今週のまとめ7月8日から7月12日の週
8日からの週は、米金融政策見通しが話題の中心だった。先週の米雇用統計で予想外の強さをみせた非農業部門雇用者数の伸びが、市場での0.5%利下げ見通しを後退させ、ドル買いにつながった経緯があった。しかし、今週最も注目されたパウエルFRB議長の議会証言では、「6月FOMC以降、貿易問題を巡る不確実性と、世界経済に対する懸念が引き続き米経済の見通しを圧迫しているようだ」「6月雇用統計は見通しに変化を与えなかった」などとしており、市場では0.5%利下げ観測が盛り返した。一方、その後発表された米消費者物価指数では、コア前年比が予想を上回り、再び0.5%観測がやや後退している。7月利下げ観測の強さをめぐってドル相場は振れたが、全般的にはドル売りが優勢だった。中東情勢の緊迫化や長引く米中貿易戦争、主要国の成長鈍化見通しなどの警戒感は根強いものの、米利下げ観測を受けて米株式市場は最高値を更新しており、市場のリスク動向は良好だった。ドル円は109円乗せに失敗したあと、107円台後半まで下落する場面があったが、週末にかけては108円台に戻している。ユーロドルは1.12台割れ水準から1.12台後半へと水準を上げている。
(8日)
東京市場は、円買いが優勢。先週末は強い米雇用統計結果を受けて、市場での米大幅利下げ観測が後退。ドル高とともに株安の動きがみられた。週明けのドル円相場は108円台半ばで取引を開始した。日経平均や上海総合指数など週明けの日本株やアジア株が大幅安となると108.30割れ水準へと下押しされた。早朝にトルコリラが下落した。週末の報道で、エルドアン大統領がトルコ中銀総裁の更迭を発表したことが背景。リラ円の下落がドル円の売り圧力につながった面も指摘された。ユーロドルは1.12台前半での小動き。
ロンドン市場は、ドル高調整の動き。ただ、ドル売りの動きは限定的で、次第にドル買い圧力が復活してきている。米10年債利回りはロンドン序盤に2.0078%まで低下したが、その後は一時2.03%台まで上昇した。ドル円は108.28レベルまで下押しされたあとは、108.50台へと再び上昇。ユーロドルは1.1230台までの反発にとどまると1.1210台へと再び軟化。ポンドドルは1.25台前半での上下動にとどまっている。クロス円は反発の動き。欧州株は上値重く推移しており、一時プラス転換する場面もあったが、再び売りに押されている。ただ、ユーロ円は121.50台から121.80近辺まで、ポンド円は135.50台から136円乗せ水準まで反発と東京午前の下げを消す動きとなっている。リスク選好的な動きとはいえないものの、ドル円の反発とともにクロス円も下げ渋っている。米雇用統計後のドル高圧力が残る格好となっている。
NY市場は、ドル買いが再開。ロンドン午前の調整の動きを経てドル円は108円台前半から108.80近辺へと上昇。ユーロドルは1.12台前半から1.12台割れを目指す動き。ポンドドルは1.25台前半から1.25ちょうど近辺まで下落する場面があった。先週末の米雇用統計に次に、市場は10日に実施されるパウエルFRB議長の下院議会証言に注目している。強い米雇用増を受けて市場での7月0.5%利下げ観測が後退、9月の利下げについても延期の可能性を見始めているもよう。ユーロにとってはECBの追加緩和期待が重石となっており、ドル高とともにユーロドル相場を圧迫している。市場の一部には7月理事会では追加措置の示唆を、9月には利下げ、12月にはQE再開との見方があった。次期総裁に指名されたラガルトしは政治家の面が強く、景気支援に積極的との期待も。
(9日)
