為替相場まとめ5月27日から5月31日の週
27日からの週は、振幅を伴いながらも、ややドル高・円高が優勢。根強いインフレ動向を背景に、米債をはじめとした各主要国の債券利回り上昇を招来した。本邦10年債利回りも日銀の利上げ観測をはやして1%を上回った。ただ、市場反応はリスク動向に振り回された面も強かった。高値圏にある各国主要株価指数が調整売りに押されたことで、ドル円の上昇は一服。クロス円も買いが先行したあと、反落している。月末の週とあってフロー主導の不安定さもあったようだ。
(27日)
東京市場では、ドル円が上値重く推移。週明けは157円ちょうど付近で取引を開始、徐々に売りが強まった。週末に神田財務官が介入について「今後も必要に応じて、いつ何時でも適切な措置をとって参りたい」と発言したことなどが、介入警戒の円買いを誘った。内田日銀副総裁がデフレとゼロ金利政策との闘い、終焉が視野に入ったとの見解を示し、今回こそはこれまでと違うと発言したことなども円買いにつながっている。昼前後に156.67近辺まで安値を広げた。この後の英国、米国市場が休場となることもあり、その後はもみ合いに転じた。、ユーロドルは1.08台半ば前後での落ち着いた動き。ユーロ円は170.40台から一時170円台を割り込んだ。ポンド円は200円台から199.60台へと軟化。クロス円は円買いが優勢。
ロンドン市場では、やや円安推移。週明けの株式市場はアジア株に続いて欧州株も堅調に推移しており、リスク選好的な動きとなっている。ドル円は157円付近から156.60台で振幅。東京時間には日本国債利回りの上昇、内田日銀副総裁の「デフレとゼロ金利制約との闘いの終焉視野に入った」などの発言を受けて円高の動きがみられたが、ロンドン時間にかけては下げ一服。ユーロ円は170円割れ水準から170円台半ばへ、ポンド円は199円台後半から200円台乗せへと再び買われている。このところ、円高材料に対する動き一巡後は、円安が再燃するパターンが続いている。ドル相場はややドル安方向への動き。ユーロドルは1.08台前半から後半へ、ポンドドルは1.27台前半から半ばへと水準を上げている。米債利回りの手掛かりに欠けるなかで、リスク選好の動きが下支え。5月独Ifo景況感指数は予想を下回ったが、期待指数は改善しており反応しにくい内容だった。この日は英米市場が休場となっており、材料難となる中、次第に値動きは鈍ってきている。
NY市場はメモリアルデーの祝日で休場。
(28日)
東京市場は、一時円買いも続かず。ドル円は円債利回り上昇やドル高調整などで朝から売りが入ろ、156.90付近から156.63近辺まで下落。10年国債利回りは朝の1.021%から1.04%まで上昇した。午後には円債利回りの上昇一服に加え、14時に公表された4月の日銀コア消費者物価が刈込平均、加重平均、最頻値いずれも3月から鈍化したことなどが円売りにつながり、156.80台まで買いが出た。ユーロドルは1.0860近辺から1.0880台へと上昇後、揉み合いに。ユーロ円は170円台前半での揉み合いから170.60付近へと上昇。ポンド円は200円台前半で下に往って来い。
ロンドン市場では、ドル売りが一服。ドル円は東京午前の下落を戻して157円に迫ったが、乗せ切れず156円台後半で推移した。クロス円は底堅い動きで、特にユーロ円が堅調で高値を170.70台に伸ばしている。ポンド円も200.50台に高値を更新した。欧州株はやや売りに押されており、調整圧力が優勢。米株先物は時間外取引でナスダック先物が堅調も、ダウ先物は上値が重い。米10年債利回りは4.44%台から4.46%台の揉み合い。ドルストレートは、東京午前にドル売りの動きが広がったあとは、売買が交錯している。ユーロドルは1.08台後半に高止まり。ポンドドルは1.27台後半で神経質に振幅している。4月ECBインフレ期待調査は1年先2.9%、3年先2.4%といずれも前回から小幅に低下した。英CBI小売売上高指数はプラス8と前回のマイナス44から急回復した。ただ、いずれにも反応薄だった。
