為替相場まとめ6月30日から7月4日の週
30日からの週は、月末月初を含む週とあってドル相場が神経質に上下した。米雇用統計発表の週で、雇用関連指標に注目が集まった。事前に発表された米求人件数は予想を上回ったが、ADP雇用者数は予想外の減少と弱い数字だった。しかし、木曜日の米雇用統計は雇用者数と失業率がともに改善する強い結果となり、ドル買い反応を広げた。トランプ大統領の言動にも影響されている。再三再四、パウエルFRB議長に利下げ圧力をかけ、早期の退陣要求を行った。ベッセント米財務長官からも利下げ圧力の援護射撃が加わった。米減税法案が7月4日の独立記念日までに成立すると、週末にかけてはトランプ大統領が各国に関税率を一方的に設定した「手紙」を送付すると発表した。ドル相場はドル安一服となり、調整のドル買いがみられた。特に米雇用統計の強い結果がドル高反応を強めた。円相場にとっては、日銀短観が予想外に強かったことや日銀審議委員の発言などが円高圧力となる場面があった。ポンド相場は対ユーロを中心に弱含んだ。このところの英経済指標の弱さに加えて、労働党政権の財政政策に市場が疑問符をつけた面があった。英首相が英財務相の続投を明言しなかったことがポンド売りを強める場面があった。すぐに続投することを表明したものの、ポンド売り圧力は払しょくし切れなかった。
(30日)
東京市場は、円買いが優勢。ドル円は午前に人民元高・ドル安の流れを受けて軟化し、144円台後半から前半まで軟化した。昼頃はいったん下げ渋ったが、午後に入って一段安となり、一時143.80付近まで下落した。トランプ米大統領が日本の自動車への25%関税に言及したことや、米早期利下げ観測などがドル売り・円買いにつながった。ユーロ円は午前に169円割れに沈んだあと、午後に入って168.71付近まで下値を広げた。ポンド円も午後に197円台半ばまで水準を切り下げた。ユーロドルは1.17台前半での推移。朝方に一時1.1740付近までドル安に振れたあと、伸び悩みをみせた。
ロンドン市場は、動き一服も円高圧力が残っている。トランプ米大統領が日本との通商協議について自動車に関して不満を表明したことが背景。7月9日の相互関税期限で交渉を打ち切り、書簡を送付する可能性を示唆している。ロンドン朝方にドル円は143円台後半、ユーロ円は168円台後半、ポンド円は197円台前半まで下押しされた。その後は下げ渋っているが、引き続き先週末NY終値よりも円高の水準で取引されている。ドル指数は一時年初来安値を広げた。ユーロドルは1.17台半ばまで上昇。ポンドドルは1.37台前半で買いが先行した。しかし、足元ではドル売りの動きは一服している。欧州株はやや売りに押されている。EUと米国との通商交渉には合意に向けた期待感があるものの、トランプ大統領の不規則な言動への警戒感も交錯している。デギンドスECB副総裁は、現在の金利水準は適切である、と当面の金融政策維持を示唆。ECBは、より頻繁に発生する世界的ショックに対して戦略を微調整するとしている。不確実性の時代となることが示唆されている。
NY市場では、値動きが落ち着いた。ドル円は144円台での推移が続いた。本日は月末期末の取引の中、方向感のない展開となった。一旦143円台に下落する場面が見られたものの144円台に戻す展開。ドル自体はここ数日下げ渋っているものの、月間で6カ月連続の下落となり、ドル安の見方は依然根強い。一部からは、そのペースに大きな影響を与えるのが円だとの指摘も出ていた。 ユーロドルは買いを加速させ、1.17台後半まで上昇し、年初来高値を更新した。根強いドル安期待の中、ユーロがその受け皿となっている状況。ただ、過熱感を測るテクニカル指標であるRSIが買われ過ぎの70を上回っており、さすがに過熱感は否めない状況ではある。中東情勢が落ち着いたことや、貿易協議もメドが見えつつある中、市場の関心はファンダメンタルズに回帰している。その意味ではFRBや英中銀は利下げ期待が高まっている一方、ECBはすでに利下げサイクルの終了に接近しており、金融政策の格差がユーロをサポートしている模様。ポンドドルは1.37を挟んで上下動。一方、対ユーロではほぼ1週間ぶりの安値水準に下落。
(1日)
