主要中銀の政策が一通り出揃い、ドル買い戻しが強まる=NY為替概況
きょうのNY為替市場はドルの買い戻しが強まり、ドル円も下げを一服させた。きょうのECB理事会、英中銀金融政策委員会(MPC)を終え、今週の主要中銀の政策会合は一通り出揃った。明日の米雇用統計の発表を前にポジション調整や材料出尽くし感からのドルのショートカバーが出たのかもしれない。
ECBや英中銀は利上げに向けたタカ派姿勢を堅持する一方、FRBはあと2回の利上げで今回の利上げサイクル終了の可能性も示唆し、方向感に違いも出ている。
今回の主要中銀の会合を通過して、一部からはドル安を志向する声も聞かれる。世界経済のリセッション(景気後退)懸念が以前よりも後退しており、加えてインフレの鈍化で、安全資産としてのドルの魅力が薄らいだという。FRBが利上げ停止の見通しを示す中で、今年を通じて投資家のリスク許容度が改善し、ドルは今後さらに下落が予想されるとしている。
また、これまでの米利上げペースが速かったことを踏まえると、例え米金利が相対的に高いままであっても、利下げが本格的にテーマに上れば、その優位性はさらに低下する公算が大きいとも指摘している。
ユーロドルは戻り売りが強まり、一時1.08ドル台に下落する場面も見られた。きょうはECB理事会の結果が公表され、大方の予想通りに0.50%ポイントの大幅利上げを実施した。声明では3月も0.50%ポイントの利上げの意向を明確して来ている。市場では今週のユーロ圏消費者物価指数(HICP)の結果やFOMCを受けて、次回は0.25%ポイントに減速してくるのではとの見方も出ていた。ECBはタカ派色を堅持している。
しかし、その後のラガルドECB総裁の会見を受けて、ユーロドルは売りが強まっている。総裁は「短期的には弱い状態が続く見通し。インフレ見通しに対するリスクはより均衡した」と述べたことに敏感に反応した模様。「3月利上げに関する意向は撤回不可能ではない」とも述べていた。
タカ派色を後退させた発言とまでは思われないが、前日のFOMCを受けて、心理的節目の1.10ドルを回復していたこともあり、ラガルド総裁の発言を敏感に捉え、利益確定のきっかけにしたのかもしれない。
ポンドドルも売りが強まり、1.22ドル台前半まで下げ幅を拡大。きょうの下げで本日1.2275ドル付近に来ている21日線を下回っており、明日の米雇用統計後の動きが注目される。
きょうは英中銀が金融政策委員会(MPC)の結果を公表したが、大方の予想通りに0.50%の大幅利上げを打ち出し、追加利上げの必要性にも言及した。ただ、ポンドは売りの反応を示している。
市場からは、英中銀が声明で弱気な景気見通しに言及したことがポンド売りを誘ったとの指摘も出ている。英経済はパンデミックやEU離脱前よりも縮小したままで、英中銀も景気後退を予想。英中銀はこの状態は2026年まで続くと見ているとも述べている。
最も心配なのは、長期的な景気浮揚の鍵となる企業の設備投資がまだ非常に控えめで、EU離脱の国民投票前の水準さえ回復できていないことだという。英経済の暗い見通しが増えるにつれて、ポンドは大きく下落して週を終えることになりそうだとしている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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