NY市場では、ドル買いが優勢。タカ派色の強いカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁の発言に敏感に反応したようだ。同総裁が「利上げを選択肢から排除した人はいないと思う」と述べたことに敏感に反応したほか、そのあとの米消費者信頼感指数が予想を上回ったこともドル買い戻しを加速させたようだ。市場は年内の利下げ期待を後退させている。ドル円は156.60付近まで下げていたが、NY時間には157円台を回復している。ユーロドルは伸び悩みも、1.08台は維持した。クノット・オランダ中銀総裁は、直近の賃金指標はまだ急ピッチで上昇していることを示しており、インフレ鈍化の過程は不安定なものになる可能性が高い、と指摘した。このところのドル円は上げが一服しているものの、円安は根強く続いており、ユーロ円やポンド円などクロス円が高値を更新。特にポンド円は200円台半ばまで上昇し、約16年ぶりの円安水準となっている。
(29日)
東京市場は、小動き。ドル円は157円台前半での推移。前日の上昇を受けて、午前には157.40付近まで買われたが、円債利回り上昇が上値を抑えた。10年国債利回りは1.05%近辺で取引を開始すると1.079%まで上昇した。ただ、米債利回りの上昇もあってドル円の下げは限定的だった。米10年債利回りは4.54%付近から4.565%へと上昇している。日経平均は一時300円超安と冴えず。長期債利回り上昇が嫌気されたもよう。ユーロ円は170円台後半に買われた後、170.50割れに。ユーロドルは1.08台半ばでの小動き。月次の豪消費者物価指数が予想を上回り、豪ドル買い反応も値動きに持続性は見られず。
ロンドン市場では、円買いとユーロ売りが先行も、次第に一服。総じてドル相場の底堅い動きが目立っている。ロンドン早朝にはドル円が157円台割れへと下落。安達日銀審議委員が「円安の政策対応、中長期の予想インフレが上振れれば考える」としたことに反応した。しかし、すぐに157円台に買い戻されている。米10年債利回りは4.56-4.57%付近に高止まりしており、ドル買い圧力が根強い。ユーロドルは1.08台後半から前半へと下落。一連の5月ドイツ各州ごとの消費者物価指数で前月比が横ばいもしくは+0.1%に低迷したことがこの後の全国版の数字の下振れを想起させていた。ユーロポンドが節目の0.8500レベルを下回りストップを巻き込んで売られる動きもみられたが、すぐに戻した。ポンドドルはユーロドルとは逆に1.27台後半に買われたあと、1.27台前半へと下押しされている。欧州株が軟調に推移しており、クロス円は上値重く推移。ただ、ユーロ円は170円台後半から前半へと下落したあとは、半ばへと下げ渋り。ポンド円は200円台での上下動。リスク動向に敏感な豪ドル円が軟調だが、104円台は維持している。
NY市場は、ドル買いが優勢。ドル円は157.70円付近と、5月2日に財務省が介入したと思われる水準まで戻す動き。米国債利回りの上昇と伴にドル相場も次第に底堅さを取り戻している。FOMC委員による一貫して顕著なタカ派スタンスがドルを下支えしている。直近ではカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁が大幅なインフレ改善が確認されるまで利下げを先送りするよう主張し、インフレが持続すれば利上げの可能性にまで言及していた。ユーロドルは1.08ちょうど付近へと下落した。ポンドドルはNY時間にかけて急速に戻り売りが強まり、1.27ちょうど付近まで下落した。ポンドは対ユーロでの買いが強まっていたが、その動きも本日は巻き返されている。ポンドは英欧の利下げ時期観測の差異で対ユーロで買われていたが、ここにきて株式市場の調整とともに調整色を強めた面が指摘されている。
(30日)
