ドル円は105円台維持 トランプ大統領の症状が「軽度」と伝わる=NY為替概況
きょうの為替市場はドル高・円高の流れが強まり、ドル円は105円台前半で推移している。トランプ大統領とメラニア夫人が新型ウイルス検査で陽性だったこと判明したことで、市場はリスク回避の雰囲気が強まっている。このニュースは東京時間に伝わったが、ドル円は一時104円台に下落する場面も見られていた。ただ、ロンドン、NYにかけて下げ渋る動きも出ており、105円台は確保している。トランプ大統領の症状が「軽度」と伝わったこともサポートしている模様。
ただ、大統領選まであと1カ月ほどのタイミングでの衝撃的なニュースに市場は不安感を強めているようだ。ホワイトハウスは既に2日のフロリダ州での集会を含め、大統領の公的イベントを全てキャンセルした。トランプ大統領は少なくとも10日間は遊説を行えない可能性があり、今回の陽性判明はパンデミックへの対応の問題を巡り、何らかの影響が出そうだ。
市場では円高を予想する動きが見られ、オプション市場では年内に103円台まで下落する確率を80%弱まで高めている。
一方、朝方に米雇用統計が発表され、非農業部門雇用者数(NFP)は66万人と予想を下回ったものの、前回分が上方修正されたほか、失業率が7.9%と8%を下回ったことから、少なくとも、ネガティブな反応はなかった。
きょうのユーロドルは上値の重い展開となり、1.17ドル台前半での取引となっている。ドル買い・円買いが強まる中で、ユーロは売り優勢の展開。トランプ大統領の陽性が伝わった東京時間には1.16ドル台に下落する場面もみられた。
ただ、市場の一部からは、きょうの動きを見た限りでは、ユーロドルの下値不安は後退しているとの見方も出ている。1.16ドル台のベースラインは維持しており、本日1.1770ドル付近に来ている21日線の回復を試す動きに、まだ変化はないという。
きょうは9月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値が発表されていた。総合指数は原油安やユーロ高の影響で前年比でマイナスに転じている。食品・エネルギーを除くコア指数も前年比0.2%とデフレぎりぎりの水準まで低下していた。欧州では感染第2波が拡大する中で、消費者の消費意欲は高まっていないことが示されている。ただ、エネルギー価格は今後徐々に回復が予想され、総合指数は今後数カ月で再びプラスに戻ることが予想されている。しかし、感染第2波が続き、コア指数の回復が鈍いようであれば、ECBはパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の拡大など追加緩和を実施してくる可能性も高まる。
ドル買い・円買いにもかかわらず、ポンドは堅調。ポンドドルは1.29ドル台に上昇している。バルニエEU首席交渉官が「英国との交渉に進展はなく、深刻な相違が依然残っている」と述べ、さらにフロスト英首席交渉官は「漁業権巡るEUとの相違は克服不可能になりつつある恐れ」など、ネガティブな発言が相次いでいるものの、市場は10月15日の交渉期限に向けて、合意に前進があるとの期待を温存しているようだ。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

執筆者 : MINKABU PRESS
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