為替相場まとめ3月15日から3月19日の週
15日からの週は、ドル相場が振幅した。米FOMC、英中銀、日銀など主要国の金融政策発表の多い一週間だった。米国など主要国長期債利回りの上昇への対応が示されるのかどうかが、大きな焦点だった。米FOMCや英中銀は、早急な対応についての言及はみられず金利上昇を経済回復にともなうものとの認識が示された。ただ、米FOMCではメンバーの金利見通しが市場予想ほどは上方修正されずドル安の反応が広がった。しかし、その後に米長期債利回りの上昇容認との市場の受け止めもあって米債利回りの急上昇とともにドル高方向に押し戻された。英中銀に関しては発表前にポンド買いが先行、発表直後は緩和姿勢維持でポンド売り、その後は長期債利回り上昇容認との見方で再び上昇と忙しく上下動した。ユーロに関しては、前週のECB理事会で債券購入ペースを速めるとしたことや、アストラゼネカのワクチン副反応関連の報道で対ポンドを中心に売り圧力がかかった。ただ、ワクチンについては安全性が確認されて落ち着いた。日銀に関しては、金融政策の「点検」が注目された。事前報道で長期債利回りの変動幅の小幅拡大、ETFの年6兆円のメドの撤廃とともに機動的な購入を行うとの方針などが伝わり、円買いにつながる場面があった。金曜日の決定会合でも同様の措置が発表された。為替は反応薄も、日本株は売られた。いずれの主要通貨においても、米長期債利回りの動向に敏感に反応。ただ、局面ごとの単発的な動きにとどまり、大きな流れはでなかった。株式市場は高値を模索する場面もあったが、金利上昇が不安定要因となり神経質な一週間だった。
(15日)
東京市場では、米債利回り動向をにらんでドル相場が反応。ドル円は109.20台まで買われ、先週火曜日の高値を上回る場面があった。しかし、その後は米10年債利回りが1.63%近辺から1.60%台に低下すると108.98レベルまで反落。その後ふたたび米債利回りが上昇すると109.30台まで上昇した。ユーロドルも1.1930近辺から1.1960台で振幅した。目立った材料に欠けるなかで米債利回りの動きに神経質な展開が続いた。
ロンドン市場は、通貨ごとにまちまちの展開。ドル円は東京午後に109.36レベルまで高値を伸ばしたあとは、上昇一服。ロンドン時間には109円ちょうど近辺まで反落した。ユーロドルは軟調。1.19台半ばが重くなると1.1918レベルまで安値を広げた。一方、ポンドドルは下に往って来い。ロンドン朝方に1.3896レベルまで下押しされたあとは1.3950付近まで反発。対ユーロでのポンド買いが優勢だった。米債利回りの低下がドル円の売り圧力に、独債利回りの低下がユーロ売りにつながっている。ポンドに関してはベイリー英中銀総裁が、市場金利の上昇は、楽観主義がより強まっていること反映、と述べており、ECBとの比較では長期金利上昇の抑制に慎重な姿勢が示されていたようだ。ECBは先週の理事会で債券購入のペースを速めると述べていた。クロス円もまちまちで、ユーロ円が130円台前半で上値重く推移する一方で、ポンド円は152円を挟んだ水準に高止まりしている。
NY市場では、ドル円が底堅く推移。米債利回りは上昇が一服しており、ドル円も先週までの上値に積極的な動きまではみられず。しかし、下押す動きもなく、109円台はしっかりと維持されている。ユーロドルは緩やかな売りに押されて1.19台前半へと値を落とした。ドイツとフランス、イタリアがアストラゼネカ製のワクチンの使用を一時的に停止すると伝わった。ポンドドルは上値が重く、一時1.38台に軟化。きょうはベイリー英中銀総裁によるBBCラジオでのインタビューが伝わり、金利上昇は景気への楽観を反映しているとの考えを示した。市場は今週のFOMCに注目を集めている。今回は景気見通しやFOMCメンバーの金利見通しが公表され、FRBは景気見通しを上方修正してくる可能性が高いとみられている。2023年末までには利上げとの見方に変更はないものと思われるが、微調整がされるかどうかも注目される。また、上昇する米債利回りについてどの程度までなら容認されるのか、ヒントが示されるのかが注目されている。
(16日)
東京市場は、小動き。ドル円は109円台前半での推移。前日のレンジ内で上下を抑えられている。109円台を維持しており、底堅い印象。109.10近辺から109.25近辺までの15銭レンジにとどまった。ユーロドルは1.19台前半での揉み合い。1.1922から1.1939までの17ポイントレンジ。ユーロ円は朝方の円売りで小幅上昇。その後の日経平均の上昇を受けて130.30台へと買われた。リスク選好の円売りが下支えとなった。
