為替相場まとめ11月3日から11月7日の週
3日からの週は、ドル高の流れと円高圧力が激しくぶつかり合う展開となった。ドルについては、前週のFOMCで利下げ期待が後退した影響が残っていたことに加え、米ISM非製造業景気指数が予想を上回ったことでインフレ圧力の強さが示唆され、再びドル買いが優勢となった。一方、円高を促す材料も多かった。週明けの東京市場再開直後に日経平均株価が大暴落したため、リスク回避の円買いが一気に強まった。また、米企業の人員削減が急増したことで、景気後退とそれに伴う米利下げ期待が再浮上したことも円高を支える要因となった。さらに、片山財務相による円安牽制発言も円高圧力となった。ドル円はこれらの要因が交錯、高値圏で激しい上下動を繰り返す調整局面となり、ドル円は154円から152円台までのレンジで振幅した。その他の主要通貨では、全般的なドル高が主要な決定要因だった。ポンドは、英財務相の演説で増税への警戒感が出たことや、英中銀の政策金利据え置き決定が僅差だったために12月利下げ期待が温存されたことで売られたが、その後は買い戻しが入る神経質な値動き。ユーロはECBの材料に乏しかったため、ドル高圧力を受ける展開となった。ただ、レンジは狭く1.15台での取引が中心だった。
(3日)
東京市場は文化の日の祝日のため休場。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。先週の米FOMCでのパウエル発言をきっかけに、市場での12月利下げ観測が後退したことが背景。週明けのドル指数は8月1日以来、3カ月ぶりのドル高水準となっている。ドル円はロンドン朝方に154.29付近まで買われたあとは、154円台前半での揉み合いとなっている。ユーロドルは1.15台前半で、ポンドドルは1.31台前半で上値重く推移。ただ、目立った材料に欠けるなかで値幅は限定的になっている。クロス円はやや調整に押されており、ユーロ円は177円台後半から前半へ、ポンド円は202円台後半から前半へと反落している。ユーロ圏や英国の製造業PMI確報値は速報値からほぼ変化はなく材料視されず。あすの豪中銀政策金利発表を控えて、豪ドルは底堅く推移。対ドルでは0.65台半ばで売買交錯しており、ほぼ米ドルと同等の強さを示している。
NY市場で、ドル円は上下動した。ISM製造業景気指数の予想下振れを受け、一時153円台に下落したが、すぐに切り返した。急速な上げは一服しているものの、155円台を視野に入れた高値圏で推移している。ドル高が下支え要因となっており、先週のFOMC通過後、市場の12月利下げ期待は後退。複数のFOMC委員からも利下げに慎重な姿勢が示された。日銀も追加利上げに慎重なため、日米金利差縮小は緩やかとの観測から、円キャリートレードへの期待が高い。ユーロドルはドル高に押され1.15ドル割れを試す水準まで下落。ECBの利下げサイクルは終了との見方から、ユーロ自体に動きはない。ユーロ円とポンド円は円安に支えられ、上昇トレンドを維持。ポンドドルは1.31ドル台で振幅している。市場は今週の英中銀金融政策委員会(MPC)待ちで、据え置きが有力視されている。
(4日)
東京市場では、ドル円は朝方に154.48の高値を付けたが、154.50付近の抵抗線と片山財務相の「一方的で急激な動き」への円安牽制発言により上値が抑えられた。午後に入ると、日経平均株価が一時1000円超の大幅下落となり、リスク回避の円買いが加速した。米株先物安も重なり、ドル円は153.60付近まで急落した。クロス円(ユーロ円、ポンド円など)も同様に円高が進行し、ユーロ円は176.80付近、ポンド円は201.50付近まで下落した。一方、ユーロドルはドル高局面で一時1.1500を割るも回復。ポンドドルは終日上値の重い展開が続いた。豪ドルは、豪中銀の政策金利据え置きと総裁の追加利下げに消極的な姿勢にもかかわらず、地合いの弱さから売られた。円高も相まって、豪ドル円は朝の100.91付近から99.88付近まで大きく値を下げた。
ロンドン市場は、東京市場からの根強いドル高の動きに加え、円買いとポンド売りが目立つ展開となった。円買いの背景には、東京市場でドル円が154円台半ばを突破できなかったこと、片山財務相の型通りの円安牽制発言、そして欧州株の全面安というリスク警戒ムードがある。このため、クロス円を中心に円高の動きが強まり、ドル円も東京午前の高値154.48付近からロンドン時間には154.30付近まで値を下げた。ポンド売りは、リーブス英財務相の演説がきっかけとなった。同相が英経済・財政の困難な状況下で財政規律を強調したものの、具体策の欠如から増税への警戒感が市場に広がり、英債利回りの低下とともにポンド売りが加速した。その結果、ポンドドルは1.31台前半から1.30台後半へと下落し、ポンド円は200円台前半へ下押しされた。
