為替相場まとめ6月10日から6月14日の週
10日からの週は、ドル・ユーロ・円の三極の方向性が錯綜している。ユーロ相場は売り圧力にさらされた。先週末の欧州議会選で極右勢力が台頭し、独仏与党勢力が大きく議席を減らした。これを受けて仏大統領が国民議会の解散総選挙を宣言、一気に政情が不透明になったことが背景。フランスを中心に欧州株安と不安定な相場展開となった。ユーロドルは1.09付近から1.06台へと下落。ポンドは対ユーロでの買いで底堅かった。ポンドドルは1.27付近から1.28台後半で上に往って来い。ドル相場はややドル高に傾いている。米消費者物価指数が予想を下回ったことでドルが急落する場面があったが、同日の米FOMCではメンバー金利予測が前回の3回利下げから1回利下げに変化、インフレ見通しも引き上げられてドル買いとなった。円相場にとっては金曜日の日銀決定会合が注目材料だった。市場では国債購入を減額することが織り込まれていたが、今回は見送られて次回7月の実施が示唆された。これを受けて円相場は円安方向に傾斜、ドル円は158円に乗せる場面があった。一方、植田日銀総裁会見では、最近の円安の動きが物価の上振れ要因で十分注視、データ次第では7月の利上げもあり得る、などとしたことで円安は一服した。その後、156円台を付けるなど、週末までやや不安定な動き。フランスの政治情勢警戒からのリスク警戒が、ドル円の上値からの売りにつながった。
(10日)
東京市場は、ドル高・ユーロ安。先週末の米雇用統計で、9月利下げ観測が後退しドルが全面高となった後の週明け相場。ドル円は156.50台までの軽い調整を経て、再び157円台乗せへと上昇。午後には157.20近辺に高値を伸ばした。また、ユーロ安がドル買いにつながった面も。週末に行われた欧州議会選挙で、フランス与党が極右政党国民戦線に獲得議席で倍以上の差を付けられるという大敗を喫し、ユーロ売りにつながった。ユーロドルは先週末の米雇用統計後に1.09付近から1.08台割れへと下落。週明けには一段と売られ、1.0748近辺に安値を広げた。対ポンドで2022年夏以来のユーロ安となった。対円では169円を挟んで売買が交錯、午後はやや上値が重くなった。
ロンドン市場は、ユーロ相場が一段安。週末の欧州議会選で独仏与党勢力が後退、極右勢力が躍進した。これを受けて、マクロン仏大統領は国民議会を解散、選挙実施を表明している。市場では政治への不透明感が台頭、仏10年債利回りは先週末比10bp高の3.19%に上昇。欧州株が全面安となるなかで、仏CAC指数は2%超安に。ユーロドルは1.07台前半へ、ユーロ円は168円台前半へ、ユーロポンドは0.84台半ばへと水準を下げている。リスク圧力もあり、ドル円は157円台割れから156.70台へと反落。ポンドドルは1.27台割れへと軟化。ドル指数はユーロドルの下落が主導してドル高方向に動いており、5月14日以来の高水準に。先週末の米雇用統計を受けたドル買いに続いて、欧州政治不安をうけた動きも下支えとなっている。スロバキア中銀総裁や独連銀総裁は、追加利下げを急がない姿勢を示したが、ユーロ買い反応はみられず。
NY市場は、値動きが落ち着いた。ドル円は157円付近で推移。先週末の米雇用統計を受けた上昇は一服も、底堅い値動きが続いている。市場は今週の米消費者物価指数(CPI)とFOMCの結果発表待ちの雰囲気が強まっている。投資家はそれらのイベントを分析し、利下げのタイミングとペースについて何らかのヒントを得ようとしている。本日はユーロの下落が目立ち、ユーロドルは一時1.07台前半に下落したほか、対円、ポンドでもユーロは下落した。週末の欧州議会選挙でフランスとドイツの与党が敗北を喫したことで、EU内の政治不安がユーロを圧迫。ポンドドルはNY時間に入って買い戻しの動きが見られ、1.27台を回復。本日はユーロドルに連れ安となり、一時1.26台に下落する場面があった。明日の英雇用統計が注目されている。
(11日)
東京市場では、ドル円が底堅く推移。157円割れは一時的で、じり高の動きとなり昼頃には157.30台まで買われた。午後は高止まりに。ユーロ円は朝方の169円台割れ水準から169.40台まで上昇。ユーロドルは1.07台後半で11ポイントの狭いレンジでの値動きにとどまった。その他目立ったのは昨日の休場明けの中国人民元。休場前の7.2470元台から、節目の7.2500を超えてスタートし、その後もドル高・元安圏推移。朝の中国人民銀行による対ドル基準値がドル高設定となったことが材料視された。上海総合なども軟調で、中国売りの動きから豪ドルなどもやや軟調。
