為替相場まとめ3月10日から3月14日の週
10日からの週は、為替相場が神経質に方向性が振れる展開となった。ドル安・円高・ユーロ高といった先週までの流れは継続も、一段の値動きは停滞している。トランプ大統領に関連した話題は引き続き豊富で、ウクライナ停戦をめぐる対ロ協議の行方に関心が集まっている。また、関税政策についてはEUとの対立が鮮明となっており、まだ前向きな姿勢には至っていない状況だ。ドイツではCDUとSPD、金融パッケージについて緑の党と解決策で合意との一報にユーロが買われているがその詳細についてはまだ不透明。現在進行形の話題が多く、市場は関連報道に右往左往する状況となっている。米つなぎ予算については、成立の見通しが高まった。市場ムードは全般に落ち着き、株式市場は底堅く推移。ドル円は週末に149円台を付ける場面があり、先週までの円高の流れに調整がみられた。ドル指数の低下は一服。しかし、そのなかで金相場は現物が3000ドル台をつけて最高値を更新している。ウクライナ情勢やトランプ関税について、市場の警戒感の払しょくにはまだ至っていないようだ。
(10日)
東京市場で、ドル円は下に往って来い。午前に一時147.09付近まで下落した。トランプ米大統領が9日のFOXニュースのインタビューで、今年の米国経済がマイナス成長となり景気後退入りする可能性を否定しなかったことや、日本10年債利回りの上昇などがドル円相場の重石となった。しかし、午後にかけては人民元安・ドル高の流れを受けて下げ渋り、147円台後半まで戻すと、その後も147円台半ばから後半で落ち着いた動きが続いた。クロス円は戻りが鈍い。ユーロ円は午前に一時159.78付近まで下落したあと、午後は160円ちょうど前後で小動きとなった。ユーロドルは上に行って来い。午前のドル売り局面で一時1.0871付近まで上昇したが、昼過ぎには午前の上げを帳消しにした。午後は手がかり材料難のなか、前日終値付近で小幅な値動きにとどまった。
ロンドン市場では、円買いが優勢。米株先物が時間外取引で下落、寄り付き時は買われた欧州株も総じてマイナス圏に沈んでいる。米債利回りや独債利回りが低下しており、リスク警戒の動きが広がっている。今週は米金融当局者が金融政策などの発言を手控える「ブラックアウト期間」に入っている。また、12日の米消費者物価指数を控えたタイミングで、本日は目立った経済統計発表は無かった。トランプ関税の米国内への影響や中国物価統計の鈍化など景気動向への不透明感が市場の調整を誘った面も指摘される。ユーロに関しては米大手金融機関がユーロ圏成長予想を引き上げ、ユーロ圏投資家信頼感が予想以上に改善などの好材料があった。一方で、ドイツ機械受注で国内需要が低迷した。カジミール・スロバキア中銀総裁は、「インフレリスクは引き続き上向き」「利下げか一時停止か、オープンマインドでいるべき」と指摘。そして、「ドイツ緑の党、メルツ氏の債務パッケージ草案を支持しない意向」と報じられたことにユーロ売り反応がみられる場面もあった。ドル円は米債利回り低下とともに軟調に推移し、安値を146.87近辺に更新。昨年10月4日以来のドル安・円高水準となった。ユーロ円は振幅も、円買い圧力に押された安値を159円台割れへと広げている。ユーロドルは1.0875近辺から1.0805近辺激しく上下動している。米債利回りとおもに独債利回りも低下した。
NY市場では、円高水準での取引が継続。ドル円は一時146円台まで下げ幅を拡大する場面が見られた。140-145円のゾーンへのレベルシフトを試しそうな雰囲気が本格的に出ている状況。本日も市場は先行き不透明感を強め、投資家は方向感を失っている模様。米株式市場ではテスラ<TSLA>を中心にIT・ハイテク株が一斉に売られ、ビットコインも売りが強まっていた。トランプ大統領の関税と歳出削減策が先行きの不透明感を強めており、政府機関の大量の人員削減が続けば、今後数カ月は雇用創出の足かせとなり、失業率をさらに押し上げる可能性も指摘されている。そのような中、円への逃避買いが強まった。日銀の追加利上げも根強い。IMM投機筋の建玉報告によると、投機筋の円ロングポジションは歴史的な高水準となっていた。米国に資金を振り向けにくくなっており、財政拡張路線に転換した欧州や円に資金が流れているという。 ユーロドルは一時1.08ドル台後半まで上昇する場面も見られたが、先週の急上昇からは一服。ポンドドルは1.29を挟んで上下動。