東京市場は、様子見ムード。ドル円は108.90近辺へとじり高の流れ。前日高値を広げたが、109円手前では売りに頭を抑えられた。ユーロドルは1.12台前半でわずか9ポイントレンジに収まっている。各通貨とも小動き。あすとあさってのパウエルFRB議長による半期議会証言に注目が集まっており、それまでは動きにくい展開となっている。豪ドルは小安い。米雇用統計後の株安基調が継続、中国株などの軟調な動きが豪ドル売り圧力となっていた。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。米雇用統計後のドル高の流れが継続している。ドル円は序盤に再び上値を試して、108.96レベルまで高値を伸ばした。しかし、109円台乗せには至らず108円台後半での取引となっている。欧州株や米株先物が軟調に推移しており、クロス円が軟調。円高の動きも交錯している。ユーロ円は122円挟みからやや下押しされている。ポンド円は136円割れから135.50台へ、豪ドル円は75円台後半から75.40近辺へと下落。ドル相場全般にはドル買い基調が続いており、ポンドドルは1.25台割れから1.2450台へ、豪ドル/ドルは0.69台後半から0.6930近辺へと安値を広げた。ユーロドルは上下動を伴いながらも安値を1.1193レベルに更新した。ポンド対ユーロではポンド売りが優勢。エコノミストへの調査で第2四半期の英GDPはマイナス成長となる見通しが報じられていた。
NY市場は、小動き。ドル買いの流れは継続も、あすのパウエルFRB議長の議会証言を前に動きにくい展開だった。ドル円は109円台をうかがう動きをみせたが、108円台後半での取引にとどまった。ユ-ロドルは1.12台前半での取引。ロンドン午前に1.11台をつけたあとは下げ渋っている。一方、ポンドドルは下値を模索する動き。ストップを巻き込んで1.2440近辺まで下落、2017年4月以来の安値水準となった。エコノミストへの調査で第2四半期の英GDPはマイナス成長となるとの見通しが報じられたことが背景。英議会が合意なきEU離脱を阻止するため法案を支持したと伝わったが、特段の反応は無かった。
(10日)
東京市場は、様子見ムード。ドル円は午前の取引で108.99レベルまで買われた。しかし、109円台はつけきれず調整が入り、その後はもみ合いとなった。朝からのレンジは17銭と小動きだった。ユーロドルは1.12ちょうど付近で8ポイントレンジでの取引だった。主要通貨は軒並み狭いレンジで取引された。日本時間午後9時半に米議会証言のテキスト公表、同11時に下院金融サービス委員会での議会証言、11日午前3時にはFOMC議事録公表と重要イベントが目白押しに予定されている。
ロンドン市場でも、様子見ムードが続いた。ドル円は108.90台で大台をうかがったが109円台は近くて遠い流れとなり、高値圏で膠着した。ユーロドルは買い戻しの動きがみられたが、1.1230近辺までと値動きは限定的だった。鉱工業生産や製造業生産高が弱めに出た英ポンドは、指標の弱さにもかかわらず対ドルを中心に買い戻し。東京市場などでの影響は限定的なものにとどまった合意なきブレグジットを議会休会の中で強行決定することを防ぐ法案成立などを好感する格好だった。ポンドドルは一時1.25台手前まで買われた。
NY市場では、ドル売りが強まった。ドル円は108.50割れから108.35近辺まで一時下落した。きょうはパウエルFRB議長の下院金融委員会での半期に一度の議会証言が行われた。NY時間に入って直ぐに証言原稿が事前に伝わり、為替市場はドル売りの反応を強めた。議長は、「6月FOMC以降、貿易問題を巡る不確実性と、世界経済に対する懸念が引き続き米経済の見通しを圧迫しているようだ」と述べた。「インフレ圧力も抑制されたまま」とも指摘した。市場は今月末のFOMCでの利下げの可能性を示唆したものと受け止めたようだ。また、その後の議会証言の質疑応答で「6月雇用統計は見通しに変化を与えなかった」との発言にも敏感に反応した。午後になってFOMC議事録が公表され、利下げの根拠が強まったと多くの参加者が判断していたことが明らかになった。ユーロドルは1.1255近辺まで上昇。ポンドドルも1.25台に乗せた。一方、カナダドルは下落。カナダ中銀が金融政策委員会の結果を公表しており、政策金利は大方の予想通り据え置かれたものの、注目の声明で「現在の緩和が適切」と言及していたことに敏感に反応した。ドルカナダは一時1.31台乗せ。ただ、ドル売り圧力に1.30台へと押し戻された。
(11日)