ロンドン市場は、連日のユーロ売り。朝方は欧州株が反発、前日のユーロ売りにやや調整が入る場面があった。しかし、仏政治情勢の不透明感が再び台頭し、ユーロは再び下落。一部報道によると、近く実施される仏総選挙結果が思わしくない場合について、マクロン仏大統領が辞任を議論したとしている。ユーロドルは1.0770台から1.0730台へと下落。ユーロ円は169円台前半から168.70付近へ、ユーロポンドは0.84台後半から前半へと下落している。マクロン氏に近い関係者が上記の記事内容を否定しているが、ユーロ相場の反発力は鈍い。ドル円はユーロ円の下落とともに157円台前半で軟調。ポンドは朝方に英雇用統計が弱含んだことで売られたが、その後は対ユーロでの買いを受けて堅調に。ポンドドルは1.27台前半から半ばへ、ポンド円は200円台割れでは買いが入り、200円台前半で底堅く推移。対ユーロでポンドは22カ月ぶりの高値水準に。
NY市場は、方向感に欠ける取引。ドル円は156.80近辺まで急速に下落、ポジション調整に押された。しかし、すぐに157円台に戻した。午後には米10年債入札を受けて米国債利回りが低下すると再び156円台に一時下落した。明日の米消費者物価指数(CPI)とFOMCの結果待ちの中、米10年債入札への需要が極めて旺盛だったことから、明日の米CPIの軟化を市場は警戒したのではとの声も出ていたようだ。ユーロドルは1.07台前半まで下落したあとは、下げ渋り大台を維持も、欧州政情不透明感を受けたユーロ自体の売り圧力が上値を抑えた。ポンドドルは1.27台前半から半ばでの振幅。来週20日に英中銀の金融政策委員会(MPC)が予定されているが、7月4日の英総選挙が終了するまでは、英中銀の委員はすべての公式声明を取り止めることになっている。
(12日)
東京市場は、米CPIなどを控えて様子見ムード。NY市場での5月米消費者物価指数と米FOMCの発表を控えて、結果待ちとなっている。ドル円は157.10付近から157.30近辺へと小幅に買われた。ユーロドルは1.0735-1.0746の狭いレンジで推移。ユーロ円はドル円とともに買われて、168.60台から169円付近までの動き。日本時間午後3時の一連の英経済指標は5月の月次GDPが予想を上回ったものの鉱工業生産、製造業生産高などが予想を下回り、ポンド相場の反応は限定的。
ロンドン市場は、円安とドル安の動き。欧州株が反発、リスク警戒の動きが緩んでいる。米CPI発表や米FOMC発表を控えて、週初からのドル高の動きに調整が入る面も。ドル円は157円手前水準から157.30台へと上昇、ユーロ円は168円台後半から169円台前半へ、ポンド円は200円手前水準から200円台後半へと上昇。ドルストレートではドル売りが優勢。ユーロドルは1.07台前半から後半へ、ポンドドルは1.27台前半から後半へと水準を上げている。解散総選挙を宣言したマクロン仏大統領は、結果が思わしくない場合でも辞任しない意向を表明しており、極右勢力との対決姿勢を鮮明にしている。ロンドン朝方に発表された英月次GDPは前月比変わらずと低迷し、市場からはスタグフレーションとの声もでていたが、市場予想ほどは悪化せずポンド相場の反応は限定的だった。
NY市場は、米CPIとFOMCをめぐってドル相場が激しく上下動。ドル円は一時155円台に下落したものの後半に156円台後半に戻した。米消費者物価指数(CPI)が2カ月連続でインフレの鈍化傾向を示したことから、市場は利下げ期待を復活させ、年内2回の利下げを織り込む動きを見せ、ドルが売られた。その後のFOMCでは、FOMC委員の金利見通し(ドット・プロット)は1回の利下げ予想に留まった。市場も米CPI後の2回の利下げ期待を後退させ、ドルが買い戻された。ただ、市場では引き続き高い確率で2回の利下げを織り込んでいる。一部からは「今回のドット・プロットは5月の米CPIを考慮していない可能性が高い」との指摘も。その後のパウエル議長の会見は、インフレの進展に言及したものの、まだ高過ぎるとし、確信を強めるにはさらに良好なデータ必要との認識を示していた。ユーロドルは1.07台後半から1.08台半ばまで買われたあと、1.08台前半に落ち着いた。ポンドドルは一時1.28台半ばまで上昇も、その後は1.28ちょうど付近に伸び悩んだ。
