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中国に踏み絵を踏まされる日本と人民元の買い持ち戦略「日本人の知らない香港情勢」戸田裕大

マネ育チャンネル 

日本人の知らない香港情勢

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、発表された報道や現地の声、公表された経済データなどをもとに、香港や中国本土の最新の情勢について迫っていきます。香港ドル・人民元などの通貨売買のご参考にして頂ければ幸いです。

第29回は「中国に踏み絵を踏まされる日本と人民元の買い持ち戦略」でお届けいたします。

それでは、さっそく本題に入っていきます。

目次

1.香港国家安全維持法の適用範囲が拡大
2.諸外国に踏み絵 中国の企業防衛策
3.香港ドルと人民元相場のアップデート

1.香港国家安全維持法の適用範囲が拡大

昨年の6月に施行された香港国家安全維持法、ここにきて適用範囲がますます拡大しています。先週、香港当局は、民主化運動や警察行動を纏めたインターネット・サイト「HKChronicles」へのアクセス制限を、ISPs(インターネット・サービス・プロバイダー)に指示しました。

香港国家安全維持法は、当初はデモの取締りから始まりましたが、次いでジミー・ライ氏などインフルエンサーの逮捕、民主派政治家の取締り、海外逃亡者への指名手配、教育改革と続いていましたが、ここにきていよいよウェブ・メディアやISPsにも制限が掛かるとのことで、ほぼ、中国本土に近い運用になってきたと感じています。

これに対し、英国を含む欧米諸国は、この一連の流れに反発。英政府は1月31日から香港国家安全維持法への抗議として、香港市民向けの英国市民権取得につながる特別ビザ(査証)の申請受付を開始します。英政府の試算では5年間で数十万人規模の移住を想定しているようで、人口750万人の香港にとっては、手痛い打撃となりそうです。

ビジネスでは中国と蜜月関係にある欧州も、香港の人権問題の一件には反発の姿勢。昨年末にはドイツがインド太平洋地域に軍艦の派遣を表明するなど、当該地域における中国の影響力の高まりを牽制する動きが強まっています。

香港は、昨年から国際政治、特に米中対立の最前線の舞台に立たされることで、景気は芳しくなく、株価にもそれが反映されている状況です。このような政治環境を考えると、今後も、積極的に香港ドルを含む、香港のアセットを買う動きにはならないと考えます。

2.諸外国に踏み絵 中国の企業防衛策

中国は、米中対立が激化する中で、諸外国が米国に配慮することで生じる、中国企業の不利益について防衛すべく、新たな法律を施行しました。その名も「外国法律の域外適用を阻止するための措置(筆者の意訳)」で、米国の対中制裁を念頭に置き、米国と親密な第三国の企業から間接的に不利益を被らないようにする明確な意図が含まれています。

少し具体的に見ていきたいと思います。例えば米国が中国の通信機器大手「華為(ファーウェイ)」に対して、半導体などの精密部品の輸出規制を設けましたが、これに乗じて日本企業も中国の華為に対して禁輸措置を講じました。これが間接的に第三国(日本)の企業から不利益を被るケースとして中国で問題視されています。

今後、中国企業は、上述のように取引を制限された場合に、その相手先の情報を各地方政府に届け出るよう義務付けられます。また、取引を制限した側の企業は訴訟を起こされる可能性があります。従って、例えば、日本企業が米国の法律に従い中国企業への輸出に制限を掛けた場合に、その企業の中国現法が中国政府から賠償金支払いなどの賠償を命じられることが想定されます

いよいよ、米中対立が諸外国に飛び火、例えば日本の大企業は、米国に重きをおくのか、それとも中国に重きを置くのか、踏み絵を踏まされることになります。企業側としては、産業によって、どちらの国に与するのが良いかを判断することになると思うので、業種によって意見が分かれそうです。

おそらくは、日本政府は必ずどちらにつくようにと指示をしないでしょうから、急に大きな影響はないと思うのですが、いよいよ中国は踏み絵を用意してきたと言うことは、政局を見極める上で、頭の片隅に入れておいた方が良いと思います。

