為替相場まとめ11月17日から11月21日の週
17日からの週は、ドル高円安が優勢となった。12日、13日に上値を抑えた155.00円前後を17日の市場で上に抜けると、その後もドル高円安が優勢となった。19日には動きが加速。植田日銀総裁と片山財務相、城内経済財政相との3者会談で為替について具体的な話はなかったと報じられて、円買い介入への警戒感が後退。同日のFOMC議事要旨で12月の利下げに慎重な姿勢が目立ったことで日米金利差を意識した円キャリー取引の拡大も期待された。20日も動きが継続し157.89円まで一時上昇した。もっとも、158円超えでは介入リスクが高まるとの思惑から上値が抑えられると、21日の市場ではいったんポジション整理の動きが広がった。17日の179円台から20日に182円台まで上値を伸ばしたユーロ円なども週末にかけて調整の動きが見られた。またユーロ圏製造業PMIの弱さなども加わって売りが加速した。ユーロドルなどでもドル高の動き。ユーロドルは17日の1.1600ドルを挟んでの推移から20日に1.1504ドルを付け、21日のドル円でのドル安にいったん1.1550超えも、再びユーロ安ドル高となって1.1500ドル割れを付けた。
(17日)
東京市場は、リスク警戒感がくすぶる中でドル買いと円買いが交錯し、方向感を欠く展開となった。ドル円は先週末の変動を受けた調整と新たな材料待ちの間で、154円台半ばを中心にもみ合い。朝方は154.42円まで下押したが、仲値にかけてはユーロドルなどでのドル買いに連れて154.78円まで値を戻した。午後は日本長期国債利回りが1999年以来の高水準となり円買いが入る場面もあったが、154.59円までの反応に留まった。ユーロドルは1.1620ドル台から1.1600ドル割れを試す重い展開となり、ポンドも英財政懸念が重石となって対円で一時203.14円まで下落するなど軟調。全体に決め手を欠き、神経質な綱引き状態が続いた。
ロンドン市場は、全般にドル買い優勢の展開となった。欧州株が軟調に推移し、ECB副総裁が金融安定報告書で「金融市場の調整リスク」に言及するなど、リスク回避的なドル買いが強まった。米10年債利回りは低下傾向にあったものの、ドル円は東京市場の安値から底堅く推移し、154.87円付近へじり高となった。ユーロドルは一時1.16ドル台を割り込み1.1595ドル付近まで下値を広げたが、1.16割れ水準では買い戻しも入り一進一退。ポンドドルも1.3136ドル付近まで軟化後、ロンドン勢の本格参入とともに買い戻された。株式市場への調整圧力が強い中、パニック的な動きには至らずとも、リスク警戒のドル高が相場の下値を支える構図となった。
NY市場では、リスク回避ムードが続く中でもドル高・円安が進行し、ドル円は2月以来となる155円台を回復した。155円付近にあったオプション防戦売りを突破し、米株大幅安や20日発表予定の9月米雇用統計への警戒感などを消化しながら高値を維持した。一方、クロス円も堅調で、ユーロ円は一時180円台に乗せユーロ発足来高値を更新、ポンド円も204円台半ばへ上昇した。市場では一部にECBの利下げ余地があるとの見方がユーロの上値を抑制も、日本の財務省による介入警戒感がくすぶるものの「実弾介入にはまだ至らない」との見方から円売りトレンドが継続。米政府機関閉鎖の影響やAI株バリュエーション懸念など不透明要素が多い中、為替市場ではドルとクロス円の上昇圧力が勝る一日となった。
(18日)
東京市場では、午後に株安が加速し、リスク回避の円買いが強まった。日経平均が売り込まれ、大引けにかけて1600円超の暴落となるなど投資家心理が急速に悪化。ドル円は155円台を割り込んだ後、ストップロスを巻き込んで154.82円まで急落した。財政赤字懸念から国債利回りが乱高下し、安全資産としての債券買いも進んだことで、リスクオフの円高圧力が波及。クロス円も軒並み下落し、ユーロ円は179.61円、ポンド円は一時203.70円まで売られた。午前中は比較的小動きだったが、後場の株価急落がトリガーとなり、一時的に円全面高の様相を呈した。ユーロドルはドル安の動きから1.16ドル台を回復する動き。総じてドル円主導の相場展開となった。
