英MPC受けポンドとドル円が下落 明日は米雇用統計=NY為替概況
きょうのドル円はNY時間にかけて戻り売りを強め、132円台に下落した。きょうも米国債利回りをにらんだ動きが見られ、利回りの下げと伴にドル円も売りが強まった。一時134.40円付近まで上昇していた。米国債利回りについては、この日の英中銀金融政策委員会(MPC)に反応した模様。英中銀はマイナス成長が5四半期連続で続き、その間のGDPは2.2%低下するとの見通しを示した。英中銀の言及で市場は改めてリセッション(景気後退)への意識を強めているようだ。
明日は7月の米雇用統計が発表され、非農業部門雇用者数(NFP)は25万人増が予想されている。経済活動の低下に伴い企業が雇用を削減したため、上半期の月平均45万人増からは伸び鈍化が見込まれているものの、力強い労働市場を示す数字ではある。
景気後退局面に入ったとの懸念も出ている中でも、7月の米雇用統計は、企業は健全なペースで採用を継続したことが示されると予想されている。小売業や建設業に弱さが見られる可能性はあるものの、雇用の増加は引き続き広範囲に及んでいることが期待されているようだ。予想通りであれば、FRBのタカ派姿勢を裏付ける内容ではある。
ユーロドルは買い戻しが強め、1.02ドル台半ばを回復。特にユーロを買い戻す材料は見当たらないが、本日の英中銀の金融政策委員会(MPC)を受けてポンドが下落し、対ポンドでの買い戻しがユーロをサポートしている可能性もありそうだ。本日のユーロドルの21日線は1.0160ドル付近に来ており、その水準は維持されている。ただ、上値が重い雰囲気に変化はなく、1.03ドルにかけては戻り売り圧力も強まりそうな気配だ。
当初高まっていたECBの利上げ期待が後退している。数週間前の市場はECBの利上げスピードについて強気な見方をしていたが、現在は逆の方向へ振れている状況。先月のECB理事会後に市場は、9月の0.75%ポイントの利上げを織り込む動きを見せていた。しかし、現在はそのタカ派な見方が後退し、0.50%ポイント以下の利上げで織り込んでいる。
この動きについて一部からは、市場の利上げに懐疑的な見方は行き過ぎとの指摘も出ている。前日発表の7月のユーロ圏サービス業PMIの確定値は速報値から上方修正され、6月の生産者物価指数も依然としてインフレが好戦的になりそうな気配を見せていた。何よりもユーロ圏のエネルギー危機の解決策が未だ見えておらず、秋が深まるにつれて、エネルギー消費がインフレをさらに押し上げる可能性があるという。次回9月8日の理事会までに、ユーロ圏経済が完全に悪化しない限り、タカ派色を強めているECBの政策委員が0.25%ポイントの利上げで満足するとは考えにくいという。ECBは現状、景気後退に対応する余裕はほとんどなく、経済が金利上昇にまだ耐えられるうちに余裕を作りたいと考えるのが妥当だと指摘している。
本日の英中銀金融政策委員会(MPC)を受けてポンドは売りの反応を見せた。政策金利は予想通りに0.50%ポイント引き上げ1.75%とした。0.50%ポイントの大幅利上げは27年ぶり。また、量的引き締め(QT)の開始も明言し、9月のMPC以降に四半期で約100億ポンドのペースで保有英国債の売りオペを実施するとしている。
委員の投票行動も8対1での賛成となったほか、同時に発表になった金融政策報告ではインフレ見通しを引き上げ、10月に13.3%までの上昇を見込んだ。そこでピークに達するという。これらの点からはタカ派色が強い内容ともとれるが、ポンドは売りの反応を見せている。英中銀はマイナス成長が5四半期連続で続き、その間のGDPは2.2%低下するとの見通しを示した。また、FRB同様にフォワードガイダンスを削除し、「今後の政策に予め決まった軌道はない」との文言に変更している。明らかに景気後退への懸念を意識した言及となっており、英国債市場では逆イールドが示現している。
ポンドドルは一時1.20ドル台に急速に下落。一方、ポンド円は161円台前半まで下落し、21日線で跳ね返され、100日線を再び下回っている。ただ、ベイリー英中銀総裁が「いまのポンド安は危機ではない」と述べていたこともあり、後半には買戻しが入った。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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