為替相場まとめ6月9日から6月13日の週
9日からの週は、リスク警戒の動きが広がり、円相場は円高に、ドル相場はドル安からドル高へと目まぐるしい値動きがみられた。一連の米インフレ指標が予想を下回ったことがドル売りにつながる場面があった。しかし、主役は政治や地政学リスク材料となっている。米中閣僚級貿易協議はジュネーブ合意を順守する枠組みで基本合意した。ただ、具体的な内容は伝わらず米中首脳の決断待ちとなっている。また、トランプ大統領は各国に一方的に関税率を決めた書簡を2週間以内に送付するとし、交渉姿勢がみられなければそのまま高関税率を適用すると脅した。中東情勢が一段と緊迫化している。トランプ大統領はイラン核協議が難航していることを吐露し、金曜日にはイスラエルがイラン攻撃に踏み切った。週後半にかけてはドル売りが進行していたが、週末には一気にリスク回避の円買いとドル買いが強まっている。欧州通貨では、ユーロ買い・ポンド売りが続いた。ユーロにとっては先週のECB理事会で当面の利下げ停止の観測が広がったことが買いを誘った。一方、ポンドは英雇用統計や月次GDPなどが弱含んだことや、英財政計画で市場が財政赤字拡大を警戒したことなどが売り圧力となった。
(9日)
東京市場では、ドル円が軟化。午前中に144円台後半から前半へと下落。午後には144.25付近まで安値を広げた。きょうロンドンで開催予定の米中貿易協議を控え、先週末のドル高に対するポジション調整とみられる動きがみられた。ユーロドルはドル売り優勢。午前に一時1.1425付近まで上昇したあと、この日の高値圏でもみ合いとなった。クロス円は円買い優勢。ユーロ円は午後に一時164.75付近まで、ポンド円は一時195.59付近まで下落した。
ロンドン市場では、ドル売りが優勢。本日ロンドンで米中閣僚級による通商協議が行なわれる。詳細内容がまだ伝わらないなかで、ドルが売られている。先週末の米雇用統計の強い結果を受けたドル買いに調整が入ったほか、米中協議が実質的に進展するのか懐疑的な見方もあるもよう。米10年債利回りは週明けの4.51%付近からロンドン時間には4.47%台へと低下している。欧州株は先週末上昇の調整もあって売られている。ドル円はロンドン朝方の144円台半ばからロンドン時間には一時144円台割れまで下落。ユーロドルは週明けの1.14付近から1.1440付近まで上昇、ポンドドルも1.35台前半から1.35台後半へ上昇している。クロス円は通貨ごとにまちまちだが、ユーロ円は165円台割れから164円台半ばへ、ポンド円は196円台割れから195円台半ばへと下押しされている。豪ドル円は比較的底堅く94円を挟んで売買が交錯している。
NY市場では、ドル売りが一服。ドル円はロンドン時間に143円台に下落する場面があったが、NY時間にかけて買い戻され一時144円台後半まで反発している。ただ、145円台を回復するには至らず。本日のユーロドルは1.13台に一時下落する場面が見られたものの、下値はサポートされ、NY時間には1.14台前半での上下動に終始した。ポンドドルは1.35台で上下動。上値は重くなっているものの、底堅い推移は持続してい状況。今週水曜日には英財務相が歳出見直しについて公表する予定。市場では財政赤字拡大が警戒されている。 本日はロンドンで米中協議が再開され、ベッセント財務長官やラトニック商務長官、グリアUSTR代表らが、中国のカウンターパートと協議を行っていた。明日10日も継続協議が行われる。
(10日)
東京市場では、ドル円が振幅。午前中は円売りが優勢。植田日銀総裁が参議院財政金融委員会に出席。「基調的な物価上昇率は物価目標の2%まで少し距離がある」との認識を示したことをきっかけに円売りとなり、144円台半ばをから145.29近辺まで買われた。午後には一転して円買いが入り、144.40台まで下落と午前の上昇分を打ち消した。米中貿易協議が開催されるなかで中国関連の思惑が円買いにつながったもよう。クロス円は円高方向に振れた。ユーロ円は午前に165.40台まで上昇も、午後には164.80台まで反落した。ユーロドルは1.14台前半から1.1380台まで下落したあとは、1.1400挟みの推移となった。
ロンドン市場では、全般に方向感が定まらない展開。2日目の米中貿易協議が始まっており、その行方がどうなるのか待ちの状況となっている。ドル円は144円台前半まで下押しされ、東京午前の上げを消している。ユーロドルは1.13台後半から1.14台前半に上昇、東京市場からの下げを帳消しにしている。ユーロ円も164円台後半から165円前半へと買い戻されて、東京市場からは下に往って来いに。そのなかではポンドの軟調さが目立っている。日本時間午後3時発表の一連の英雇用指標が弱含んだことで、年後半の英中銀2回利下げ観測が高まったことが背景。ポンドドルは1.35台前半から1.34台半ばへ、ポンド円は196円付近から195円台割れまで下落し、いずれもその後の戻りは限定的。ユーロ買い・ポンド売りの動きが鮮明に。ユーロ圏投資家信頼感は年初来初のプラス圏回復とセンチメントが改善していた。