ロンドン市場は、ポンド売りが優勢。対ユーロでのポンド売りが主導。今週の英金融政策委員会を控えてポジション調整中心の動きとなっているようだ。また、EUが英国に対して離脱協定違反として前日の法的措置を開始すると表明したこと、欧州諸国で英アストラゼネカ製ワクチンの接種を一時見合わせるとしたことなどの悪材料もでている。ポンドドルは1.38手前まで下落、ポンド円は一時151円台割れ。ユーロポンドは21日線を上回る動きとなっている。ユーロドルは1.19台前半でポンドドルとともに売りが先行したが、その後は1.19台半ばへと反発、高値を伸ばしている。発表時には反応薄だったが独ZEW景況感指数が予想以上の改善したことは好材料だった。一方、レーンECBチーフエコノミストは、中銀預金金利を引き下げる余地は依然としてあるなどとしたがユーロ売り反応はみられなかった。ドル円は109円台前半で、ユーロ円は130円台前半での振幅。
NY市場では、ユーロが売られた。ユーロドルは戻り売りに押されて一時1.18台に下落した。ドル買いよりはユーロ売りが面が強かった。ユーロは対ポンド、円でも下落。ユーロ円の下げとともにドル円は一時108.80近辺まで下落。きのうは小幅な反応に留まっていたが、ドイツやフランス、イタリアなどユーロ圏の主要国でアストラゼネカ製のワクチン接種を一時停止する措置が発表されている。深刻な副作用が報告されているという。このニュースは、ユーロ圏の景気回復が短期的に米国を含む他の国々に遅れをとるという市場の見方を強め、ユーロのセンチメントを圧迫するという。ポンドドルはNY時間に入った買い戻しが入り、1.39ちょうど近辺まで反発。ロンドン序盤の1.3810近辺までの下落を消している。EUとの対立が再燃しており、ポンドを圧迫している。EUは北アイルランドの国境問題を巡る合意を英国が一方的に変更したとして、きのう、訴訟の手続きに入った。ポンドにとっては、ワクチン接種の展開の速さとの綱引きに。
(17日)
東京市場で、主要通貨は小動きだった。今晩の米FOMCを前に、様子見ムードが広がった。日経平均は前日終値を挟んだ振幅にとどまり、小幅安で引けた。ドル円は前日の海外市場での下げの後、比較的しっかりとした展開。朝方の109円近辺から午後には109.20近辺で上昇。レンジは22銭と限定的な動きだった。ユーロドルは1.19台を挟んでの推移。ユーロ円はドル円とともに買われたが、129円台後半からは抜け出せず。前日の下落からの調整買いにとどまった。
ロンドン市場は、米FOMCの結果発表を控えて小動き。ドル円は109.10付近での揉み合いに終始している。ロンドン早朝に109.21レベルまで買われたあと、109円手前まで下げた。しかし、大台割れには至らず揉み合いとなっている。ユーロドルは1.19を挟んだ下に往って来い。序盤に1.1886レベルまで下押しされたあとは、1.1917レベルまで上昇した。ポンドドルは逆に1.3930レベルまで買われたあと、1.39割れ水準まで反落。ユーロポンドの振幅に反応した動き。欧州株は小安く、調整気味の動き。米10年債利回りは1.65%近辺へと上昇。独経済見通しはECB理事と独首相諮問委員会では強弱が分かれた。ただ、いずれにも為替相場の反応は鈍い。
NY市場では、ドルが下落。午後に発表されたFOMCの結果をきっかけにドルの戻り売りが強まった。FOMCメンバー18人のうち2023年末まで金利据え置きと見ているメンバーが11人いた。前回よりも23年の利上げ見通しが増えてはいるものの、市場が期待したほどではなく、FRBは利上げを慎重にみている印象が強かった。また、パウエルFRB議長の会見も早期利上げに否定的な見解を示し、引き続き慎重姿勢を強調。全体的に期待よりもハト派な印象が強いFOMCと市場は見ていたようだ。ドル円は発表前には米債利回り上昇とともに109.30近辺まで買われたが、FOMC後は108.75近辺まで反落。ユーロドルは序盤に1.18台へと下落する場面があったが、FOMC後は1.19台後半まで上昇。ポンドドルは序盤に1.3850近辺まで下落する場面があったが、FOMC後に1.3965近辺まで買い戻された。ユーロにとってはアストラゼネカ・ワクチン関連、ポンドにとっては明日の英MPCなどの話題も注目されたが、この日はFOMCが前面に押し出されている。
(18日)