3.香港ドルと人民元相場のアップデート

さて相場環境を確認していきます。まず相場の全体感ですが、米長期金利が上昇し、ドルが反転、上昇に転じています。米国の上院選挙において、民主党が議席を伸ばし、大統領及び、上院・下院の過半数を民主党が占める、いわゆる「トリプル・ブルー」が実現したことで、米国の政策が一貫性をもって行われる期待が高まり、素直に景気回復を見込んだ長期金利の上昇が起こりました。

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米長期金利の代表的な商品である、米10年債、その利回りは上昇したとは言っても、いまだ1.10%前後です。ここ数年、3%前後の経済成長を維持してきた米国の長期金利としてはまだまだ物足りません。このことから、米長期金利上昇の余地は大きいと思います。

次に香港ドルを見ていきます。

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香港ドル/日本円(HKD/JPY)はドル円の反発に連れて上昇、13.40台を回復しました。前述のとおり、米長期金利が上昇に転じていますので、ドル買戻しの動きがさらに強まれば、香港ドルは対円で上昇していくことが想定されます。

また米ドル/香港ドル(USD/HKD)についても反発の兆しが見られており、ドル買戻しに連れて、レンジの下限である7.75から離れ、緩やかに7.76台へと向かっています。こちらもドル買戻しの中で、引き続き上昇していくことが想定されます。

最後に人民元を見ていきます。

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人民元/日本円(CNH/JPY)の上昇が止まりません。直近では16.10を窺う展開になっています。昨年の夏場が14円台後半ですから、ここまで対円で9%ほど人民元高が進んできたことになります。勢いは強いですが、ドルが買い戻されても人民元の対円は上昇しそうですし、ドルが売られても人民元高が進むので、人民元の対円は崩れにくい状況と言えそうです。

米ドル/人民元(USD/CNH)については、年初は大きくドル安・人民元高に進んだのですが、ここにきてドルの買戻しの動きもあり、ようやく元高も一段落しそうな状況です。中国も引き続き金融緩和(金利引き下げ)に動いていますので、対ドルでは、状況によっては、ドル買いが強まるかも知れません。そういう意味でも、人民元買いは対円がワークしそうな地合いです。


それでは本日はここまでとなります。

引き続き注目度・影響度の高い、香港及び中国本土の情報について皆様にご報告させて頂きたく思っております。引き続き、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

戸田裕大

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【インタビュー記事】

<参考文献・ご留意事項>

各種為替データ
https://Investing.com

日本経済新聞: 英、1月末から香港市民にビザ発給へ 32万人移住予測も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR294TF0Z21C20A2000000

日本経済新聞: 「米制裁追随 企業は賠償」 中国が対抗策
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM092A20Z00C21A1000000

South China Morning Post: Hong Kong police use national security law for first time to block access to website recording anti-government protests, officers’ details
https://www.scmp.com/news/hong-kong/law-and-crime/article/3117072/hong-kong-police-use-national-security-law-block

中華人民共和国商務部:商务部令2021年第1号 阻断外国法律与措施不当域外适用办法
http://www.mofcom.gov.cn/article/zwgk/zcfb/202101/20210103029710.shtml

【過去の「日本人の知らない香港情勢」はこちら】

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若竹コンサルティング 創業者戸田裕大氏
2007年、中央大学法学部卒業後、三井住友銀行へ入行。10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本のグローバル企業300社、在中国のグローバル企業450社の為替リスク管理に対する支援を実施。2019年9月CEIBS(China Europe International Business School)にて経営学修士を取得。現在は若竹コンサルティング代表として、為替市場調査と為替リスク管理に関するコンサルティング業務を提供する傍ら、為替相場講演会に多数登壇している。著書に「米中金融戦争 香港情勢と通貨覇権争いの行方」。
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執筆者 : マネ育チャンネル|外為どっとコム

マネーを育てよう!をテーマに、外為どっとコム総合研究所に所属する研究員が執筆するオリジナルレポートのほか豪華講師陣の貴重なFXレポート、個人投資家や著名投資家のインタビュー記事など、バラエティ豊かな情報を配信しています。為替トレンドに合わせた特集記事やFX初心者でも安心の学習コンテンツを用意しており、個人投資家の取引技能の向上に寄与すべく活動しています。

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