ドル円は140円台回復 ブラード発言でドル買い戻し強まる=NY為替概況
きょうのNY為替市場はドル買い戻しが強まる中、ドル円は140円台を回復した。FOMC内でもタカ派の急先鋒として知られるブラード・セントルイス連銀総裁が「政策金利はまだ十分に制限的と見なされるゾーンにはない」と述べたうえで、ターミナルレート(最終着地点)の5-7%のレンジにも言及したことが、米国債利回り上昇と伴にドルの買い戻しを誘っている。5.00-5.25%は最低水準だとも述べていた。
来年にかけてのドルについては、2023年に反落とする一方、きれいな弱気トレンドまではないとの見方が出ている。来年にはFRBの利上げサイクルが終了し、過去1年間のドル高トレンドは反転が予想される。しかし、構造的な下落の始まりではなく、あくまで調整の範囲と定義しているようだ。
FRBが政策引き締めを停止するにつれて、ドルの安全資産としての魅力はいくらか薄れる。しかし、世界の成長はしばらく低迷し、米国の金利水準は依然として魅力的で、他国の脆弱性は顕著だという。
ドル反転にはFRBが利上げに後ろ向きに転換することが必要だが、その可能性は低い。ドル安のもう一つの条件は、安全資産であるドルから資金を引き出せるほど魅力的な世界経済の環境があるかだが、世界の成長予測はまだ下方修正されているとしている。
ユーロドルは1.03ドル台前半に下落。きょうの下げで200日線に上値を拒まれた格好となっており、このまま200日線から下放れして行くか警戒される。
ユーロ加盟国の経済状況によってインフレが異なることから、ECBは今後厳しい課題に直面する可能性が高いとの声が聞かれる。この日は10月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)確報値が発表になっていたが、引き続き物価上昇圧力が広範囲に及んでいることが示された。
物価上昇圧力は緩やかになる兆候こそ見せているが、上昇率の鈍化は緩やかで、2023年第4四半期まで総合インフレがECBの目標2%を下回ることはないと予想されるという。また、エネルギー価格を抑えるために加盟国政府は様々な財政介入を実施しているが、それにより加盟国ごとに異質なインフレ動向が見られており、ECBが金融政策を決定する上で、それは困難な課題を提示しているとも指摘した。
ユーロ圏消費者物価指数(確報)(10月)17日19:00
結果 10.6%
予想 10.7% 前回 10.7%(前年比)
結果 5.0%
予想 5.0% 前回 5.0%(コア・前年比)
ポンドドルも戻り売りが強まり、一時1.17ドル台に下落。目先は1.16ドル台半ばに来ている100日線を試しに行くか注目される。
きょうはハント英財務相が秋季財政報告を議会に提出した。インフレ抑制に向けて、ここ10年で最大規模の増税案と歳出削減を打ち出している。大方、事前に伝わっていた内容と同じだったものの、ポンドは軟調な反応が見られている。ポンドは対ドルのみならず、対ユーロでも下落。
財務相は「財政・金融政策が一体となる必要がある。つまり政府と中央銀行が足並みをそろえるということだ」と述べた。前日発表された英消費者物価指数(CPI)が41年ぶりの水準になったことについては「引き下げには絶え間ない闘いが必要だということが明らかになった」と述べていた。
市場では英インフレが高く、今後も英中銀は利上げを継続することが予想されるものの、同時にリセッション(景気後退)への警戒感も強まっていることから、英インフレ指標の強さの割には、英中銀はこれまでのような積極利上げはできないと見ているようだ。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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