ドル円は104円台を維持できずに下値警戒を強める流れ=NY為替概況
きょうのNY為替市場、ドル円は再び103円台に下落した。NY時間に入ってドル売りが再び優勢となり、ドル円も上値を圧迫されている。世界各国で感染拡大が悪化しており、東京も警戒レベルをこれまでの最高に引き上げた。米国では死亡者数が25万人を突破する中で、リスク回避の雰囲気も見られ、序盤の為替市場はドル買いが優勢となっていた。
ドル円も104円台に戻していたが、次第に売りの動きを復活させているようだ。ドル円は104円台を維持できていない格好となっており、下値警戒感を強める流れではある。目先は今月安値の103円台前半が意識される。
きょうは米国債利回りが低下しており、ドル円を圧迫している面もありそうだ。市場ではワクチン開発への期待が高まっており、インフレ期待から先週の米国債利回りは急上昇し、イールドカーブもスティープ化が進んでいた。
今年はFRBの低金利長期化のコミットもあり、米国債の実質利回り(名目利回りー期待インフレ率)はマイナスに転じ、ドル下落の最大の推進力となっている。
ワクチンへの期待が高まっており、今月中にもFDAの緊急使用許可が出る可能性も出てきている。しかし、それが世界各国に広範囲に普及するにはある程度の時間が必要と見られる中で、弱いファンダメンタルズがしばらく続くとの見方も出ている。先週の米国債利回りの急上昇は一時的な現象に終わるとの見方も優勢になりつつあるようだ。そうなれば、ドル円の上昇はハードルが高い。
ユーロドルは1.18ドル台後半まで上昇した。ユーロ自体の動意は小さく、ドルの動きに左右される展開が続いている。終盤に上院共和党が協議に戻ると伝わったこともユーロドルを押し上げた。21日線の上を堅持しており上向きの流れを続けている。
きょうはEU首脳がテレビ会議を開催。週初にハンガリーとポーランドが2021~27年のEU予算とEU復興基金の採択に反対した。資金へのアクセスを巡り、法の支配の尊重が条件に盛り込まれたことに反発。EU各国は1.8兆ユーロ規模に上る予算と刺激策を承認するはずだったが、両国が拒否権を発動している。承認には加盟国の全会一致が必要だが、きょうはそれが議題の中心になる可能性が高い。
ユーロはネガティブな反応を見せていないが、妥協点を見い出せなかった場合、感染拡大への対処に苦労している国への資金提供に遅延が生じる恐れがあり、経済低迷、そして、ECBが更に景気支援の責任を負う必要性が高まる可能性があるとの指摘も聞かれる。
ポンドドルは一時1.31ドル台に下落したものの、NY時間に入って1.32ドル台半ばに戻している。9月以降、根強いドル安期待からの恩恵を最も受けているのはポンドといった印象だ。
EUとの貿易交渉は依然として合意に達していないが、合意に接近しているとの報道も流れており、市場は非常に楽観的になっているようだ。市場は遅くとも年末の離脱期限までには何らかの妥協点を見い出すであろうと考えているようだ。市場はその分、決裂のシナリオを織り込んでおらず、万一合意なき離脱になれば、ポンドは急落するとの声も聞かれる。なお、英国とEUの貿易合意が23日に発表の可能性とも伝わっていた。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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