(11日)
東京市場では、ドル円が一段と下押しされた。リスク警戒の動きが東京午前も継続し、昨日の安値を割り込んで一時146.54近辺まで下落、昨年10月4日以来のドル安円高となった。一方、行き過ぎた動きには警戒感があり、その後ドル円は反発。午前の下げ分を解消し、147.40前後まで反発した。米景気先行き不透明感によるドル売りと、日銀の早期利上げ期待を受けた円買いから、ドル円は下を意識する展開となっているが、一気のドル安・円高進行にも警戒感が見られ、調整が入りやすくなっている。ユーロドルは1.08台での推移。やや上値が重く1.0830台に軟化したが、ドイツの財政拡大についての次期政権案に反対していたドイツ緑の党の共同党首が「交渉の用意がある」と発言したことで1.0875付近まで上昇する場面が見られた。ユーロ円はドル円とともに売られて158.98近辺まで一時下落。その後は159円台を回復、緑の党発言のユーロ買いとともに160.18近辺に高値を伸ばした。
ロンドン市場では、ユーロ買いが優勢。ユーロは対ドル、対円、対ポンドなど主要通貨に対して買われている。ドイツ緑の党の共同代表ブラントナー氏が防衛費に関して「緑の党は交渉の用意がある」と述べたことが背景。独債利回り上昇とともにユーロが買われている。対ドルでは1.09台に乗せる場面があった。対円は161円手前まで上昇、対ポンドでも買われた。ポンドも対ドルや対円では堅調で、ポンドドルは1.29台前半、ポンド円は191円付近へと高値を伸ばしている。東京午前に見られた円高の動きは一服している。ドル円は147円台後半へと下げ渋っている。前日はトランプ米大統領が米景気後退について否定しきれなかったことが株式の急落を招いた。今日の米株先物は下げ一服となっているが反発力は限定的。欧州株は独DAX指数が上昇しているが、上げ幅を縮小してきている。英仏株はマイナス圏で推移している。レーン・フィンランド中銀総裁は「米国の関税措置により、今年と来年に世界生産が0.5%以上減少する可能性」と指摘しており、景気先行きに対する警戒感がみられた。不確実性が高い状況下でECBは金利に関して「完全な行動の自由を維持する」とも述べていた。足元では英物価連動債に高い需要が見られ、ポンドは対ユーロで値を戻している。このあとのNY市場では米求人件数が注目される。
NY市場で、ドル円は一時148円台を回復。本日もトランプ関税に翻弄した1日となった。午前中はトランプ大統領がカナダ産の鉄鋼とアルミニウムに従来の25%の倍の50%の関税を課すと伝わったが、オンタリオ州のフォード首相が25%の電力サーチャージの停止で合意したと発表。今度はトランプ大統領も50%の関税は引き下げを検討と述べている。市場は目まぐるしい展開を見せていたが、ドル円は147円台を中心に上下動に終始した。 本日は日本の10-12月期のGDP2次速報が発表になっていたが、1次速報から下方修正されていた。ただ、日銀の利上げへの見方に変化はない。ユーロドルはきょうも買戻しが続く中、一時1.09ドル台半ばまで上げ幅を伸ばした。ドイツ国債の利回りは依然として上昇が続いており、10年債は再び2.90%台に上昇した。ウクライナが、「米国が提案した30日間の停戦案を受け入れる用意がある」と伝わったこともユーロをサポート。ポンドドルも一時1.2965付近まで上昇した。英国債のイールドカーブがスティープ化しており、2-10年債の利回り格差は2022年以来の水準に広がっている。この日は英小売協会の2月の小売売上高が公表されていたが、予想を下回る内容で、英景気の低迷が長引く可能性も指摘されている。そのような中、英中銀の追加利下げ期待は根強く、2年債など短期ゾーン利回りが圧迫されている。
(12日)
