今週のまとめ7月20日から7月24日の週
20日からの週は、リスク動向が交錯した。序盤はリスク選好ムード。好決算や新薬開発などを手掛かりに米株が上昇、上海株の上昇も目立った。さらに、足かけ5日の協議を経てようやくEU首脳会議が復興基金について合意した。独DAX指数は今年の下げを解消するなど堅調に推移し、ユーロ高の動きも広がった。ユーロドルは1.16台まで上伸した。一方、週央からは不安材料も噴出している。米中の政治対立が深刻化している。米国が在ヒューストンの中国領事館閉鎖を命じると、中国側の対抗措置として香港や成都の米国領事館閉鎖に動いている。ポンぺオ米国務長官は、中国共産党を全体主義だ、米国の歴代対中政策についても失敗だったと非難した。各国に対中政策の協調を求める事態となっている。米新規失業保険申請件数が再び増加したことが、今後の米景気への不透明感につながった。米株は高値警戒感も加わり反落。週末の上海総合指数も上昇にブレーキがかかった。ドル円は106円台前半へと軟化した。原油相場もリスク回避の動きに押され、豪ドルなど資源関連通貨が沈んだ。ポンドも上昇の勢いが一服。この週の英欧通商協議では漁業権など中心課題の歩み寄りはみられず、交渉難航を印象付けていた。
(20日)
東京市場で、ドル円が一時買われた。ゴトウビということもあり、仲値に絡んだ実需のドル買い円売りが入るとの思惑もあり、朝方上昇する場面が見られた。先週末のドル売りを受けて106円台で取引が始まったあと、107円台を回復。仲値にかけて107.50台まで急伸した。しかし、すぐに上値を抑えられて、107.20-30レベルに落ち着いた。ユーロドルは神経質な動き。17-18日のEU首脳会議ではEU復興基金について合意できず。延長して協議が続けられている。ユーロドルは1.14台前半で上値重く推移。しかし、一部報道で7500億ユーロのうち3900億ユーロを補助金方式とする新提案にオランダなどが賛成に転じる可能性と伝わると、ユーロ買いに反応した。ユーロ円は122円台半ば超えから118.80近辺へと高値を伸ばした。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。序盤はユーロドルの上昇がリード、その後はポンドドルの買いが強まっている。週末を越えてもEU首脳会議での復興基金での合意をみていない。しかし、週明けには妥協の動きがみられているようだ。復興基金7500億ユーロのうち補助金を3900億ユーロとするミシェル大統領の新提案を強硬派諸国が受け入れるとの報道が流れたことで、合意への期待が広がった。ユーロドルは一時1.1468レベルまで高値を広げた。ポンドドルは1.2607レベルまで高値を更新した。ポンドに関しては明確な材料はでていないが、きょうから英欧通商協議が本格的に再開することが期待となっている面も。ユーロ円は122円台後半、ポンド円は135円近辺へと上昇している。一方、ドル円は上値が重く107.10台へと軟化。東京午前の上昇を戻している。リスク選好でのドル売りの格好となっている。
NY市場は、ドル売りが優勢。ドル円は序盤に107.10近辺まで下落したあとは、下げ一服。107円台は維持した。ドルと円が同方向に動く地合いが続いており、ドル円は小幅な値動きに終始している。感染第2波への警戒感の一方で、ワクチン開発やトランプ大統領の追加景気対策への期待感が高まる中で、方向感がない。ユーロドルは序盤に1.14ちょうど近辺まで下落も大台割れには至らず。復興基金関連の報道で買われたあとは、上昇一服となっている。期待を織り込んでおり、逆に実現しなかった場合の影響を受けやすいとの見方があった。ポンドは1.26台半ばへと一段高。短期筋のショートカバーがでていたようだ。ただ、ポンドに関しては、足元の英経済の弱さ、依然として進展を見せないEUとの貿易交渉、新型ウイルス感染に対する一貫性のない政策、世界で2番目に悪い死亡率、そして、財政赤字など、ネガティブな要素を挙げれば枚挙にいとまがない。
(21日)
