為替相場まとめ8月31日から9月4日の週
31日からの週は、米金融政策のタカ派の度合い、中東情勢の悪化、そして日銀の利上げ観測という三つの要因が相互に干渉し、ドル円相場が大きく動いた。8月末(31日)はベッセント米財務長官の利上げ圧力発言を契機に円買いが進み、ドル円は160円台から159円台へ押し戻されたが、米実質金利の高さがキャリー需要を支え、円高は限定的だった。1日は日本の10年債利回りが3%台へ上昇しつつも、米金利も同時に上昇したため日米金利差の縮小は意識されず、ドル円は160円台を維持。原油高と欧州指標悪化がユーロを圧迫したことで、ドル高が優勢となった。2日は中東リスクによる有事のドル高でドル円が160.39円まで上昇したが、国内金利急騰と日銀利上げ観測が円買いを誘発し、159円台へ急反落。ロンドン・NYではドル買いが続く一方、円買い介入観測が市場心理を冷やし、クロス円は全面安となった。3日には高田日銀委員の0.5%利上げ示唆やGPIFの国内債投資拡大観測が円買いを決定的に強め、ドル円は157円台、NYでは155円台へ急落。ウォラーFRB理事の政策金利据え置き言及も加わり、1カ月続いた円安トレンドは構造的に反転しドル円は155円台まで下落、円キャリーの巻き戻しが市場全体を支配した。週末の米雇用統計では非農業部門雇用者数が予想を大きく上回る力強い伸びを見せた。これを受けてドル円が急騰も、すぐに反落するなど不安定な上下を経て、週末を前にした警戒感もあって、少し調整が入って156円台前半で引けている。
(31日)
東京市場では、ベッセント米財務長官による日銀への利上げ圧力や、アベノミクスの終焉を示唆する発言を背景に、円買いが広く進行した。短期金利市場で日銀の9月利上げ期待が一時92%まで高まり、年内2回利上げの見通しも80%へ上昇した。ドル円は朝方に先週末高値に並ぶ160.20円を付けたものの、利上げ期待から昼前には159.73円まで下落し、午後は159.80円を挟む狭いレンジでもみ合った。クロス円も円買いが波及し、ユーロ円は早朝の185.64円から昼前に185.10円台へ下落、ポンド円も216.30円台へ下げた。一方、ユーロドルは1.15ドル台後半、ポンドドルは1.35ドル台前半と、先週末の安値を割り込めずに一定のレンジ内でもみ合う展開が続いた。
ロンドン市場では、先週末のウォーシュ米FRB議長のタカ派発言を背景としたドル買いが一巡し、ポジション調整によるドル売りと円買いが優勢となった。ドル円は東京市場からの円買いの流れを引き継ぎ、ベッセント米財務長官の早期利上げ圧力発言も影響して一時159.48付近まで下落した。しかし、159.65-70レベルの大規模なNYカット・オプションに引き寄せられ下げ渋った。ユーロドルはドイツ各州のCPI上振れを背景としたユーロ買いに支えられ1.16台へと上昇し、対ポンドでもユーロ買いが鮮明になった。ポンドドルは一時1.35台半ばまで買われたものの、クロス円はドル円とともに上値が重く軟調な推移となり、全体的に値動きは膠着感を強めていった。
NY市場では、先週のウォーシュ議長の講演を受けた米利上げ期待から、ドル円が一時160.20円まで上昇したものの、160円台での介入警戒感や利益確定の戻り売りに押されて159円台に伸び悩んだ。ただし、米実質金利の高止まりによるキャリートレード需要は底堅く、介入警戒だけでは押し目でのドル買い・円売りを止めにくい状況が続いている。ユーロドルは中東情勢の緊迫化を背景に1.16ドル台へ戻す展開となったが、欧州の天然ガス供給制約が続けばユーロ相場への影響が強まると懸念されている。ポンドドルは1.35ドル台半ばで底堅く推移した一方、ポンド円は軟調となり、英固有の材料に乏しい中で米金融政策や原油高による景気悪化懸念がポンド相場を複雑に左右する状況となっている。
(1日)
東京市場では、日本の10年物国債利回りが1996年以来となる3%台へ上昇したことや、ベッセント米財務長官による日銀への利上げ示唆発言を受けて、午前中はやや円買いが先行し、ドル円は一時159.65円まで下押しした。しかし、米長期金利も同時に上昇したため日米金利差の縮小が意識されにくく、その後は押し目買いが優勢となって159.90円台まで上値を伸ばすなど落ち着いた値動きとなった。ユーロドルは米債利回り上昇に伴うドル高の影響で1.1601ドルまで軟化し、ポンドドルも1.3535ドルへ下落した。クロス円は対ドルでの下落に連れ安する場面があったものの、午後にはドル円の上昇に支えられてユーロ円が185.60円台、ポンド円が216.60円台へと切り返す展開となった。
