為替相場まとめ10月27日から10月31日の週
27日からの週は、円安が進行した。米FOMCと日銀決定会合を経て、日米の金融政策の方向性の差異(日銀の早期利上げ観測後退 、FRBの12月利下げ期待後退)が明確となった。日米金利差縮小のペースが緩やかになるとの観測から、円キャリートレードが加速した。これを受けてドル円が154円台に押し上げられた。一方、ユーロやポンドはドル高の圧力に下押しされた。特にポンドは英秋季予算案をめぐる財政問題の懸念から軟調な展開となった。ECB理事会では政策金利が据え置かれ、市場反応は限定的だった。また、株式市場では米主要株価指数や日経平均、英株価指数などが最高値を更新するなど好調な動き。トランプ米大統領を軸に外交が進展。アジアで実施された日米、米中、米韓首脳会談では、暫定的な面があるにせよ貿易摩擦は回避された。
(27日)
東京市場は、ドル円が一時153.26付近まで上昇し、ドル高・円安基調が継続した。先週末の米CPIが予想を下回ったことで一時はドル売りも見られたが、すぐに回復しドルの底堅さが示された。週明けは、米中通商交渉の前向き進展期待が支えとなり午前には153.18付近まで上昇、先週末の高値を超えたが、その後は調整が入り152.66付近まで下落。30日の米中首脳会談を控え、利益確定売りもあり神経質な値動きとなった。午後には再度買い戻しが入り153円台を回復。ユーロドルは1.16台前半、ポンドドルは1.33台前半で推移。ユーロ円は米中関係改善期待で一時178円超、ポンド円も204台乗せまで上昇し、全体的に円安基調が続いている。
ロンドン市場では円売りが一服。ドル円は153円台から152円台後半へ反落した。ユーロ円、ポンド円も東京午後につけた高値から調整局面に入っている。一方、株式市場では、高市政権に対する好感度の上昇や、先週末の米CPIが予想を下回ったことによる米株急伸の流れを受け、週明けの日経平均株価は史上初の5万円台に急騰。時間外の米株先物も続伸している。しかし、欧州株には目立った好材料が見当たらず、先週末終値付近で揉み合いが続く。為替市場全体のリスク選好圧力も弱まり、ドル相場もドル売りの動きが見られるが、ユーロドル、ポンドドルともに動意薄となっている。10月独IFO景況感指数は予想を上回ったものの、ユーロ相場や欧州株に特段の反応はなく、週後半の米中首脳会談や日米欧の金融政策会合を控え、様子見ムードの強い週明け相場となった。
NY市場では、ドル円は153円台を挟んで上下動。片山財務相は来日中のベッセント米財務長官との会談で、日銀の金融政策や為替共同声明は話題にならなかったと述べた。今週は、米政府機関閉鎖により経済指標発表がないものの、重要イベントが目白押しだ。本日29日のFOMC(追加利下げ確実視)を始め、30日には日銀決定会合(据え置き濃厚)、ECBなど各国中銀の会合が控える。また、トランプ大統領来日による高市首相との会談や、米中首脳会談といった政治イベントも注目。米中間の摩擦解消に向けたメッセージが期待されている。これらに加え、マグニフィセント7の決算も市場の関心を集めており、結果次第では為替市場にも影響を及ぼす可能性がある。ユーロドルは小幅に買い戻され、独IFO景況感指数が上昇したこともあり、ドイツ経済の最悪期脱出の可能性が指摘された。ポンドドルはドル軟調を背景に反発。ポンド円は「高市トレード」の勢いを維持し、204円台に上昇しているが、英インフレ鈍化からポンドの強気見通しは少ない状況だ。
(28日)
東京市場は、円買いが優勢となった。朝方はCME日経平均先物の軟調を受け円売りが一服。日米首脳会談は無難に終了した。午後に、来日中のベッセント米財務長官が「為替の過度な変動を防ぐ上で健全な金融政策策定とコミュニケーションが重要」と発言。これが緩やかな円安けん制との見方につながり、円買いが進行した。ドル円は152円を割り込み、一時151.76付近まで下落し、朝方から1円超下げた。その後は152円台を回復したものの、今週のFOMCや日銀会合を前に、行き過ぎた動きには警戒感が残る。なお、ベッセント長官と片山財務相の会談では、為替声明に関する機微な話は出なかったとされている。クロス円も軒並み円買いが優勢となり、ユーロ円は177円台、ポンド円は202円台まで下落し、これまでの急騰に対する調整の動きが見られた。ユーロドルは小動きだったが、ポンドドルはやや底堅く推移した。
ロンドン市場は、円買いが優勢。ドル円は東京午後に151.76付近まで下落。しかし、片山財務相の「米財務長官は利上げを促す発言ではなかった」との発言を受けてロンドン序盤に152.30台まで反発した。その後は、欧州株や米株先物・時間外取引が上値を抑えられる動きもあって再び152円台割れへと軟化している。クロス円も上値が重い。特にポンド円が軟調で、203円台割れから202.06付近まで下押し。その後の戻りも鈍い。ユーロ円は177円手前まで売られたあと、いったん177.50付近まで反発も、その後は安値を177.00付近に広げた。そのなかで、対ポンドではユーロは堅調。ポンドドルは1.33台後半から前半に軟化する一方で、ユーロドルは1.16台半ば付近での揉み合いに終始している。この日は日米首脳会談が行われ、両者の良好な関係が確認されている。無難にイベントを通過したことで、先週までの高市トレードに調整が入る面が指摘される。