東京市場は、ややドル買いが優勢。ドル円は朝方に147.68近辺まで軟化。その後はドル買いが優勢となり、午前中に前日高値を更新する動き。鉄鋼・アルミニウム関税が予定通り14時に発動される前にドル買いが強まり148.29近辺に高値を伸ばした。ただ、ロンドン勢の本格参加を前にドル売りが入り148円割れとなるなど、ドル買いに勢いは見られず。鉄鋼・アルミニウム関税は予定通りということで発動時間前後での反応は一息。ただ、昨日カナダに対して50%に引き上げると示し、その後50%を撤回するなどの不安定な動きが市場の警戒感を誘っている。ユーロドルは一時1.09台割れと小安かった。ユーロ円は161.60台まで買われたが、上昇の持続力には欠けた。ドルカナダはドル全般の買いにとともに1.4450台まで上昇。
ロンドン市場では、円安の動きが広がっている。ウクライナ停戦期待を受けて欧州株が堅調に推移、米株先物も時間外取引で前日の下げから反発している。トランプ米大統領が景気後退について明確に否定したことが好感されている。ドル円は148円台後半へ、ユーロ円は162円台前半へ、ポンド円は192円台後半へとそれぞれ上値を伸ばした。ドル相場はドル買いが先行したが、リスク選好の動きとともにその動きも一服。ユーロドルは1.09を挟んだ振幅、ポンドドルは1.29台前半での取引にとどまった。このあとの米消費者物価指数発表を控えてこれまでの円高やドル安に調整が入る面もあったようだ。ウクライナ停戦については、ロシアの出方待ちとなっている。また、ラガルドECB総裁はECBウォッチャー会議でのあいさつで「ユーロ圏のインフレは貿易や防衛などのショックで、より持続的になるリスクがある」と指摘した。ロンドン朝方には植田日銀総裁が発言しており、「海外の経済物価動向めぐる不確実性、非常に心配している」としながらも長期金利の急激な上昇に対する機動的なオペ実施についてはあくまでも例外的との認識を示していた。
NY市場では、ドル円が上に往って来い。米消費者物価指数(CPI)が予想を下回り、インフレの落ち着きを示したことで、ドル売りが強まり、ドル円は一時148円台前半まで急速に下落した。しかし、直ぐに切り返し、149円台まで上昇した。ただ、後半になると再び戻り売りに押され148円台前半に再び下落している。エコノミストからは、今回の数字はトランプ大統領の関税政策の大半が完全に実施される前ではあるが、財が持続的なディスインフレにとって逆風となっていることを示しているとの指摘が出ている。FRBが年内に2回以上の利下げを実施するとの見方に変化はないが、本日の米CPIを受けてもFRBの利下げに慎重姿勢は変わらないとの見方も出ている。ユーロドルは1.09を挟んで上下動。米CPI後に買いが強まる場面が見られたものの、直ぐにドル買いが強まったことから押し戻された。ラガルドECB総裁のスピーチが行われていたが、ECBは不安定さを増す新たな世界に直面しており、衝撃に機敏に対応すると同時に、起こりうる多様な結果への対応策を明確に示す必要があるとの認識を示した。市場ではECBの追加利下げ期待が一旦後退しているものの、早期の追加利下げの可能性を再浮上させている。短期金融市場では6月の利下げを確実視している状況。ポンドドルは上値追いが続き、1.30台をうかがう気配が出ている。。米国とEUとの間が貿易戦争を繰り広げている一方、英国は関税の恐怖も小さいと見られていることから、その点ではポンドドルは上値を追い易いようだ。来週は英中銀の金融政策委員会(MPC)が予定されており、据え置きがほぼ確実視されている。
(13日)
東京市場は、円買いが優勢。ドル円は、午前に148円台前半で小動きとなったあと、午後に円高傾向となり、一時147.58付近まで下落した。植田日銀総裁が午後の参院財政金融委員会で「今後、実質賃金や消費は良い姿が見込まれる」などと発言し、日銀の早期追加利上げ観測が強まったことから円買いが優勢となった。日本10年債利回りは午後に上昇に転じ、一時1.55%台をつけた。明日には25年春闘第1回回答集計結果の発表が予定されており、関心が集まっている。クロス円も軒並み下落。ユーロ円は160円台半ばまで、ポンド円は191円台前半まで水準を切り下げた。ユーロドルは揉み合い。午後に一時1.0877付近まで弱含んだが、値幅は限定的。