ロンドン市場では、ホルムズ海峡を巡る中東情勢の悪化警戒による原油高と、ウォーシュ米FRB議長のタカ派発言を背景とした米10年債利回りの上昇により、有事のドル買い圧力が強まった。日本の新発10年債利回りが3.00%に達したものの、過去最高の概算要求額による積極財政への警戒感も円安に作用し、ドル円は一時160.10付近まで上昇した。ユーロは原油などエネルギー価格の高止まりへの警戒感や、スペインとイタリアの製造業PMIが悪化したことで売られ、ユーロドルは1.15台後半で上値の重い展開となった。一方、ポンドは原油高が石油通貨としての買いにつながり底堅く推移し、ポンド円は216.74付近まで高値を更新するなど、全般的にドル高と円安が優勢な相場環境となった。
NY市場では、中東情勢の不安定化に伴う原油価格の上昇や、インフレ懸念を背景としたFRBの利上げ観測により世界的な債券売りが進行し、ドル高が優勢となった。日本の10年債利回りが3%台へ上昇し、G20での日銀利上げ催促発言もあったものの、ドル円は下支えされ一時160.25円と介入後の戻り高値を更新した。ユーロドルは戻り売りが優勢となって1.15ドル台へ下落したが、オプション市場の予想変動率が低水準に留まるなど、ECBとFRBの政策決定を前に市場参加者は様子見姿勢を強めている。ポンドドルは21日線を下回る1.35ドル台前半へ下落し、ポンド円も216円台半ばで上値が重くなるなど、英経済の好調さが一時的との見方から方向感を欠く推移となった。
(2日)
東京市場では、前日の中東情勢を受けたドル高進行や、原油高による日本の交易条件悪化を背景に、午前のドル円は介入後の戻り高値を超える160.39円まで上昇した。しかし午後に入ると、日本の10年債利回りが3.016%と1996年以来の高水準を付けたことや、日銀の利上げ期待などをきっかけに円買いが強まり、投機筋のポジション調整も重なって159.40円台まで急反落した。クロス円も軒並み下落に転じ、ユーロ円はロンドン勢の参入時間帯に売りが加速して184.60円台まで下げ、ポンド円も215.32円へ下落した。ユーロドルは中東情勢を受けたドル高により1.1574ドルまで売り込まれ、ポンドドルも一時1.3495ドルまで下落するなど、ドル高と円買いが交錯する展開となった。
ロンドン市場では、高田日銀審議委員のタカ派発言が日銀の早期利上げを想起させ、東京午後からロンドン朝方にかけてドル円は159.44付近まで急落し、クロス円も全面安となった。しかしロンドン時間に入ると円買いが一服し、中東リスクに起因するドル買い圧力が前面に押し出された。欧州株安や米10年債利回りの上昇も背景にドル円は159.90付近へ反発し、ユーロドルは1.1566付近、ポンドドルは1.3480付近へとそれぞれ安値を更新した。ナーゲル独連銀総裁はECBの9月利上げを示唆したものの先行きについては明言を避け、ユーロ円は185円付近で下げ渋った。ポンドも原油高の一服により買い調整が入り、全般的にドル買い圧力が根強い中で為替市場は推移した。
NY市場では、ドル円が159円台半ばから突如として158円台前半へ急落し、市場では円買い介入やレートチェックへの警戒感が高まったが、変動幅が過去の介入時より小さく、米当局からの確認もないため実弾介入には懐疑的な見方が広がっている。この急落により投資家は上値追いに慎重な姿勢を見せた。ユーロドルは1.1565ドル付近まで下落し、欧州の原油高による交易条件悪化がユーロの重石となって米欧金利差が縮小しても買われにくい構造が浮き彫りになった。ポンドドルは下値模索が続いて1.34ドル台へ沈み、ポンド円も一時213円台へ急落して重要なテクニカルラインを下抜けるなど、英労働市場の生産性向上は見られるものの円高圧力に押される展開となった。
(3日)
東京市場では、昨日のレートチェック観測や高田日銀委員による0.5%利上げの可能性を示唆する発言を受けて、短期金利市場で大幅利上げ期待が急伸し、円買いが優勢な展開となった。加えて、GPIFが7年ぶりに8月の経営委員会を開催し、国内債券への投資割合拡大を含む資産構成の見直し観測が浮上したことも円買いを強く後押しした。ドル円は朝方に158.97円まで戻す場面があったものの、その後は売りが加速して午後には157.20円台まで大きく下落した。円全面高の流れの中でクロス円も軒並み急落し、ユーロ円は朝方の184.00円付近から182.36円前後へ、ポンド円も214.30円台から212.04円へと大きく水準を切り下げ、日米当局の円安阻止姿勢が警戒される相場となった。
