【来週の注目材料】米第3四半期GDPはまずまずの予想、予想からの乖離に注意
【来週の注目材料】米第3四半期GDPはまずまずの予想、予想からの乖離に注意
米第3四半期GDP速報値が23日に発表されます。本来は10月末に速報値、11月末に改定値が発表され、12月は確報値が発表されるスケジュールですが、10月1日から43日間続いた連邦政府機関閉鎖に際して、同指標を発表する米商務省センサス局も閉鎖されていたこともあり、発表スケジュールが変更されています。新たに示されたスケジュールは12月23日に概算値(通常の速報値はAdvance Estimateですが、今回はInitial Estimate)、1月22日に確報値(本来は改定値Second Estimate、確報値Third Estimateですが、今回はUpdated Estimate/更新値)の発表となります。
今年の米GDPは第1四半期が前期比年率-0.6%と2022年以来のマイナス圏となりました。トランプ関税を前に各国からの対米輸出の前倒しが進んだことで、米国の輸入が+38.0%の上昇。GDPを4.70%押し下げたことが要因となりました。第2四半期はその反動もあって+3.8%の好結果となりました。輸入が-29.3%となり、GDPを5.03%押し上げています。
全体の約7割を占める個人消費は第1四半期が前期比年率+0.6%と弱く出ました(それでも予想よりは強かったです)が、第2四半期は+2.5%と回復しています。2022年からの3年間の個人消費は前年比で+3.0%、+2.6%、+2.9%となっており、回復した第2四半期でもまだ少し弱い数字ですが、底堅さは見られます。
投資は第1四半期が前期比年率+23.3%と大きく伸びましたが、第2四半期が-13.8%と反動でマイナスとなりました。第1四半期は設備投資が+9.5%と2023年第2四半期以来の伸び。内訳をみると機器への投資が+21.4%と大きく伸びており、関税の影響が出る前に前倒しで機器への投資が行われたとみられます。設備投資でGDPが1.24%押し上げられました。また輸入の拡大もあって増加した在庫投資でGDPが2.58%押し上げられました。第2四半期も設備投資は好調で+7.3%となりGDPを0.98%押し上げています。一方在庫は大きく減少しGDPを3.44%押し下げました。
こうした状況を受けて第3四半期のGDPです。市場予想は前期比年率+3.2%と第2四半期には届かないもののまずまずの数字が見込まれています。米国の年間のGDPは2022年が前年比+2.5%、23年が+2.9%、24年が+2.8%といずれも2%台ですから、+3.2%は比較的好結果です。
雇用の厳しさもあって個人消費に対する警戒感がありますが、トランプ関税を受けた輸入の減少の影響が依然強いとみられます。米国の輸入は1-3月の累計が1223億ドルとなっていましたが、4-6月は1042億ドルまで減少、7-9月も1041億ドルとほぼ同じ規模になっています。貿易収支(純輸出)でみると1-3月期が3855億ドルの赤字、4-6月期が1904億ドルの赤字。7-9月期が1892億ドルの赤字となっています。貿易赤字はGDPの押し下げ要因ですから、赤字額減少がGDPにプラスとなります。
なお同じ23日に10月の耐久財受注速報値、10月と11月の鉱工業生産、12月のコンファレンスボード消費者信頼感指数が発表されます。
最注目はやはりGDPで、予想を超える伸びとなった場合は、来年の利下げに対する期待が後退し、ドル高となる可能性があります。米金利先物市場動向からの政策金利見通しを示すCMEFedWatchは12月19日時点で来年1月のFOMCでの利下げを24.4%程度見込んでいます。据え置きの75.6%に比べるとかなり低いですが、それなりに利下げの期待があるという状況。GDPの好結果でその期待が低下した場合、ドル買いとなります。また12月までの見通しをみると、年内2回の利下げが最も多く、1回なども合わせて2回以下の期待が合計で54.3%と、3回以上の45.7%を上回っています。GDPの結果次第で年内利下げの見通しも後退してくると、ドル全般の買いにつながります。
逆に大きく鈍化していた場合は、ドル売りが進む可能性があります。10月1日からの米連邦政府機関閉鎖の影響もあって、第4四半期のGDPは鈍化が見込まれています。第3四半期時点でも弱くなっていた場合、第4四半期の弱い予想と合わせて、米経済の厳しさが意識されます。
執筆者 : MINKABU PRESS
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