東京市場では、ドル円が143円台で上下動。朝の日銀短観で大企業製造業が第1四半期の12から10への悪化予想に反して13と2期ぶりに改善。日銀の利上げに向けた流れへの期待もあり、円買いが強まる形でドル円は下げ、143.44近辺まで下押しされた。しかし、午前中には143.80台へと反発。さらに財務省による10年利付国債の入札で応札倍率が直近12カ月平均と比べて高く、好調になったことで円債価格が上昇(利回りが低下)。10年債利回りが1.45%前後から1.38%台に低下、ドル円は143.90台に一段高。ただ、144円台には乗せられず、143円台後半での揉み合いに。ユーロ円は169円台前半から169円台後半で振幅した。ユーロドルは朝方に1.1807近辺まで買われたが、その後は売りに押されて1.1770台まで反落。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。先週からのドル安の流れが継続している。ドル円は一時142円台に下落、ユーロドルは1.18台に上昇、ポンドドルも1.37台から1.38台をうかがう動きを見せている。クロス円ではドル円下落スピードが速く、円高の動きが目立っている。ドル安の背景としては様々な材料が取り沙汰されており、きょうはこの材料という決定打は指摘しにくい。米債利回りが低下、米雇用統計発表を木曜日に控えて雇用市場の軟化が米利下げ圧力につながるとの思惑、トランプ政権の相互関税期限が7月9日に迫るなかで米国発の不透明感がドル安につながる面などがみられている。また、円高の面ではきょうの日銀短観が予想外に強かったことが日銀利上げ観測につながったことや、増氏が新たに日銀審議委員に加わり、タカ派姿勢を示すとの思惑もあったようだ。ユーロ買いの面では、ECBが当面の利下げ打ち止めを示唆していること、今日はデギンドスECB副総裁がユーロドルの1.20への上昇は許容範囲と述べたことが下支えとなる面があったようだ。米国と日欧などの金融政策スタンスの差がドル安につながる構図となっているもよう。
NY市場では、ドルが買い戻された。ドル円は下に往って来い。NY時間にかけてドル安が強まり、ドル円も142円台に下落。しかし、NY時間に入ってドルの買い戻しが強まったことで、それまでの下げをほぼ取り戻した。値ごろ感の買い戻しに加え、米求人件数が予想外に強い内容となったことや、パウエルFRB議長がECBのフォーラムに出席していたが、先日の議会証言と同様に利下げにはオープンな姿勢は示したものの、待ちの姿勢を強調しており、今後の関税の影響によるインフレの上昇の可能性に言及していた。市場の利下げ期待に変化はなく、短期金融市場では年内2回か3回の利下げを織り込んでいるが、ドル安に過熱感も見られていただけに、買い戻しも出ているようだ。ユーロドルは1.17台に伸び悩んだ。本日も根強いドル安期待からロンドン時間には1.1830付近まで一時上昇したが、NY市場では調整に押された。ポンドドルはロンドン時間に1.37台後半まで上昇していたものの、NY時間に入って1.37台前半まで伸び悩んだ。労働党政権が提案している福祉改革による歳出削減策は、与党内の反発を招いており、議会では数十人の労働党議員が改革案に反対票を投じる見通し。
(2日)
東京市場は、比較的落ち着いた値動きだった。ドル円は143.40台で取引を開始。前日の流れを受けて143.32近辺まで下押しされた後は下げ渋り。午後には143.86近辺まで買われて、前日NY市場での戻り高値を上回った。ただ、144円を試す勢いは見られず、143円台での取引に終始している。明日の米雇用統計などをにらんでやや様子見ムードとなっている。ユーロ円も169円台前半から半ば超えまでの取引。ユーロドルは朝方に1.1810付近に買われたあと、午後にかけては1.1790割れ水準に下押しされた。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。この後の米ADP雇用統計や明日の米雇用統計などの発表を控えて、このところのドル安の流れにやや調整が入る格好となっている。ドル円はロンドン序盤に144円台前半まで反発した。ユーロドルは1.17台後半へ、ポンドドルは1.36台後半へと下押しされている。ドル指数は前日高値を小幅に上回っている。ただ、10日線からは引き続き下方向に乖離しており、ドル安の流れ自体には変化はみられていない。足元ではドル買いの勢いは落ち着いており、日本時間午後9時15分発表の米ADP雇用統計待ちとなっている状況。クロス円はドル円の上昇に連れてやや円安の動きを見せている。ユーロ円は169円台後半、ポンド円は197円台半ばまで一時買われた。欧州株や米株先物・時間外取引は総じてプラス圏で取引されており、リスク動向は落ち着いている。
NY市場では、ドルの買い戻しも一服。ドル円は朝方に一時144.20円付近に上昇した。しかし、ADP雇用統計で雇用者数が予想外の減少となりドル安の反応から143円台半ばに一気に下落した。その後、買い戻しが見られたものの144円台での上値抵抗もあり、143円台に再び値を落とした。ユーロドルはNY時間に入って買い戻しの動きが出て、1.18付近まで下げ渋った。ドル安が一服する中、ユーロドルは1.17台半ばに下落していた。上昇トレンドは続いており、大きな節目の1.20に向けた流れが続いている。ユーロ高はECBによる追加利下げを促す可能性があるとの見方があった。ポンドドルはNY時間に入って下げ渋ったものの、一時1.3565付近まで大幅に下落した。経済のファンダメンタルズというよりは、社会保障改革を進めているスターマー政権内の政治的な要因がポンドを押し下げている。スターマー英首相は2日、下院の質疑でリーブス財務相への全面的な支持について明言を避けたことで、リーブス財務相の地位を巡る臆測が急速に高まった。