ロンドン市場では、日銀のタカ派姿勢やGPIFの国内資金シフト観測、さらに片山財務相や三村財務官による円安牽制発言が重なり、円が一段と買われた。ドル円は実弾介入時のような急落ではなく着実に水準を切り下げる形で、157円台割れから安値156.18付近まで軟化した。円キャリー取引のポジション巻き戻しやヘッジ率引き上げの動きが観測され、オプション市場では円コール・オーバーが前回介入水準まで上昇した。この強烈な円全面高の影響で、ユーロ円は181.25付近、ポンド円は210.79付近まで大きく安値を広げた。ユーロドルは1.16付近、ポンドドルは1.34台後半とドルストレートの値動きは限定的で、原油高に対する特段のドル高反応も見られなかった。
NY市場では、ウォラーFRB理事の発言により今月の利上げ判断が次回のインフレ指標次第との認識が広がり、米利上げ期待が後退したことでドル安が進行した。同時に、日銀の0.25%追加利上げ観測やGPIFによる国内資産へのシフト観測が円買いを強く促し、ドル円は200日線を明確に下抜けて一時155円台半ばまで急落した。これにより、過去1カ月続いた緩やかな円安トレンドは完全に一変した。ユーロドルはドル安を受けて1.1640ドル近辺まで上昇した一方、ユーロ円は急落が続いて180円台半ばまで下落した。ポンドドルは1.35ドル台へ買い戻されたものの、ポンド円は一時210円を割り込む急落となり、英国予算案発表を控えた低ボラティリティに対するリスク過小評価も指摘されている。
(4日)
東京市場では、ドル円が156円台前半へ反発した。昨日の急速な円高局面にいったん息継ぎが入る格好となった。クロス円も反動高が入り、ユーロ円は181円台後半、ポンド円は211円台後半へ戻した。日米金融政策見通しの差異が円高圧力の基調が続く中、東京市場では今晩の米雇用統計を控えたイベント前の調整が戻りを支えた。雇用統計は雇用者数5.5万人増、失業率4.1%、平均時給+0.3%が予想され、結果次第で政策期待が再び動く可能性がある。円高ヘッジ需要は依然高水準で、NY時間の値動きが次の焦点となる。
ロンドン市場では、今夜の米雇用統計発表を控えてポジション調整主体の展開。ドル円は東京午前の安値155.30付近から前日の急落に対する買い戻しが入り、ロンドン時間には一時156.58付近まで高値を更新したが、すぐに156.40付近での揉み合いに落ち着いた。ユーロドルは1.1600近辺に控える巨額オプションの磁力もあり、1.1616-1.1633の極めて狭いレンジで揉み合い。ドル指数は前日の大幅低下から200日線(99.151)を前に99.13近辺までの反発。市場では1週間ボラティリティが高水準を維持し円高ヘッジ需要が意識されるなか、日本時間21:30の米雇用統計と23:00のNYオプションカット(ドル円155/157円、ユーロドル1.16円)の通過を見極める態勢となっている。
NY市場では、米雇用統計後に大きく上下した。 雇用統計は非農業部門雇用者数が予想を大きく上回る力強い伸びを見せた。前回値、前々回値も上方修正されており、前回値は速報時点でのサプライズなマイナス圏からプラス圏に浮上した。こうした雇用統計の結果を受けて、米金利が上昇。9月のFOMCでの利上げ期待なども見られた。ドルは全面高となり、ドル円は156.75円まで急騰した。しかしすぐに反落すると、米雇用統計前の水準を割り込み、東京午前の安値に迫る155.36円まで急落。目立った材料がない中での一気の下げに、レートチェックの可能性を指摘する見方も出ていた。安値からすぐに反発し156円台を回復した後、155.40円台を付けるなど、かなり荒っぽい上下を経て、156円台を回復すると、午後はややしっかりとした動きに落ち着き、夕方にかけて156.20円台を回復した。ドル全面高で、ユーロドルは1.1630ドル前後から1.1585ドルまで急落。その後、ドル円が一気に下げたが、この動きは円買いが主導しており、ユーロドルの反応は目立たず。ただ、週末を前に行き過ぎた動きへの警戒感もあり、その後NY市場午後に入って米雇用統計前の水準に迫るところまでユーロ買いドル売りが入った。ユーロ円などクロス円は、雇用統計発表直後はドル高主導での動きにやや上値の重いもみ合いとなった。その後のドル円の下げを受けて一気に下げる展開となったが、すぐに反発した。ユーロ円は181.50円台から少し下げたところで一気の円買いが入り、180.23円まで売りが出た。すぐに181円台を回復するなど激しい動きを経て、181.50円前後と米雇用統計発表前の水準近くまで戻して週の取引を終えている。
執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。