ロンドン市場では、流れが一変し、根強い円売り(キャリー取引)が復活した。欧州株安や米金利低下という典型的なリスクオフ環境が継続しているにもかかわらず、為替市場では円が売られる展開となった。ドル円は東京時間の安値154.82円から反転上昇し、155円台半ばへ高値を更新。クロス円もユーロ円が180円台、ポンド円が204円台へ急回復し、東京時間の下げ幅を帳消しにした。高市首相と植田日銀総裁の会談が材料視されず無風通過したことも、買い戻しに安心感を与えた模様。AIバブル崩壊懸念などで資産価格は不安定だが、為替市場においては円を売ってドルやクロス円を買う動きが優勢で、円安トレンドの強さが際立った。
NY市場で、ドル円は一時155.70円近辺まで続伸した。前日の155円台乗せを受け、東京時間には片山財務相から口先介入があったが、海外市場では押し目買い意欲が強く、155円台を維持している。植田日銀総裁は高市首相との会談後も、データ次第で適切に判断する姿勢を示し、日銀の利上げ方向性に変化はないものの、そのスピードは緩やかになるとの見方から日米金利差縮小の想定が後退。円キャリー取引への需要は依然として高い。一方、ユーロドルは1.16ドルを挟んで一進一退。ユーロ円は180.30円付近まで上昇し、ユーロ発足以来の最高値圏を維持している。ポンド円は204円台を維持し、年初来高値(205.30円付近)を視野に入れる展開だ。明日発表される英CPIが注目材料。
(19日)
東京市場のドル円は上昇一服。朝方は155.50円付近で始まったが、午後には一時155.21円付近まで下落。本日18時過ぎに予定される植田日銀総裁と片山財務相らによる会談が注目された。市場では円安牽制や介入への警戒感から円買い戻しが優勢となったほか、アジア株安に伴うリスク回避の動きも円買いを支援した。ただ、売り一巡後は155.47円付近まで値を戻し、下値は限定的だった。クロス円も一時軟化し、ユーロ円は179.78円付近、ポンド円は204円割れまで下落したが、その後はそれぞれ180円台、204円台を回復した。ドルストレートは、ポンドやユーロが対ドルでやや買い戻されたものの、大きな方向感には欠ける展開となった。
ロンドン市場では円安が進行。片山財務相らによる三者会談では為替について具体的な話はなかった。市場では円安けん制に対する警戒感が後退し円売りが再燃。ドル円は156円台に乗せ、今年1月24日以来の高値を更新。ユーロ円も181円目前まで買われ史上最高値を更新。ポンドは英CPI鈍化で売り反応があったが、ポンド円は円売り優勢で205円手前まで上昇。ユーロドルは1.15台後半、ポンドドルは一時1.31台割れも1.31台に戻した。欧州株や米株先物は小幅高で推移しこのところの下落は一服。米エヌヴィディア決算に注目が集まっている。
NY市場でドル円は157円台まで上昇した。ロンドン市場でも見られた当局の円安けん制への警戒感後退によるドル高円安に加え、午後には米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で12月の利下げが不適切との見方が目立ったことを受けたドル買いもドル円を支えた。ユーロドルは4日続落で1.15ドル台前半まで下落。ポンドドルは1.30台半ばに下落と対欧州通貨でもドル高が優勢。対円では円安の勢いが勝りユーロ円は181円ちょうど前後、ポンド円は205円台まで上昇している。
(20日)
東京市場のドル円は朝方利益確定に156.88円を付けるもすぐに反発。高市政権の新たな経済対策は 21兆3000億円程度で最終調整入るとの報道を受けたリスク選好の動きなどがドル円を支え午前に157円40銭台まで上昇。日銀の小枝審議委員が12月の利上げの可能性に言及も円安の勢いは止まらず、午後に157円台後半を付けた。ユーロ円が181円台後半、ポンド円が205円台後半を付けるなど、円は全面安。対ドルでは欧州通貨安でユーロドルは1.1510前後、ポンドドルは1.3030台を付けた。