NY市場は、市場全体のリスク回避ムードと連休明けの本邦勢の利益確定売りが重なり、ドル円は153円台に下落した。高値からの調整の範囲だが、高市首相が円安対応に消極的と見られることから、「高市トレード」によるさらなる上昇余地を指摘する声もある。155円超えでの介入可能性は低いとの見方も根強い。ユーロドルは、FRBの利下げ期待後退によるドル高を背景に下値模索が続き、ついに節目1.15ドルを割り込んだ。ECBは利下げサイクルを終了し、来年6月まで政策金利を据え置く見通し。そのため、FRBが利下げを進めれば、ユーロドルは年末までに1.20ドルへ上昇するとのアナリスト予想も出ている。ポンドドルは下げ幅を拡大し、1.30ドル台半ばへ。年初来の上昇波の38.2%戻しを完全にブレイクした。リーブス英財務相の財政課題に関する発言が、増税への警戒感からポンドを圧迫した。ポンド円も下げが強まり、200円割れを試す展開となった。
(5日)
東京市場は、前日の米ハイテク株安を引き継ぎ、日経平均株価が一時2400円超の大幅安(49073.58付近)となった。これを受け、朝方はリスク回避の円買いが優勢となった。ドル円は、朝方の153.75付近から昼前には152.96付近まで急落した。しかし、午後に入り株価が下げ幅を縮小し50000円台を回復すると、ドル円も反発し153.66付近まで戻す、「往って来い」の展開となった。クロス円も同様に、朝の急落後に下げ分をほぼ回復した。ユーロ円は176.54付近から175.71付近まで下げた後、176.60付近まで上昇。ポンド円も199.07付近まで売られた後に200.19付近まで反発するなど、「往って来い」の動きが目立った。一方、ユーロドルは1.14台後半でもみ合いが続き、ポンドドルは1.3020付近を挟んで狭いレンジでの推移に終始した。
ロンドン市場は、この後の米ADP雇用統計の発表を控えて動意に欠ける取引となった。ドル円は、東京市場で株安から一時153円割れ付近まで下押しされた後、株価の下げ幅縮小とともに153円台後半へと買い戻された。ロンドン時間では、前日NY終値153.67付近を挟んだ揉み合いに終始した。クロス円も同様に、東京で進んだ円高が反転。ユーロ円は175円台後半から176円台半ばへ、ポンド円も199円台前半から200円台前半に反発し、その後は揉み合いとなった。ドル相場全体としては、東京時間でのドル安から下げ渋り、前日NY終値水準へと戻している。ユーロドルは1.14台後半、ポンドドルは1.30台前半を中心に売買が交錯した。欧州株や米株先物は上値が重いものの、前日のような激しいボラティリティは見られず、市場は落ち着いている。なお、ロンドン朝方に三村財務官が為替の過度なボラティリティへの懸念などを発言したが、市場の反応は限定的だった。
NY市場で、ドル円は154円台を回復した。米ISM非製造業景気指数が8カ月ぶり高水準、仕入れ価格も3年ぶり高水準となり、予想を上回る民間経済指標がドル高を誘発。米国債利回りの上昇もサポート要因となった。ISM指数は、市場の12月利下げ期待を後退させる内容であり、ドル円は東京時間で152円台まで下落した分を完全に回復し、155円を再び視野に入れている。ユーロドルは1.14ドル台後半で振幅し、前日までの5日続落は一服。しかし、世界的なリスク不安やFRBの利下げ観測抑制から、買い戻しは限定的との指摘が出ている。一方、ドル円の買い戻しに伴い、ユーロ円は一時177円台まで戻した。ポンドドルは下げを一服させて1.30ドル台を維持。ポンド円は反転し、一時201円台まで買い戻される場面が見られた。市場は明日の英中銀(BOE)金融政策委員会(MPC)に注目しており、据え置きが有力視される中、一部では厳しい財政引き締め策を見越した利下げの可能性も指摘されている。仮に据え置きでも、僅差であれば12月利下げの織り込みが進む可能性がある。
(6日)
東京市場は、前日の米経済指標を受けたドル円の上昇(154.30付近)に対する調整の円買いがやや優勢となった。ドル円は154.10付近で取引を開始した後、午前に一時153.80付近まで下落。行き過ぎた動きへの警戒感も背景にある。その後は154円台が重くなり、午後ももみ合いが継続した。クロス円も同様に落ち着いた動きとなった。ユーロ円は前日海外市場で177円台を回復した後、東京午前中の円高局面で176.90付近を付けたものの、再び177円台を回復。ポンド円は、この後の英金融政策委員会(MPC)発表を控えて動きが制限され、201.00付近を挟んだもみ合いに終始した。一方、ユーロドルは昨日のドル高局面から一転し、値幅は小さいもののユーロ買い・ドル売りが優勢となり、午後に1.1514付近を付けた。ポンドドルもわずかにポンド高・ドル安の落ち着いた展開となった。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。