米金融システム不安で利上げ期待が一気に後退 ドル円は一時132円台前半まで下落=NY為替概況
きょうのNY為替市場はドル売りが強まり、ドル円は一時132円台前半まで一気に下落する場面が見られた。ただ、後半は米株がプラスに転じたことで、ドル円も米国債利回りと伴に下げ渋り、133円台に戻す展開。
市場では米地銀の資本棄損に伴う流動性への不安が強まっている。先週はカルフォルニア州の地銀SVBが破綻したが、その余波でNY州のシグネチャー・バンクも事業停止となった。米金融システムへの警戒感が強まり、他の米地銀にも同様の不安感が広まっている。米当局はSVBの顧客の預金保護を発表したものの、市場の不安は収まらないようだ。
この状況を受けて米利上げ期待が一気に後退し、来週のFOMCでの0.50%ポイント利上げの可能性を完全に後退させているのみならず、0.25%利上げの可能性も不透明になっている。短期金融市場では0.25%利上げの確率を完全に織り込めず、据え置きの確率を48%程度まで高めている。
明日は米消費者物価指数(CPI)の発表が予定されているが、どのような反応を示すか注目される。
ドル円にはリスク回避の円高および、米利上げ期待後退によるドル安の二重の逆風が吹いていた格好。きょうの下げで21日線および200日線を完全に下放れする動きが出ており市場からは、1月からのリバウンド相場は終わったとの声まで出ている。
ユーロドルは1.07ドル台に上昇。市場はFRBの利上げ期待を急速に後退させているが、ECBの利上げ期待も大きく後退させている。今週木曜日にECB理事会が開催され、先週までは0.50%ポイントの大幅利上げが確実視されていた。しかし、短期金融市場では0.50%ポイント利上げの確率を半分以下まで低下させ、0.25%ポイントの利上げの見方が優勢となっている。
これまでのところ欧州当局者はSVB銀の問題が欧州への波及リスクがあるとは考えておらず、米国の状況は特異なものとしている。それでも市場はタカ派なECBへの見方を後退させている状況。
ポンドドルも買い戻しが続き、きょうは1.22ドルちょうど付近まで一時上昇する場面が見られた。きょうの上げで21日線を上放れる動きが見られており、本格的な動きになるか注目される。
明日は英雇用統計が発表される。英中銀は成長以上にインフレに軸足を置いているとも言われているが、英国ではガス価格が低下している中、インフレのピークアウトへの期待が高まっている。しかし、その鍵を握るのが雇用情勢で、特に英中銀の次の試練は賃金上昇率がピークに達したことを示す明確な兆候があるかどうかだとの指摘も聞かれる。
市場では英中銀は来週の金融政策委員会(MPC)で0.25%ポイントの利上げを実施すると見込んでいるが、一部からは、それで英中銀は利上げサイクルを一旦終了させるとの見方も出ている。その意味でも明日の英雇用統計が明確な兆候を見せるか注目される。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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