東京市場は、円高の動き。日経平均の大幅安とともにリスク回避圧力で円が買われた。また、日本10年債利回りが2011年以来13年ぶりの高水準となる1.1%台まで一時上昇したことも円買いを誘った。ドル円は午前に157.60台から157.30台へと下落、午後には米株価指数先物の時間外取引やアジア株の下落もあって一段と下値を広げ、157円割れから156.83付近まで下落した。クロス円も軒並み円高方向に振れ、ユーロ円はきょうの高値から1円以上のユーロ安・円高水準となる169.25付近まで、ポンド円は前日終値から1円以上下落して199円割れに沈んだ。ユーロドルは対円での下げもあって午後に一時1.0788付近まで軟化。
ロンドン市場では、円高・ドル高の動きに調整が入っている。前日海外市場から東京市場にかけては、円買い・ドル買いの動きが強まった。前日の米株に続いて今日の日本株やアジア株の軟調な動きに反応していた。しかし、ロンドン時間に入ると前日に上昇していた米債利回りが小幅に低下、欧州株も反発の動きを示している。為替市場でのリスク警戒感も一服した格好。ドル円は156円台半ばまで下落していたが、157円付近へと下げ渋っている。ユーロ円も169円手前を安値に169円台後半へ、ポンド円は199円台割れ水準から199円台後半へと反発している。ただ、東京市場からの下落を消すほどの勢いはみられていない。ドルストレートはドル安方向に動いている。ユーロドルは1.07台後半から1.08台乗せへ、ポンドドルは1.26台後半から1.27台乗せへと反発している。米10年債利回りは4.62%付近から4.58%台までの低下。このあとのNY市場では、米GDP改定値、新規失業保険申請件数など一連の米経済統計が発表される予定。
NY市場では、ドル売りが優勢。第1四半期の米GDP改定値が個人消費の鈍化で下方改定になったことがドル売りを誘発。米国債利回りも低下。ウィリアムズNY連銀総裁とボスティック・アトランタ連銀総裁の発言が伝わっていたが、比較的ハト派な発言だったこともドルを圧迫した。ドル円は一時156円台半ばまで下落した。円の買い戻しも見られ、ドル円のみならずユーロ円やポンド円も戻り売りに押された。本日も株安が続いており、前日には見られなかったリスク回避の円買いが出ているとの指摘も出ている。月末接近で市場は調整色を強めているが、株安と伴に個人投資家中心に円ショートの巻き戻しが出ているのかもしれない。ユーロドルは前日の下げを戻し、1.08台を回復。ポンドドルも1.26台まで下げたあと、NY時間には1.27台半ばまで反発した。
(31日)
東京市場は、小動き。ドル円は朝方に157.02近辺まで買われたが、その後は156円台後半で動意に欠ける取引が続いた。ユーロ円は朝方に170円台をつけたが、その後は169円台後半中心で推移した。ユーロドルは1.08台前半で推移した。米債利回りが低下一服となり、ややドル買いの動きがみられたが、値幅は限定的だった。日銀国債買入れ計画は大方の予想通り現状維持となり、相場への影響は限定された。日本時間午後9時30分の米PCEデフレータに市場の注目が集まるなかで、動きにくい展開だった。
ロンドン市場は、円売りが優勢。米債利回りの小幅上昇がドル円をサポートしたほか、日銀は6月の国債買入れオファー額が据え置かれたことが市場の国債購入減額観測に水を差して円売りにつながったもよう。また、5月ユーロ圏消費者物価指数速報値が前年比+2.6%と前回や予想を上回ったことがユーロ買い圧力となっている。ユーロドルは1.08台前半から半ばをうかがう動き。ドル円が157円台前半で高値を伸ばす動きとともに、ユーロ円は169円台半ばから170円後半へと上昇。対ユーロでは後塵を拝しているポンド相場も、対円では再び200円台乗せへと買われている。ポンドドルは1.27ちょうど付近から前半での推移。
NY市場でドル円は下に往って来いの展開。序盤はこの日発表の4月のPCEデフレータを受けてドルが売られ、ドル円は156円台半ばまで一時下落した。米国債利回りも低下し、ドル円も売りに押されたものの、動きが一巡すると157円台に戻している。特段の材料は見当たらなかったが、月末ということもあり、ロンドンフィキシングかけて実需の動きが出ていた可能性もありそうだ。

執筆者 : MINKABU PRESS
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