東京市場で、ユーロ相場が振幅した。17日から始まったEU首脳会議で復興基金についての合意が難航。当初の会期であった18日ではまとまらず、週末を経て20日午後(日本時間23時)から東京昼頃まで続くという長い会議になった。その中で関係者す情報として合意が近いという雰囲気が伝えられた。ユーロは対ドルを中心にしっかり。ユーロドルは1.1460超えへと上昇。1.1460前後で合意が発表されたあとは1.1470前後まで。そこからは利益確定売りの動きが広がり、1.1420台まで値を落とした。 売りが一服するとロンドン勢の本格参加を前に再びユーロ買いが入り1.1450前後まで。ドル円は107.10台から30台までの小動き。
ロンドン市場は、リスク選好ムードが広がっている。EU首脳会議は5日目にしてようやく復興基金で合意をみた。欧州株や米株先物が買われ、NY原油先物も上伸している。豪ドルやカナダドルなどリスク動向に敏感な通貨を中心に買われている。序盤にはポンドも高値を広げる場面があり、全般にドル安と円安の動きが優勢。そのなかではユーロ相場は上値が重い。ユーロドルは1.14台半ばを中心とした振幅を繰り返している。ユーロ円は一時123円台をつけたが、その後は122円台後半に戻しての揉み合い。一方、ポンドドルは1.27台乗せ、ポンド円は136円台乗せと堅調。ただ、豪ドルやカナダドルの勢いには及ばない。ドル円は107円台前半で取引されており、ロンドン時間は上昇一服となっている。
NY市場では、ドル売りが強まった。市場全体のムードが改善しており、米株式市場でダウ平均が上昇し、原油も大幅高となる中で、為替市場では改めてリスク選好のドル売りが活発化している。米企業決算が良好だったことや、EUが復興基金を合意させたことで、米国の追加対策への期待感も高まっている。ムニューシン米財務長官は、追加景気対策の来週末までの合意を目指すとしており、「かなりの進展があり月内には仕上げたい」と述べていた。ドル円は106円台へ下落。ユーロドルは1.15台に上昇。EU首脳がこの日合意した復興基金について市場からも、概ね支持する意見が聞かれる。2021年からの7年間の財政枠組みが整った事と、復興基金の設立での合意は画期的な出来事だと指摘。EUにおける連帯と統合を示しているとしている。ポンドドルは1.27台半ばまで上げ幅を拡大した。
(22日)
東京市場は、ドル安水準での揉み合い。ドル円は午前の取引で106.89レベルまで一時上昇。4連休前の実需関連のドル買い需要の期待がみられた。その後は106.70-80レベルでの小動きに落ち着いた。ユーロドルは前日に年初来高値を更新、1.15台前半で取引を開始した。東京市場ではわずかながらNY高値を超える1.1547レベルまで上値を広げた。前日からのドル安の流れは堅持されている。
ロンドン市場は、ドル買いの動きが先行。ドル売りの動きが再開して取引を開始したが、すぐにドル買いに方向転換した。米国が在ヒューストン中国総領事館閉鎖を要請と報じられたあと、中国外務省が、在ヒューストン中国総領事館を閉鎖する、総領事館の閉鎖は米国による一方的な挑発、と表明した。これに続いて中国が在武漢の米国総領事館に閉鎖命令を検討、とも報じられている。米中両国の対立が深刻化するなかで欧州株や米株先物が下落、リスク警戒のドル買い圧力につながった。ドル円は一時107円台を回復。ポンドドルは1.26台半ば割れまで下落。ユーロドルは1.15台前半で連れ安に。ポンドにとっては、英テレグラフが、英国はEUと合意できない前提で作業、企業に準備要請、と報じたことが重石となった面も。ドル買い一巡後は、ユーロ買いが再び強まった。ユーロドルは1.1584レベルまで高値を伸ばし、1年9カ月ぶり高値水準となった。ユーロ円は123円手前から124円手前へと上伸。対ポンドでもユーロ買いが強まった。ユーロ相場はEU復興基金の合意をきっかけに水準が上方シフトしている。