ロンドン市場では、円高が一服している。ドル円は東京午後に148円台前半から147円台半ばへと下落した。植田日銀総裁が「輸入インフレ沈静化の一方で力強い賃金上昇続くため、実質賃金と消費支出は改善すると予想」と発言したことが日銀追加利上げ観測を広げていた。しかし、ロンドン時間に入ると流れが反転し、ドル円は148円台を回復している。米露が再び交渉を行うとの報道にウクライナ停戦への期待が広がったもよう。売りが先行していた欧州株がプラスに転じる動きがみられた。リスク動向の持ち直しで米10年債利回りも4.28%から4.33%台に上昇している。ユーロ円は160円台半ばから一時161円台を回復。ポンド円は191円台前半から一時192円台に乗せる場面があった。ただ、足元では米株先物が時間外取引でマイナスに転じており、リスク動向は落ち着かない。独DAX指数も再びマイナスに沈んできている。
NY市場では、ドル円が再び下落。NY時間に入って戻り売りに押され、一時147円台半ばまで下落する場面が見られた。ドル安がドル円を圧迫していた模様で、本日も米株式市場は軟調な展開を見せ、米国債利回りも低下した。米経済への先行き不透明感が依然として市場を席捲している。ベッセント米財務長官は、市場はトランプ大統領の勝利の多くを織り込んでおり、ドルが調整されるのは自然との見方を示していた。ここに来て、米国の例外主義への懐疑的な見方も台頭しつつある中、これまでのようなドル高指向は弱まっているとの指摘も聞かれた。ユーロドルは一時1.08ドル台前半まで下落していたものの、NY時間に入って買戻しも出ていた。基本的にユーロドルのリバウンド相場の流れに変化はない。米景気後退懸念とドイツの財政楽観論は行き過ぎだとの指摘が出ており、それに伴って直近で上昇したユーロは、短期的には下落する可能性があるとの指摘が出ている。ポンドドルは上げを一服させ、1.29台前半まで値を落とす場面が見られた。目先のポンドの重要なリスクイベントとしては、来週20日の英中銀の政策委員会(MPC)と26日のリーブズ英財務相の予算案の提出がある。特に予算案については、ポンドにとってネガティブなリスクイベントになる可能性がアナリストから指摘されている。
(14日)
東京市場では、円売りが優勢。ドル円は147円台後半から148円台後半へ、ユーロ円は160円台前半から161円台前半へ、ポンド円は191円台前半から192円台半ばへと上昇している。米議会の閉鎖リスクが後退。大きな混乱回避の見通しが、世界的なリスク選好での株高と円安につながっている。また、本邦輸入企業と見られるドル買い円売りも観測されていた。
ロンドン市場では、ユーロ買い・ポンド売り、ドル円は一時149円台乗せと各通貨まちまちの動き。ドル円は連合が春闘第1回集計で平均賃上げ率は5.46%(昨年5.28%)と公表した。高い伸びが続いたが、市場での日銀利上げ観測動向には変化はみられず。ドル円は一時149円台に乗せた。その後は148円台後半に落ち着いている。ロンドン朝方には1月英月次GDPが発表され、予想外のマイナス成長となった。ポンド売り反応が広がり、特に対ユーロで売られた。加えてロンドン午前には「ドイツCDUとSPD、金融パッケージについて緑の党と解決策で合意」 とのヘッドライン報道が流れると、ユーロ買いが広がっている。ユーロポンドは一段と上昇。ユーロドルが一時1.09台乗せとなる一方で、ポンドドルは1.29台前半から半ばでの取引と上値を抑えられている。ユーロ円は円安とユーロ高の両面で買われ、高値を162円台前半へと伸ばしている。ポンド円も円売りの影響で底堅く推移も192円台後半で伸びを欠く取引が続いている。欧州株や米株先物は総じて堅調。原油先物も底堅く推移。そのなかで、金相場が3000ドルを上回り、最高値を更新している。
NY市場でドル円はNY時間に入って伸び悩んだものの、一時149円台に上昇する場面も見られた。下値警戒感が高まっている株式市場が本日は反発していたことからドル円はサポートされた。過去最高水準に積み上がった円ロングの解消も指摘されていたようだ。本日は3月調査分のミシガン大消費者信頼感指数の速報値が発表され、22年11月以来の低水準となった。景気の先行き懸念をさらに増幅する内容である一方、インフレ期待が予想以上の上昇となり、1年先のインフレ期待は4.9%と予想を上回った。5-10年先に至っては3.9%と32年ぶりの高水準。まさにスタグフレーションの傾向を示す内容ではあった。

執筆者 : MINKABU PRESS
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