ロンドン市場では東京市場のドル高円安の流れを受けて朝方ドル円が157.78円を付けたが、その後はいったん利益確定売りが入った。158円を超えると当局による円買い介入のリスクが高まるとの思惑などが上値を抑え、157円10銭台を付けた。181.73円を付けていたユーロ円が181円ちょうど前後、206円台を一時付けたポンド円が205.30円前後を付けるなど、円売りの調整が目立った。ユーロドルは落ち着いた動き。ポンドドルは1.3085を付けるなど、ドル高一服でややしっかり。
NY市場でドル円は157円台での上下。158円を超えると介入リスクが高まるとの思惑が上値を抑えるも、地合いの強さは堅調で下がると買いが出る展開。ここ数日の円安進行を受けた過熱感も意識されている。この日発表された9月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が予想を上回る伸びを見せるも、失業率は予想外に悪化とまちまち。労働参加率が上昇していることで失業率悪化の影響が抑えられたこともあって、一時157.89円まで上値を伸ばすなど、ドル高が優勢となる場面も、動きが続かず。9月12日の週とやや古いデータということもあって反応が抑えられた。ユーロドルは1.15台前半でのもみあい。ポンドドルは一時1.31台回復も続かず。ユーロ円はドル円の上昇時に182円台を一時付けた。ポンド円は206円86銭まで上昇。ともに午後はやや調整売り。
(21日)
東京市場のドル円は週末を前にした調整ムードが広がった。当局の姿勢も円買いにつながった。朝は157.50を挟んでスタート。直近の円安進行を受けて片山財務相が「為替介入は選択肢として考えられる。介入は対応策の一つとして含まれる」「過度な為替変動生じた場合適切な措置講じる、日米財務相共同声明に沿って適切に対応」など、これまでに比べてやや厳しい円安牽制発言を行い、157.20円前後を付けるも、いったん戻すなど、午前はややしっかりの動き。午後に入ると、週末を前にしたポジション整理の動きなども見られ、朝の安値を割り込んで売りが出た。ユーロ円やポンド円も調整の動きが目立った。ユーロ円は朝の円高局面で181.30円割れまで売りが出ると、午後に入っての円買いで181.27円を付けた。ポンド円は朝に205.59円を付け、その後の戻りが鈍い。ユーロドル、ポンドドルなどは午後に少し買われており、午後はドル安も優勢となっていた。
ロンドン市場で円安の調整が加速した。ドル円は東京午後の流れを継続しドル売り円買い。157円00銭を割り込んでポジション整理の動きに弾みがつき、156.57円を付けた。下げ一巡後は買い戻しも157円ちょうど近くが重くなり、再びドル安円高を試す動きとなって156.54円まで売りが出た。その後は少し戻して156円台後半推移。クロス円も軒並みの円買いとなった。ユーロ円は東京市場で181.30円割れで買いが出る展開であったが、ロンドン市場で売りが出るとストップロス注文を巻き込んで181円を割り込む動き。180.73銭を付けた後少し戻したが、ドイツ、フランス、ユーロ圏の製造業PMIの弱さもあって180.30円前後まで下げた。ポンド円も同様にロンドン市場で売りが加速。英サービス業PMIの弱さもあって204.37円を付けている。ユーロドルは序盤ドル安に1.1550ドル台を付けたが、1.1500割れまで売りが出た。ポンドドルは序盤に1.3100ドル超えを付けた後1.3030台へ売りが出た。
NY市場でドル円は戻り売りが優勢となり、一時156円台前半まで下落する場面も見られた。前日は158円をうかがう展開を見せていたものの、ロング勢も一旦後退しているようだ。ここ数日の急速な上昇に過熱感も高まる中、本邦勢も明日からの3連休を前にロングポジションを軽くしていたのかもしれない。
執筆者 : MINKABU PRESS
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