NY市場では、ドル円が再び上昇。ロンドン午前に144.50割れまで軟化したあと、NY時間に入ると買いに転じて145円台を回復する場面があった。しかし、東京市場での高値を試す動きには至らず。米中協議が現在もロンドンで続いており、その結果を待ちたい雰囲気も強い。短期的にはドルの買い戻しから、ドル円も上値追いが期待されているものの、下値警戒感も依然根強い。ユーロドルはロンドン時間の早朝に1.13台に下落していたが、NY時間にかけて1.14台に戻す展開。ただ、全体的には次の展開待ちで1.14付近での上下動が続いている。先週のECB理事会後の会見でラガルド総裁は、利下げサイクルは完了に差し掛かっているとの見解を示していた。ただ、市場は先週で終了とはまだ見ておらず、年内にもう1回の利下げで終了と見込んでいる。ポンドドルはロンドン時間に1.34台半ばまで下落し21日線に接近したものの、NY時間にかけて1.35台に戻した。本日は英雇用統計が発表され、英中銀の利下げ期待が高まった。5月の英有給従業員月次変化が5年ぶりの減少幅を記録し、賃金上昇率も予想以上の鈍化となった。
(11日)
東京市場では、午後に入って円売りが強まっている。 現地英国時間10日夜に入っても続いていた米中通商協議二日目は、日本時間11日午前8時過ぎに枠組み合意が報じられた。先月のジュネーブ合意の実行に向けた枠組みで合意したとされている。発表直後は144.90前後から145.10台へ買われたが、具体的な施策に乏しいとの見方もあり、売り戻しが入った。もっとも決裂とならなかったことはプラスと、安値から買い戻しで145.20台まで再び買われた。ユーロ円は165円台推移。ドル円の上昇とともに165.81近辺まで上昇も、165.40台に反落。しかし、ロンドン勢の参加を受けて165円70台へ上昇している。ユーロドルは1.1406から1.1439までの狭いレンジで振幅した。
ロンドン市場は、落ち着いた値動き。そのなかではややユーロが堅調な動きをみせている。ユーロドルは1.14台半ばへ、ユーロ円は166円付近へと高値を伸ばしている。対ポンドでも堅調な動き。先週のECB理事会で当面の利下げ打ち止め感が出る一方、英国では昨日の雇用統計の鈍化やきょうの英予算計画発表を控えた不透明感などがみられている。全般的には米中貿易協議で一定の合意を見たことが市場の安心感につながっており、ドル円は145円台を回復。ユーロ円をはじめとしたクロス円も円安水準に動いている。対ユーロでは軟調なポンドも対円では196円手前へと再び買われている。ドル指数は小幅に低下。ポンドドルは1.34台後半から1.35付近へと下げ渋っている。株式市場は欧州株が小高く推移。一方、米株先物はやや調整売りに押されている。原油先物は米大統領のイラン交渉の行方に「自信を失っている」と発言したことを受けて急伸している。英予算計画の詳細発表や米消費者物価指数の結果待ちとなっている。
NY市場では、米CPIを受けドル売りが優勢。ドル円は145円台に上昇していたが、一時144円台前半に下落。米CPIは予想を下回り、市場では年内2回の米利下げ期待が復活。9月利下げの期待も確率を高めている。 ただし、FRBは関税の物価への影響を気にしており、利下げへの慎重姿勢に変化はないものと見られている。ロンドンで2日間に渡って行われていた米中協議が終了し、機微な製品の流通を再活性化させる枠組みを策定した。トランプ大統領は投稿で、「中国とのディールが成立した。合意は習氏と私の最終承認次第」と述べた。また、米国の関税率は55%、中国は10%になるとも述べていた。市場はいまのところ、関税自体には落ち着いた反応を示している。ユーロドルは1.15台を試す展開。ドル離れが指摘されている中、ユーロはその代替として期待されている。ただ、ECBレポートによると全通貨に占めるユーロのシェアは19%で、前年とほぼ変わらず。外貨準備に占める比率も16%に留まっている。 ポンドドルは1.35台半ばまで買い戻された。本日はリーブズ英財務相が議会に歳出見直しを提示していた。市場では増税を余儀なくされるとの見方が広がり、英中銀による追加利下げの可能性が指摘された。
(12日)
東京市場では、円高が進行。トランプ米大統領が2週間以内に貿易相手国に書簡を送り、一方的に関税率を設定する方針を示したことから、ドル売り・円買いが優勢となった。また、中東情勢の緊迫化を受けたリスク回避の円買いなども重石となった。ドル円は、午前に一時143.70台まで下げたあと、いったん144円台を回復する場面があった。しかし、戻りは限定的となり、午後に入ってこの日の安値となる143.67付近まで下値を広げた。ユーロ円も軟調。午後に入って円買いが強まり、一時165.52付近まで下落した。ユーロドルは朝からドル安に振れ、午後に1.1532付近まで高値を伸ばした。