前日は米ADP雇用統計や米ISM非製造業景気指数が強含んだことを受けて、ドル買いが強まった経緯がある。きょうはそのドル高に対する調整が入っている。さらに、ロンドン序盤に発表時刻を繰り上げて米チャレンジャー人員削減数が発表され、前年比約2.8倍と急増した。米債利回り低下とともにドル売り反応が加わった。ドル円は一時153円台半ばまで下落。ユーロドルは1.15台前半へ、ポンドドルは1.30台後半へと買われた。ただ、足元ではドル売りの勢いは一服。このあとの英中銀金融政策発表に視線が移動しているようだ。市場では政策金利据え置き観測が優勢。そのなかで票割れ内容が注目されている。前回よりも利下げ票が増える可能性が指摘されている。
NY市場では、米株式市場の下落などリスク回避ムードの再燃によりドル安が加速し、ドル円は一時152.80円付近まで下落する場面が見られた。米国債利回りも低下。この動きは、米チャレンジャー人員削減数が10月としては過去20年以上で最多となったデータに市場が反応し、利下げ期待が再浮上したためと指摘されている。ユーロドルは買い戻しが優勢となり、前日の安値(1.1470ドル付近)から1.15ドル台半ばまで回復した。アナリストからは、最近のドル高によりユーロドルは短期的な要因で過小評価されており、今後数日で1.16ドルまで上昇する可能性があるとの見方も出ている。一方、ユーロ円はドル円に連動し、再び21日線を下回った。ポンドドルは買い戻しで1.31ドル台を回復。ポンド円はドル円の下げに連動し、一時200円台に下落した。本日は英金融政策委員会(MPC)の結果が発表され、政策金利は予想通り4.00%に据え置かれたが、投票は5対4の僅差となった。ベイリー総裁の「インフレの下降軌道が確実になるまで様子を見たい」との発言を受け、ポンドは一時売りの反応を見せつつも、すぐに買い戻されている。市場は、今後の労働市場と物価データが12月利下げの鍵を握ると見ている。
(7日)
東京市場では、朝方のドル安からドル高に転じている。東京の朝方に前日発表の10月の米企業人員削減数の急増を受け、米連邦準備理事会(FRB)の早期追加利下げ観測が再浮上していることを背景にドルがやや売られる場面があったが、その後は米債利回りの上昇を背景にドルがやや買われている。ドル円は東京朝方に弱含み、10月30日以来の安値水準となる152.82付近まで一時軟化したが、その後反発し、東京終盤には一時153.45付近まで上昇した。ユーロドルは東京朝方にいったん強含み、1.1552付近まで上昇したが、その後軟化し、東京午後には一時1.1533付近まで下落した。日経平均は607.31円安の50276.37円と何とか5万円台を維持して波乱の週の取引を終えた。
ロンドン市場は、ドル高や円安が先行したが、取引中盤にかけては値動きが反転している。ドル円は東京市場で153円台割れから153円台半ばへと上昇。ロンドン序盤は高止まりしていたが、足元では153.10台へと反落している。クロス円も上昇一服。ユーロ円は177円台乗せまで買われるも、再び176円台へと反落。ポンド円は上値が重く、201円台前半から200円台後半に押し戻されている。ドルは買い一服。ユーロドルは1.15台前半から1.15台後半へと反発。ポンドドルは1.31台割れまで下落したあと、1.31台を回復する動き。ユーロ対ポンドでは、前日と反対にユーロ買いが優勢になっている。欧州株や米株先物は小高く推移していたが、足元ではマイナス圏に沈んでいる。週末を控えていることもあり、全般的に調整ムードが広がっているようだ。
NY市場は、基本的に153円台前半を中心とした推移。ロンドン市場で153.00前後がしっかりとなり、いったん買いが入ったが153.50を付けきれず、再び売りが出た。米10年債利回りが4.11%台から4.06%台へ低下したこともあり、NY午後にも再び153.00をトライ。ただこの時間帯も152円台トライに慎重で引けにかけ反発。マイナス圏推移が目立っていたダウ平均が引けにかけてプラス圏を回復するなど、米株安の動きが落ち着いたことを受けたドル買い円売りもあって、ロンドン市場の高値を一時越え、153円59銭を付ける動きを見せた。ただ、週末を前に上値追いにも慎重な姿勢がみられ、高値からはやや調整が入った。ユーロドルはロンドン市場からの上昇が継続で1.1591を付けたが、1.16手前の売りを前にいったん調整が入り午後には1.1550台まで下げている。ユーロ円は対ドルでのユーロ買いに177円60銭台を付けた後、少し調整も、引けにかけてのドル円の上昇もあり177円50銭前後で引けている。
執筆者 : MINKABU PRESS
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