日のECB理事会を前にリバウンド相場に復帰するか、注目の展開に。ポンドドルは強い上値抵抗が観測された1.15を突破し、1.16台まで一気に上昇した。市場にリスク選好の雰囲気が広がる中、景気敏感通貨の位置づけのあるポンドは買い戻しを膨らませているもよう。前日にスナク政権が誕生し、ポンドにはひとまず安心感が広がっている。英政府は財政計画発表を11月17日に延期すると発表していたが、特にポンドへのネガティブな影響は見られなかった。カナダ中銀の金融政策委員会の結果が発表され、予想外の0.50%ポイントの利上げに留めた。これを受けカナダドルは売りの反応を強め、カナダ円は一時107円台半ばに急落。ただ、リスク選好の雰囲気が広がる中で、売り一巡後は買い戻しが強まり下げを戻した。
(27日)
東京市場では、午後にドル円が急落。午前は前日の下げを受けて146円台前半での揉み合い。午後に146円を割り込むと、一気に円買いが加速、145.11近辺まで安値を広げた。 円独歩高となっており、ユーロドルなどの動きは限定的。米10年債利回りも目立った動きを見せていない。ユーロ円は147円台での推移から146.20台へと下落。ポンド円は午前に170円付近まで買われたあと169円台後半で推移していたが、午後には168.70台まで下落した。円買い材料は特に見られず、欧州勢の本格参加を前に、短期筋からのポジション調整が入ると、買い注文が薄くなっていたところで値が大きく動いた形か。
ロンドン市場は、ドルの買い戻しが優勢。このあとのECB理事会の結果発表、ラガルド総裁会見、米GDP速報値発表などを控えて、先週末からのドル安の流れに対して調整が入っている。ドル円は東京午後に146円台割れから145.11レベルまで下落したが、ロンドン時間に入ると一転して買われている。米債利回りの上昇とともに146.48レベルまで買われ、本日の高値を更新。ユーロドルは東京朝方の1.0094近辺を高値にその後は上値重く推移。ロンドン時間には1.0050割れから安値を1.0030近辺まで広げている。ポンドドルも1.1645近辺を高値に上値を抑えられて、ロンドン時間には1.1550近辺に安値を更新。クロス円は主にドル円の値動きに連動しており、ユーロ円は147円台から146.50付近で下に往って来い。ポンド円は170円手前が重くなり、169円台割れまで下押しされたあとは、ロンドン時間には169円台前半で下げ渋りとなっている。米10年債利回りは4.00%付近から4.08%近辺へと上昇。欧州株は独仏指数など欧州大陸市場が軟調。英株は底堅く推移。いずれもイベントを控えた調整の動きにとどまっている。
NY市場では、ECB理事会にユーロ売りの反応を示した。ユーロドルはパリティ(1.00ドル)を割り込む動きが見られている。ECBはこの日の理事会で0.75%ポイントの利上げを決定し、中銀預金金利を1.50%まで引き上げた。ユーロドルは売られ、ネガティブな反応を見せた。0.75%ポイントの利上げは予想通りで驚きはなかったものの、以前ほどのタカ派な雰囲気はなかったようだ。ラガルド総裁は会見で、経済活動は第3四半期に著しく減速した可能性が大きいとし、第4四半期と23年第1四半期はさらに減速するとの見方も示した。これらを受けて短期金融市場でも利上げ期待が後退しており、今回の利上げサイクルのターミナルレート(最終着地点)の予想を従来の3.25%から2.75%程度に低下させている。ポンドドルは上昇一服も、1.15台をしっかりと維持。リバウンド相場の流れは継続。ただ、市場は英中銀の11月の利上げ予想を後退させている。スナク新政権が財政健全化に向けた緊縮の道筋を示したことが背景。短期金融市場では11月の利上げ幅は0.75%ポイントを下回る水準で織り込んでいる。ドル円は戻り売りの動きで147円近辺が重かった。一時145.70前後まで下押しされたあとは、146円台前半での揉み合いに。米GDP速報値は予想通りの上昇で、テクニカル・リセッションを脱した。デフレータの伸びは鈍化した。米耐久財受注は伸びを欠いた。米債利回りは引き続き低下している。
(28日)
東京市場では、ドル円が神経質に振れた。この日注目された日銀金融政策決定会合では想定通り金融政策が据え置かれた。ドル円は146.86近辺まで買われたあと、すぐに145.99レベルまで反落。その後は146円前半から半ばで激しく売買が交錯した。展望リポートでは、物価目標が引き上げられ、成長見通しが引き下げられたが、市場の想定内の内容だった。黒田日銀総裁会見待ちとなっている。ユーロドルやポンドドルには買戻しの動きがみられた。ユーロドルは1.0000手前まで、ポンドドルは1.1600手前水準まで反発も、その後は上値を抑えられている。全般に方向性に欠ける相場展開だった。
ロンドン市場は、ドル高とともに円安が進行。ドル円は146円台半ばから147円台後半へと上伸している。この日の日銀決定会合では市場想定通り金融政策が据え置かれた。注目の黒田日銀総裁会見では、超緩和政策の継続姿勢が堅持されている。特に、「今すぐ利上げ・出口来るとは考えていない」との発言が円売りを誘った。また、日銀は11月の国債買い入れ四半期予定で、超長期ゾーンの回数を増加させた。四半期予定を初めて変更している。市場は緩和策の強化と受け止めたもよう。ドル円とともにクロス円も買われ、ユーロ円は146円付近から一時147円台乗せ、ポンド円は169円付近から170円台前半へと上昇している。全般的にドル買い圧力も広がった。米10年債利回りが3.92%付近から一時4.01%台まで上昇したことが背景。ユーロドルはパリティ付近が重くなると、0.9927近辺まで下押しされた。ポンドドルも1.16付近で上値を抑えられ、1.1504近辺まで一時下落。その後はクロス円の上昇もあって売買が交錯。ECBが専門家予測調査を公表し、2022年から24年にわたるインフレ見通しが引き上げられた。一方、2022年GDP見通しが小幅に引き上げられたものの、23-24年見通しは引き下げられている。失業率見通しも調査対象期間を通して引き上げられた。昨日のECB理事会ではインフレ抑制のために75bpの大幅利上げが発表され、今後の追加利上げも示唆された。欧州の成長見通しに不透明感が広がっている。
NY市場ではロンドン市場で進んだドル買いの流れが継続も、週末を前に積極的な取引が手控えられた感があり、動きが落ち着いた。ロンドン市場で見られた米債利回りの上昇が一服したことも、ドル買いを抑える形に。ドル円は147円台半ばを割り込む動きが見られたが、下がると買いが出る流れ。米ダウ平均株価の上昇が続いたことも、ドル円の支えとなった。ユーロドルは振幅。ロンドン市場で一時0.9930割れまで下押しされた後、再びユーロ買いドル売りが強まり、0.9990台を付けたが、パリティ手前の売りが崩せず0.9930前後まで値を落とした。東京午前の高値を超えず、ロンドン市場の安値をつけずと、一日のレンジの中での動きに。
執筆者 : MINKABU PRESS
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