(3日)
東京市場は、米雇用統計を控えて小動き。ドル円は午前に一時143.45付近まで弱含んだあと、午後は一転して143.93付近まで上昇。日本時間今夜9時30分に発表される6月の米雇用統計を控えて、ポジション調整とみられる買いに支えられたが、上値は限定的となった。高田日銀審議委員は今後の利上げについていったん休止局面であるとして、2%の物価目標実現は2月の講演時よりも判断を進めたと発言した。ただ、市場の反応は限定的。ユーロドルはもみ合い。朝から1.1800を挟んでの推移となった。 ユーロ円は午後にやや円売り優勢となり、一時169.76付近まで強含んだ。
ロンドン市場は、揉み合い商状。米雇用統計待ちのムードが広がっている。ドル円は東京市場で143円台半ばから144円手前水準まで買われた後、ロンドン時間には143円台後半で揉み合っている。ユーロドルは1.17台後半から1.18台乗せ水準と前日NY終値を挟んだ小動きが続いている。そのなかではポンドドルはやや買いに動意付いている。スターマー英首相が、リーブス英財務相について「全幅の信頼、足並みそろえて作業」としたことがポンドや英国債の買い戻しを誘い、英株価指数も堅調に推移している。ポンドドルは1.36台前半から後半へと上昇している。対円や対ユーロでもポンド買いの動き。ただ、日本時間午後9時30分の米雇用統計待ちで次第に値動きは落ち着いた。ユーロ円は169円台後半、ポンド円は196円台半ばなどで推移している。ユーロ圏と英国のサービス業PMI確報値は、いずれも速報値から上方改定されたが、それ自体に対する相場の反応はほとんど見られなかった。
NY市場では、強い米雇用統計を受けてドル買いが強まった。ドル円は買いが強まり145円台を回復。6月の米雇用統計が米労働市場の底堅さを示したことから、為替市場はドル高の反応が見られた。一方、それ以上に円安がドル円を押し上げていた面も大きかったようだ。米雇用統計を受けてFRBの早期利下げ期待が後退。パウエルFRB議長はインフレへの関税の影響が明確になるまで利下げを急がない方針を示しているが、労働市場が大きく弱まった場合には、利下げのタイミングが早まる可能性があるとも議会で証言していた。ただ、本日の米雇用統計はその可能性を後退させる内容となり、短期金融市場でも前日は25%程度あった7月利下げの確率がほぼゼロとなっている。一方、日銀は動きにくい状況。ベッセント米財務長官は日本との貿易交渉について「日本は参院選があるため、いまは難しい」と述べていた。ユーロドルは一時1.17台前半に下落したものの、動きが一巡すると下げ渋った。ポンドドルは米雇用統計発表直後に1.35台に急速に下落する場面が見られた。ただ、直ぐに買い戻され、下げを解消。全体的にポンドは強い動きを見せていた。スターマー首相がリーブス財務相の去就を巡り火消しに努めたことがポンドをサポートしたようだ。
(4日)
東京市場では、ドル売り・円買いの動き。ドル円は145円手前水準から144.10台までほぼ一方通行で下げている。ユーロドルは1.1750台から1.1785近辺まで買われており、ドル売りが優勢。一方、ユーロ円はドル円トトも下げており、170円台前半から170円台割れへと下押しされている。昨日のNY市場では米雇用統計が雇用者数、失業率いずれも予想外の改善を示し、ドル高・円安が強まった経緯がある。きょうはこのあとのNY市場が米独立記念日のため休場となることから、週末超えのポジション維持に慎重となり調整の動きが入っている。加えて、トランプ関税関連報道がリスク警戒として意識された面もあったようだ。東京早朝にトランプ大統領は「4日に各国に手紙を送る、貿易協定結ぶより手紙送る方が簡単だ」「関税率は60~70%から10~20%の範囲で変動、8月1日から関税を支払うことになる」とした。
ロンドン市場は、円買いとドル買いが交錯。ドル円は144.10台まで下げたあとは144円台前半で売買が交錯している。クロス円は東京市場からの円高の流れを受けて上値重く推移している。ユーロ円は一時169.85近辺まで軟化。ポンド円は197円台割れへと下押しされている。欧州株や米株先物・時間外取引は総じて軟調に推移しており、リスク警戒の円高圧力がドル円・クロス円の上値を重くしている。トランプ関税リスクが警戒されているもよう。ドル相場は東京市場でのドル売りの動きは一服。ユーロドルは1.17台後半、ポンドドルは1.36台後半でやや上値を抑えられている。米独立記念日のためNY市場が休場となることから、全般に動意薄となってきている。
NY市場は米独立記念日のため休場。

執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。