東京市場は、ドル安・円高の動き。ドル円は108円台を割り込み、一時107.86近辺まで下落。前日のパウエルFRB議長による議会証言を受けてドル売りが優勢になった。また、イラン革命防衛隊が英国籍のタンカーを拿捕しようとしたと報じられたことで、中東情勢への警戒感も広がった。その後の戻りは108円近辺までと限定的。ユーロ円は122円近辺から一時121.62近辺まで下押しされた。円高の側面も強かった。一方、日経平均は前日米株高を受けて110円高で引けた。
ロンドン市場は、円高一服とともにドル売り圧力が継続。ドル円は108.20近辺まで反発した。欧州株が買い先行で取引を開始したことでドル円とともにクロス円が上昇している。米債利回りの低下は一服、10年債利回りは2.06%台に戻している。ただ、欧州株の上値は重く、上昇力は限定的。ユーロ円は122円台手前、豪ドル円は75円台半ばまでの上昇。ポンド円は135円台後半へと上昇し、本日高値を広げている。ポンドドルは1.2570近辺まで一段高。豪ドル/ドルは0.6986レベルまで小幅に高値を更新。ユーロドルは1.1270-80レベルに高止まり。英中銀金融安定化報告では、合意なき離脱の可能性が高まっている、世界経済見通しへのリスクが高まっている、と警告したが、英銀行は貿易戦争、無秩序な離脱などに耐えうる、との楽観的な見方もあった。クーレECB理事は、政策担当者は市場のシグナルに過剰に反応すべきではない、としながらも、ECBは弱い物価圧力について深刻に受け止めている、と述べた。
NY市場は、ドル買いの動きが優勢。ドル円は107円台に入ると買戻しが出て108円台に戻した。6月の米消費者物価指数のコア指数が予想を上回ったことが、利下げ期待をやや後退させて米債利回り上昇とともにドル買い戻しを誘った格好だった。パウエル議長の米上院での議会証言が行われたが、事前原稿は前日と同じ内容だった。バーキン・リッチモンド連銀総裁とボスティック・アトランタ連銀総裁の発言が伝わっていたが、7月利下げに関してはオープンとの姿勢を示していた。ユーロドルは戻り売りが優勢で、1.13台から1.12台へと反落。IMFがユーロ圏経済に関するレポートを公表しており、ショックはないが沈滞している。ただ、ECBの利下げ余地は限られており、下振れリスクが高まった場合、財政刺激策が必要になるだろうと言及した。ポンドドルは1.25台前半へと反落。
(12日)
東京市場では、ドル円が朝高の後は上値が重くなった。前日NY市場では米消費者物価指数コア前年比が予想を上回り、今月末の米FOMCでの0.5%利下げ見通しが後退し、ドル買いを誘った。東京早朝にはその流れを受けてドル円は108.61レベルまで上昇。しかし、その後は売りに押されている。週末の三連休を控えたポジション調整の動きなどで、108.30割れ水準まで反落。ユーロドルは朝方の1.1250割れ水準から1.1275近辺まで上昇、総じてドル売りが優勢だった。
ロンドン市場は、やや円高の動き。序盤は欧州株の上昇などで円安の動きがみられたが、すぐに失速。ドル円は108円台半ばが重く、108円台前半での取引。ユーロ円は122円割れへ反落。ポンド円は136円台が重く、135円台後半に押し戻される値動き。豪ドル円は序盤に76円手前まで買われたが、その後は失速して75.60台へと反落。ビスコ伊中銀総裁は、経済活動が一段と停滞する場合には追加緩和措置を講じると示唆。米国の利下げ期待とともに株式市場にとっては好材料に。ただ、海外政治情勢は引き続き不透明。トルコのロシア製ミサイルシステム配備、中国が台湾問題で米企業への制裁を示唆、英国がペルシャ湾に軍艦を増派など地政学リスクの火種がくすぶっていた。
NY市場でドル円は売りが優勢となり108円を割り込んだ。今週のパウエルFRB議長の議会証言を受けたドル売りも一服しつつあったものの、再びその動きが出ている。前日は107円台まで値を落とした後、108円台半ばまで戻す展開が見られていたが、108円台半ばからの上値抵抗が強く、短期筋の見切り売りも出ていた模様。
執筆者 : MINKABU PRESS
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