NY市場はドルが売り優勢となった。ドル円は151円台で伸び悩む展開。明日からFOMC、日銀会合、マグニフィセント7決算など重要イベントが目白押しであり、月末接近も相まって、新規ポジションを避け調整が中心となった。ドル円は一時151.75円付近まで下落し、フィボナッチ38.2%戻しでサポートされた。この水準を下抜けた場合、151.30円、150.85円が次の下値目標となる。FOMCでは利下げが確実視される一方、パウエル議長が12月について「オープンな姿勢」を強調するかどうかが焦点となる。ユーロドルは小幅ながらも底堅さを維持し、21日線を回復。しかし、ユーロ円は過熱感から戻り売りが優勢となり177円台前半に下落した。ECBは30日に理事会を控えるが、利下げサイクルを終えているため今回は据え置きが確実視されている。
ポンドドル、ポンド円はともに売りが優勢となり下落。ポンドは、英財務相が予想以上に深刻な財政悪化に直面しており、大規模な歳出削減や増税が必要とされる見通しから、さらなる下振れリスクが指摘されている。
(29日)
東京市場では、ドル円は朝方の円高から一転し、午後にかけて円安が進行した。午前中、ベッセント財務長官の「日銀に政策余地を与える」との発言を受け、ドル円は152.10付近から一時151.54付近まで円高に振れた。いったん売買が交錯したあとは反発に転じた。下げ分を解消した後、午後にかけ円売りが再燃し、安値から1円上昇の152.54付近まで値を上げた。ユーロ円は午前の円買い局面で177.20付近から176.64付近まで売られた。対ドルでユーロ売りが出たため、ベッセント発言前の水準には戻せなかったが、午後に入って円売りが強まる中で177.41付近まで上値を伸ばした。ポンド円は対ドルでのポンド売りが厳しいが、対円では午前に201.14付近から昼前に201円台後半へ、午後に入っての円売りに201.90付近まで上昇している。ユーロドルはじり安となり、朝の1.1661付近から午後に1.1625付近を付けた。ポンドドルも同様に朝の1.3281付近から1.3229付近まで軟化。
ロンドン市場は、ドルが買い戻されている。この後の米FOMCの結果発表およびパウエル議長会見を控えて、今週のドル安傾向の動きに調整が入った。ドル円は東京午前の151円台後半から152円台を回復している。ユーロドルは1.16台後半から前半へ、ポンドドルは1.32台後半から一時1.32台割れまで軟化した。しかし、次第にドル買いの動きも落ち着いてきており、いよいよ米FOMC待ちの雰囲気に。欧州株や米株先物・時間外取引は揉み合い商状。米債利回りは小幅上昇。今週は一連のトランプ大統領の各国との首脳会談で成果がみられている。日米会談が成功裡に終わり、きょうも韓国との貿易合意が報じられている。あすには米中首脳会談が行われる。株式市場などでリスク選好の動きが広がったが、きょうは一服。米FOMCでは0.25%利下げが市場コンセンサスとなっており、パウエル議長会見内容が注目される。
NY市場は、午後のパウエルFRB議長の会見を受け、ドル高が急伸した。議長が「12月の利下げは決して確定した結論には程遠い」との見解を示したことで、会見前に完全に織り込まれていた12月利下げ期待は65%程度まで後退。政策金利に敏感な米2年債利回りは急上昇した。ドル円はパウエル発言後、152円付近から一気に153円付近へ上昇したが、153円台では売り圧力が強まった。ユーロドルはドル高を受けて1.15ドル台に下落し、前日までの緩やかな上げを帳消しにした。ユーロ円は一時177円台半ばに上昇した。ポンドドルは一時1.31ドル台半ばまで下落し、200日線を下回った。ポンド円は201円台半ばまで戻す展開となった。ポンドについては、年末までの利下げ可能性について市場の見方が割れている。また、本日はカナダ中銀が予想通り0.25%の利下げを実施したが、パウエル会見後のドル高の影響を受け、カナダドルは相場が反転する展開となった。
(30日)
