ドル円は143円台前半に上昇 各国中銀がタカ派色を強める中で円安が強まる=NY為替概況
ドル円は143円台前半に上昇 各国中銀がタカ派色を強める中で円安が強まる=NY為替概況
きょうのNY為替市場でドル円は上値追いが続き、143円台に上昇した。東京時間には141.60円近辺まで値を落としていたが、再び円安が強まったうえ、NY時間に入ってドル買いも見られたことから、意識されたポイントである142円台半ばの水準を一気に上抜けて来た。
きょうもパウエルFRB議長が上院で議会証言を行っており、「FOMC参加者の大多数があと2回の利上げ見込んでいる」と述べたこともサポートしたようだ。
きょうはスイスフランに対して円が1973年の変動相場制移行後の最安値を更新。スイス中銀は本日利上げを実施したが、0.25%ポイントと1年前の引き締め開始以降で最も小幅な利上げとなった。追加利上げの可能性は示唆したものの引き締めペースは緩めている。
それでも、依然として金融緩和を唯一継続している日銀と各国中銀との金融格差は拡大が見込まれている。本日は野口日銀審議委員の発言が東京時間に伝わっていたが、賃金の伸びを理由にイールドカーブコントロール(YCC)政策は当面調整が必要とは考えていないと述べていた。また、足元の円安についても、インバウンドや生産拠点の国内回帰期待などメリットを強調。
世界的にエネルギーを始めとしたコモディティ価格は落ち着いてきており、サプライチェーン問題も緩和する中、日本の輸入物価は下落傾向が見られている。日本経済にとっては心地よい円安なのかもしれない。
ユーロドルは1.09ドル台半ばに下落。本日は一時1.10ドル台に上昇する場面も見られていたが、1.10ドル台に入ると戻り売り圧力も強まるようだ。きょうは英中銀が予想外の0.50%ポイントの大幅利上げを実施してきたが、ECBについても想定以上の利上げがあるのではとの思惑も出ていた模様。いまのところ7月の0.25%ポイントの利上げはほぼ確実視しているものの、9月については意見が分かれている。
そのような中でドイツ国債の逆イールドが拡大しており、2-10年債の逆イールドが1992年以来で最も拡大している。基本的に逆イールドは景気後退への警戒感を表すものだが、ECBの積極利上げでユーロ圏の景気は落ち込むとの観測が広まっているのかもしれない。
ポンドドルはNY時間に入って緩やかな売りに押され、1.27ドル台前半に値を落とした。きょうは英中銀金融政策委員会(MPC)の結果が発表され、予想外の0.50%ポイントの大幅利上げを実施した。前日の英消費者物価指数(CPI)も強い内容だったことから、英中銀はさらに強力な引き締めを選択したようだ。
ただ、ポンドの反応は前日の英CPI後と同様に売りで反応している。発表直後こそ買いの反応を見せたものの、直ぐに売りに押された。英中銀の積極利上げが経済に打撃を与えかねないとの解釈が出ている。英中銀は追加利上げの可能性を示唆してきたが、それは経済活動を阻害し、最終的には景気後退を引き起こすことでポンド安をもたらすと見られている。
市場では年内残りのすべてのMPCでの利上げを見込み、ターミナルレート(最終到達点)を6.00%まで引き上げるシナリオを完全に織り込んでいる。それ以上の可能性も見ているようだ。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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