東京市場は、ドル円が振幅。前日の米FOMCを受けて109.30台から108.70台まで下落して東京朝を迎えた。売りが一巡すると買い戻しが強まり109.10台まで反発。豪雇用統計の好結果で豪ドル円の上昇が見られたほか、世界的な株高期待でのクロス円の上昇がドル円を支えた。しかし、昼頃に一部報道で今日明日の日銀金融政策決定会合において長期金利の変動幅を拡大する方針との一部報道が流れ、一気に円全面高に。ドル円は108.62レベルまで急落した。下げが落ち着くと米債利回り上昇とともに109円近辺へともどした。ユーロドルは1.1980台から1.1950台へと調整された。ユーロ円はドルんとともに130円台で上下動。豪ドルは雇用統計の好結果で対ドルは0.7830台に上昇。対円は85.40台まで買われたあと、ドル円急落で上昇は一服。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。米債利回りが大きく上昇したことが背景。10年債利回りは1.66%近辺から一時1.74%近辺へと上昇、その後も高止まり。昨日の米FOMC後の会見でパウエルFRB議長が長期債利回り上昇について早急な対応についての明言がなく、容認する姿勢と市場に捉えられているようだ。時間外取引の米株先物は軟調に推移。為替市場ではドル高とともに円高の動きも交錯。ドル円は109.30近辺まで買われたあと、109円近辺へと押し戻されている。ユーロ円も130円台で上に往って来い。ユーロドルは1.1990近辺まで買われたあと、1.1930台まで反落。そのなかで英中銀金融政策発表を控えたポンド相場は堅調。特に対ユーロでの買いが継続している。ポンドドルは1.40付近まで買われたあと1.39台半ばまでの下げにとどまっている。ポンド円は142円台前半から半ばでしっかり。トルコ中銀は政策金利を19%に引き上げた。予想外の大幅引き上げとなったことで、リラ買いが強まった。
NY市場で、ドル円は109円を挟む展開。米10年債利回りが一時1.75%まで上昇、ドル円は109.20近辺まで買われた。しかし、米株が下げたほか、原油相場が急落しており、米債利回りの上げも一服、取引終盤には108.80付近まで下げた。ただ、米FOMCではインフレ上昇の可能性もしばらくはゼロ金利を維持する慎重姿勢が強調され、長期金利への言及もなかった。市場では長期金利はまだ上昇するとの見方が広がっており、ドル円の下支えとなっている。一方、あすの日銀決定会合における政策点検の内容が注目されており、市場は関連報道に神経質に敏感に反応した。若干引き締め気味に転じることが予想されているが、米債利回りの上昇を見ると、日米利回り格差への影響はさほどないとみられている。ユーロドルは1.19台前半へと軟化。欧州医薬品庁(EMA)がアストラゼネカ製ワクチンは恩恵がリスク上回ると結論づけたが、ユーロ買いは限定的。一方、ポンドドルはNY時間に入って買い戻しが入り1.39台半ばまで戻す場面があった。英中銀は緩和スタンスの維持を強調してはいたが、長期金利上昇に対する言及はなかった。
(19日)
東京市場は、ドル円が振幅。序盤は米債利回りの上昇や実質5・10日(ゴトウビ)に伴う実需のドル買いなどによって109円台を回復したが、その後は売りに押された。日銀会合後は日経平均株価の下げ幅拡大を受けて、ドルや欧州通貨に対して円が強含みとなった。ドル円は108.80台へと押し戻された。日銀会合で注目された政策点検では、10年金利の変動許容幅は上下ともに0.25%ポイント程度、ETF購入の年間約6兆円の原則を削除、など前日の観測報道と内容が一致した。豪州の2月小売売上高速報は前月比-1.1%と弱い結果だったが、豪ドル売りの反応は限定的だった。
ロンドン市場は、ドル相場が上下動。序盤にかけては米債利回りの低下とともにドル売りが先行。しかし、米債利回りが反発するとドル相場も下げ渋っている。ドル円は108.61レベルまで下落したあと、108.80台へと買い戻されている。ユーロドルは1.1937レベルまで買われたあと、1.19台割れへと下押しされている。ポンドドルは1.3959レベルまで買われたあとは1.3920台までと上に往って来い。また、ユーロ売りが優勢で、ユーロ円は129.50割れへ、ユーロポンドは0.8530台へと安値を広げている。ドイツ国内の新型コロナ感染者数が再び急増したことがユーロ相場に重石となったようだ。イースター休暇を控えてロックダウンへの警戒感がでている。独生産者物価指数や英公共部門純借入額などの指標には反応薄。日銀の黒田総裁は会見で、金融政策の点検について説明。長期金利変動幅の変更は表現明確化であり拡大ではない、として金利上昇を意図しないことを明言した。
NY市場はドル買いが強まり、ドル円は一時109円台に再び上昇した。FRBがパンデミック対応で導入していた金融機関向けの補完的レバレッジ比率(SLR)の条件緩和措置を今月一杯で終了すると発表した。それを受けて米国債利回りが急上昇しており、10年債は1.75%近くまで再び上昇したことでドル買いが強まった格好。
執筆者 : MINKABU PRESS
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