NY市場では、ドル売り優勢。ユーロドルは買いが加速、1.16台をつける場面があった。2018年10月以来の高水準。感染第2波のほか、きょうは米中対立などの懸念も伝わっているものの、ワクチン開発への期待などが市場のリスク許容度を高めている。そのような中でリスク選好のドル売りが優勢となっており、その受け皿がユーロになっているようだ。ポンドドルも買い戻しが強まり、1.27台の200日線の水準を再び回復した。ロンドン時間には英国が合意なき離脱を前提に作業を進めている、企業も準備を、との記事が売りを誘った。今後も不安定な相場が続きそうだ。ドル円は107円台に再び戻している。この日は米株が堅調。米国の追加対策については、なお多くの失業者がいる中で、今月末に失業給付金の上乗せが期限を迎える。トランプ政権と共和党は暫定的な延長を協議と伝わった。民主党には異論も出ているようだが、市場は楽観的に見ている。
(23日)
東京市場は海の日の祝日で休場。
ロンドン市場は、ドル安の動きが一服。ユーロドルは1.16台乗せを試したが、乗せきれずに1.15台後半で揉み合った。ポンドドルは1.27台半ばに高値を伸ばしたあとは売りに押され、一時1.27近辺まで反落。豪ドル/ドルは0.71台後半から前半へとやや水準を下げている。欧州株や米株先物は堅調に推移しているが、この日はNY原油先物が調整の動きに押されている。また、ポンドにとっては今週の英欧通商協議で特段の進展がなかったことも重石となったようだ。英国のフロスト氏とEUのバルニエ首席交渉官は、会見でいずれも漁業権や公平な競争の場についての進展がなかったと表明している。ドル円とクロス円は方向感に欠ける動き。ドル円は107.10-20レベルに膠着。ユーロ円は124円台前半でやや買われ、ポンド円は136円台円前半、豪ドル円は76円台前半などで上値重く推移している。
NY市場では、ドル売りが強まった。この日発表の米新規失業保険申請件数が予想外の増加を示し、感染第2波が拡大する中で、企業が採用に慎重になっていることが示された。米株に売りが強まっており、原油も利益確定売りに押されるなどリスク警戒の動きが広がった。しかし、為替市場は根強いドル売りが断続的に入った。米雇用情勢の悪化が米金融当局の追加緩和を期待させる面があったほか、実需の動きが活発に出ているとの指摘も。ドル円は106円台に再び下落。下値ポイントとして意識される106.70近辺をうかがう展開がみられた。ユーロドルは買いが加速し、1.1625付近まで一時上げ幅を拡大した。短期的には過熱感が警戒されるものの、週足チャートでは上昇の初期段階との見方もあった。ポンドドルは1.27台半ばまで一時買われた。ただ、ポンド自体に強い印象はなく、対ユーロや円では上値が重い。EUとの貿易交渉がポンドのブレーキとなっているようだ。
(24日)
東京市場はスポーツの日の祝日で休場。
ロンドン市場は、円買いの動きが優勢。米中双方がお互いの領事館を閉鎖する事態となっており、政治対立が強まっている。きょうは中国が対抗措置と称して成都の米領事館の閉鎖を通告している。週末を控えた株式市場は売りを強めている。上海総合指数は一時4%安となった。欧州株や米株先物にも売りが波及している。為替市場ではリスク回避の円買いが前面に押し出されている。ドル円は106円台前半へ、ユーロ円は123円台前半へ、ポンド円は13円台前半へと下落。ドル相場ではややドル買いに振れており、ユーロドルは1.15台後半へ、ポンドドルは1.27台円前半へと小安く推移。この日発表された独仏ユーロ圏や英国の7月PMI速報値は、いずれも予想以上の改善を示しているが、リスク回避の動きがユーロやポンドの上値を抑えている。
NY市場はドル売りの流れが続く中で、ドル円は105円台に下落した。6月安値が106円ちょうど付近に来ていたが、その水準を割り込み、ストップを巻き込んだようだ。105.70付近まで下落し、来週は心理的節目の105円を試す展開になるか警戒される動きが見られている。

執筆者 : MINKABU PRESS
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