ロンドン市場は、ドル安が進行するなかでユーロ高とポンド安の対比が鮮明になっている。ロンドン朝方に発表された一連の英経済指標が弱い結果となりポンド売り反応を広げた。特に、月次GDPが-0.3%と予想以上に落ち込んていた。一方、ユーロにとっては先週のECB理事会で当面の利下げ打ち止め感が広がっており、市場が年内あと2回の英中銀利下げを想定していることとは対照的。ユーロ買い・ポンド売り圧力が継続している。また、トランプ米大統領が一方的に関税率を設定し、2週間以内に各国に書簡を送りつけるとしたことが再び関税をめぐる不透明感を広げている。加えて、イラン核合意をめぐる交渉が難航していることがイスラエルや米国との緊張を高めていることもリスク警戒圧力となっている。米10年債利回りは4.41%台から4.37%台へと下落、欧州株や米株先物は時間外取引も下落しており、ドル売り圧力が掛かっている。ユーロドルが1.16台乗せとなるなかで、ポンドドルも下げを消して1.36一歩手前まで反発。ドル円は143円台前半へと軟化。クロス円はユーロ円が買われる一方で、ポンド円は軟調。ユーロ対ポンドではユーロ買いが強まっている。
NY市場では、ドルが一段安。取引序盤にドル円は一時143円台前半まで下落する場面が見られた。この日は貿易摩擦と中東情勢がリスク回避のムードを広げ、ドルは下落。最近のリスク回避はドル安の反応に変化しており、ドルは2022年以来の最低水準に接近している。5月米生産者物価指数(PPI)もドルをさらに押し下げた。前日の消費者物価指数(CPI)に引き続き、予想を下回る内容となり、5月はインフレが加熱しなかったことを示している。市場は年内の米利下げ期待をさらに高めているが、FRBの慎重姿勢に変化はないものと見られている。ユーロドルは上値追いを強め、一時1.1630付近まで上昇し、4月の直近高値を突破している。2021年10月以来の高値水準。ユーロ圏のインフレは目標の2%付近まで低下している。ECBはまだ勝利宣言はしていないものの、先週のECB理事会では利下げサイクルが終了に迫っているとの認識を示していた。更なる追加利下げが期待されているFRBや英中銀とは違い、金融政策の格差もユーロを下支えしているようだ。 ポンドドルは一時1.3625付近まで上昇。2022年2月以来の高値更新となったが、その後は伸び悩む動き。本日は4月の英月次GDPが発表になっていたが、予想以上のマイナス成長となった。大幅な増税とトランプ関税で大きく縮小した。これを受けて短期金融市場では英中銀の利下げ観測が強まっており、年内の利下げは、2回が改めて完全に織り込まれた。
(13日)
東京市場では、中東情勢緊迫化を受けてリスク回避の反応が広がった。ドル円は、朝方にイスラエルによるイラン空爆の報道にリスク警戒の円買いが一気に強まった。143円台半ばから142.80付近まで急落した。その後は143円を挟んでの推移となった。昼頃からは一転して買いが強まり、朝の下げ分を解消。143.87近辺まで高値を伸ばした。イスラエル軍はイランの核関連施設など数十の軍事目標を攻撃と発表。またイランから100機以上の無人機がイスラエルに向けて発射されたとしている。リスク警戒の中でドルが全面高となった。ユーロドルは1.16台乗せから売りに押される展開。安値は1.1512近辺と高値から100ポイント超の下げとなった。ポンドドルも1.36台前半んから1.35台前半まで下落。クロス円は振幅。166.20付近から165円台割れまで下落したあと、165円台後半まで買い戻されている。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。米債利回りが前日比プラス圏に上昇しており、ドル高を誘っている。また、東京朝方には中東情勢の緊迫化を受けて円買いが強まったが、その後は円安方向に戻す動きとなっている。急伸した原油や金相場は上昇一服。欧州株や米株先物・時間外取引は引き続きマイナス圏で推移。ドル円は142円台まで下落したあと、ロンドン市場では144円台乗せへと反発。クロス円も東京朝方の下落を戻してきている。短期筋の買い戻しが進んでいるようだ。来週月曜日には145.00の大規模オプション期限が観測、相場が引き寄せられやすいとの指摘があった。米10年債利回りが前日クロースを上回る水準へと上昇、ドル買い圧力となるなかで、ユーロドルは1.15台割れ、ポンドドルは1.35台前半へと下押しされている。各国がイスラエルによるイラン攻撃を非難するなかで、トランプ米大統領はイランに対して「手遅れになる前に」合意するよう強く求めている。事態が収束に向かうことが期待されているが、まだ不透明感は高い。各市場とも不安定かつボラタイルな状況となっている。
NY市場、ドル円は東京時間に142円台に下落していたが、144円台まで買い戻される展開。イスラエルがイランを空爆したことで、中東情勢の緊張が一気に高まった。リスク回避の円高からドル円は東京時間に142円台に下落していたが、為替市場は次第に有事のドル高の反応が強まっている状況。ここ数日、リスク回避はドル安の反応に変化していた。ただ、後半にはその動きも一服した。

執筆者 : MINKABU PRESS
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