東京市場は、日銀金融政策決定会合の結果発表を控えて午前は神経質な展開となったが、発表後に円売りが強まった。前日NY市場ではFOMC後のパウエル議長発言で12月利下げ期待が後退するとドルが買われた。ドル円は一時153円台を回復。しかし、東京市場の午前中は、153円台での慎重な見方や利益確定売りが優勢となり152.16付近まで反落。日銀会合の結果、利上げを主張する委員が前回と同じ高田委員と田村委員に限定され、増加せず。また、展望レポートでの2025年物価見通しの中央値も7月発表時と同水準に据え置かれた。これらの要因から、日銀の早期利上げ期待が後退、一気に円売りが加速した。ドル円は152.90付近まで急騰、その後もドル高・円安の流れが続いて153.14付近に高値を更新。高値調整後も再び153円台を付けるなど底堅い動きとなった。ユーロ円は177.97付近、ポンド円は202.20付近まで上昇。一方、ユーロドルやポンドドルは米中協議などを背景にやや底堅さを見せたが、値幅は限定的だった。
ロンドン市場は、円売りが継続。前日の米FOMCで12月利下げ観測が後退したことがドル買いに、そして本日の日銀決定会合を通過して円売りが強まっている。ドル円は両面から買われ、ロンドン昼にかけて154円台乗せへと高値を伸ばした。ロンドン朝方の植田日銀総裁会見では、早期利上げに関する具体的な言及はみられなかった。春闘の初動のモメンタムがどうか、という情報を集めたいなどとした。ユーロ円は178.80付近に高値を伸ばし、史上最高値を更新した。ポンド円も203.20付近に本日の高値を伸ばしたが、対ユーロでの売り圧力もあり勢いはやや鈍かった。ドル相場は方向感に欠ける動き。ユーロドルは1.16台割れ水準から1.16台前半、ポンドドルは1.31台後半から1.32台前半での振幅となっている。
NY市場では、ドル円が急上昇し一時154.45円付近まで値を上げた。これは、日銀の植田総裁会見が慎重な色彩を強めて年内利上げ期待が後退した一方、FRBのパウエル議長の発言で12月の追加利下げ期待にも不透明感が増したことにより、日米金利差の縮小ペースが緩やかになるとの観測が広がり、円キャリートレードの加速を期待した円売りが再燃したためだ。ユーロドルは下落し1.15ドル台半ばとなったが、ユーロ円は円安が優勢となり、ユーロ発足以来の高値となる178円台後半まで上昇した。この日開催されたECB理事会は3会合連続で金利を据え置き、ラガルド総裁は「好位置にある」との認識を示したため、市場では利下げサイクルの終了との見方が再確認された。また、ポンドドルも下落し1.31ドル台まで下げ幅を拡大したが、ポンド円は反発し一時203円台まで買い戻された。なお、市場のコンセンサスは据え置きであるものの、一部のエコノミストからは、9月の英CPIが予想を下回ったことを根拠に、来週の英中銀が利下げを行う可能性が指摘されている。
(31日)
東京市場は、週末を前に慎重な取引。ドル円は前日海外市場での上昇から少し調整が入り154.10付近で取引を開始。154.17付近を高値に154.10付近を挟んだ推移が続いた後、片山財務相の「足元で一方的、急激な動きがみられる」との発言を受けて一時円買いとなり153.64付近を付けた。昼過ぎにかけて買い戻しが強まり、154.00付近を回復。円キャリー取引が意識された。もっとも、週末を前に高値トライには慎重な姿勢もみられ、午後は154.00付近を挟んで推移した。ユーロ円は178.20付近でスタート後177.84付近まで売られたが回復。ポンド円は202.70付近スタートで午前の円高で202.19付近まで下落したが、その後202.60付近に戻った。ユーロドルは1.1565から1.1577のレンジで膠着。ポンドドルも1.3147~から.3165のレンジで動意なく推移。
ロンドン市場は、小幅の値動き。今週は一連の主要中銀政策金利発表、米大手IT企業決算、そしてAPEC会議を中心とした政治日程など盛りだくさんの1週間だった。しかし、きょうは一連のイベントをほぼ終えて、週末と月末を控えたタイミングとなっている。相場疲れもあるのか、各市場とも動意薄になっているようだ。ドル円は東京市場で下に往って来いとなったあと、ロンドン時間には154.41付近までの上昇にとどまった。前日高値にはわずかに届かず、その後は154円付近での揉み合いになっている。クロス円も同様に円安の動きは一服。ユーロ円は178円台前半、ポンド円は202円台前半で推移している。英秋季予算案を見据えて、ポンド売り・ユーロ買いのフローが根強いが、値幅は限定的。ドル指数も小動き。ユーロドルは1.15台後半での揉み合い。ポンドドルは1.31台後半から前半に軟化も大台割れには至らず。
NY市場でドル円は前日の急速な上げは一服しているものの、154円台での推移は継続した。前日は10月上旬に高市トレードで付けた高値を一気に上抜け、154円台に上昇。再び155円台を視野に入れている。状況に変化はない。FOMC、日銀決定会合と2つのイベントを通過して、日米金利差の縮小は想定よりも緩やかとの観測から、円キャリートレード加速への期待感が高まっている。個人投資家や投機筋が下値で買っているようだ。テクニカル勢も買わざるを得ない状態。
執筆者 : MINKABU PRESS
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