(13日)
東京市場では、ドル円が157円台を回復。前日NY後半の流れを受けて買われている。午後には米10年債利回りが4.32%台まで上昇したことから一段高となり、一時157.20付近まで上昇した。ユーロ円も一時169.85付近まで上昇し、7日以来およそ1週間ぶりの高値水準となった。ユーロドルは、やや上値重くも1.08付近から前半で小動き。
ロンドン市場は、調整含みの値動き。ドル円、クロス円は東京市場からロンドン序盤にかけて円売りが進行。ドル円は157.30付近、ユーロ円は170.10台、ポンド円は201.30付近まで買われた。しかし、欧州株が下げ幅を次第に拡大する動きに円売りは一服。157円台前半、169円台後半、200円台後半へと調整売りに押されてきている。ユーロドルは1.08台割れ水準から1.08台前半での揉み合い。ポンドドルは1.27台後半から1.28付近での振幅。足元ではいずれもやや上値が重い。ドル指数は小幅に上昇。MSCIがEU債をソブリン指数に採用せずと報じられたことで欧州債が売られる場面があった。マクロン仏大統領は辞任を否定したが、与党の苦戦が予想されており欧州政情をめぐる不透明感は引き続き高いようだ。
NY市場は、米PPIはインフレ鈍化示すも後半にドル買い優勢に。朝方発表の5月の米生産者物価指数(PPI)が前日の米消費者物価指数(CPI)に続きインフレ鈍化を示したことで、為替市場はドル売りで反応。同時刻に発表になった米新規失業保険申請件数も予想を上回り、雇用市場の軟化を示していた。しかし、動きが一巡するとドル買いが復活した。米株が一時軟調に推移するなどリスク回避の雰囲気がドル買いを誘発したとの指摘も。ドル円は一時156.60付近まで急落したが、その後は157円台を回復、米PPI発表前の水準に戻した。ドル円については明日の日銀決定会合の結果を見極めたい雰囲気も。ユーロドルは1.08台が重くなり、1.07台前半へと下落。ドル買いとともに、仏政局不透明感を背景としたユーロ売り圧力が根強かった。ポンドドルは一時1.27台半ばに下落も、ユーロドルほどは売られず。
(14日)
東京市場では、日銀決定会合をめぐって円が売られた。日銀はきょう昼過ぎに日銀金融政策決定会合の結果を公表した。日銀は国債買い入れ額の減額方針を示したものの、具体的な減額計画は次回7月会合で決定するとした。これを受けて、ドル円は4月29日以来およそ1カ月半ぶりの高値水準となる158.25付近まで買われた。ユーロ円などクロス円もドル円同様の動き。ユーロ円は前日終値と比べて1円以上の円安水準となる169.80付近まで上昇。ポンド円は16年ぶりの高値水準となる201.62付近を付けている。ユーロドルは1.0740付近から午後に1.0727付近まで弱含んだが、値幅は限定的。
ロンドン市場は、リスク回避の動き。欧州株が大幅安、特に仏政情不安を反映した仏CAC指数が2%超安と売りを主導、年初来で下げに転じている。ユーロドルは1.07台前半から1.06台後半へと下落。ポンドドルも1.27台半ばから一時1.27台割れまでユーロに連れ安。クロス円も全面安となっており、ユーロ円は169円台後半から167円台半ばへと2円超の大幅安。ポンド円は201円台後半から199円台前半まで下落した。ドル円は東京市場での上げを帳消しにしている。日銀決定会合で国債購入減額が次回7月の検討と先送りされると、円売りが強まり157台割れから158円台乗せへと上伸。しかし、植田日銀総裁会見で、「最近の円安の動きは物価の上振れ要因であり、政策運営上、十分注視」「7月に経済・物価のデータ次第で短期金利を引き上げること当然ありうる」などと述べたことで円売りは一巡。さらにリスク回避の円買い圧力が加わり再び157円割れ水準へと押し戻されている。
NY市場は落ち着いた動きとなった。東京からロンドン市場にかけての大きな動きを経て、いったん様子見ムードになった。フランスの情勢への警戒が見られる中、週末を挟んでのポジション維持にやや慎重で、大きな往って来いの後に再びポジションを傾けるだけの動意に欠けた。朝方リスク警戒から売りが出ていた米株式市場も、ダウ平均が横ばいに近いところまで戻して引け、ナスダックはプラス圏で引けるなどリスク警戒が落ち着いていた。
執筆者 : MINKABU PRESS
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