為替相場まとめ4月28日から5月2日の週
28日からの週は、トランプ関税関連の動きが落ち着くなかドル円が大幅に反発した。日銀政策会合で今後の成長・インフレ見通しを引き下げ、2%目標達成時期の1年程度後ずれを表明、植田日銀総裁からは米関税をめぐる不確実性が極めて高いとされた。日銀の早期利上げ観測が後退したことで、ドル円は145円台まで買い戻された。クロス円も軒並み円安方向への動きを強めた。今週はトランプ大統領就任100日記念演説が行われたが、自画自賛に終始するとともに、自動車部品関連の関税緩和策が示されるなど、無難に通過した。米中貿易協議についてまだ具体的な話は伝わってこないが、事務レベルでの水面下の接触はあるもよう。週末には中国商務省は、米国との貿易交渉の可能性を検討中としている。全く話し合っていないとの強硬な姿勢が緩和していくことが期待されている。ドル相場はややドル高に動いており、米国売りによるドル安の構図は後退した。ただ、実体経済の動きには警戒感も示された。第1四半期の米GDP速報値は前期比年率でマイナス成長となる一方、GDP価格指数は上昇した。スタグフレーション的な状況がみられた。
(28日)
東京市場は、方向感の乏しい展開。ドル円は143円台後半から前半まで軟化する場面があった。しかし、下値も限定的で、その後は143円台後半まで戻した。明日はトランプ米大統領による就任100日記念集会演説が予定されており、注目が集まっている。ユーロ円は底堅く推移。午前に一時162.89付近まで下落したあと、午後に入って午前の下げを帳消しにして、163.30台を回復した。ユーロドルは1.13台半ばから後半での揉み合い。前日終値を挟んで朝から方向性の定まらない動きとなった。
ロンドン市場では、目立った方向性を見せず売買が交錯。ドル円は東京市場から引き続き143円台での上下動。米10年債利回りが上昇しており、ドル指数はやや上昇。しかし、ユーロ対ポンドでユーロ売り・ポンド買いが入った関係で、対ドルでの動きはまちまち。ユーロドルは一時1.13台前半と上値重く推移。一方、ポンドドルは1.32台後半から1.33台半ばへと堅調に推移。ユーロ円は163円台前半での揉み合いから162円台後半へと軟化も、ポンド円は190円台後半から191円台半ばまで買われている。ビルロワドガロー仏中銀総裁は、「関税は欧州でさらなるなインフレは引き起こしていない」「利下げ余地はまだ緩やかにある」と発言。タカ派のクノット・オランダ中銀総裁も「短期的には需要ショックが優勢となり、インフレ率が低下すること自明」とした。ただ、金融政策は中長期的インフレリスクを注視と述べ、利下げについては言及を避けた。4月の英CBI小売調査は予想外の大幅改善となったが、ポンド買いの動きは発表前までで一巡している。明日の米大統領演説や、米経済統計待ちとなっているようだ。
NY市場では、ドル売りが優勢。ドル円は下落。根強いドル安のほか、本日はそれに円高も加わり、142円ちょうど付近まで急速に下落。円の魅力は安全資産としての地位を超えたものとなっているとの指摘も一部から出ている。関税の不確実性がドル離れを再燃させ、米国の例外主義への疑問を招く中、円資産はG10通貨の中で勝者となる可能性があるという。ユーロドルは1.14台に上昇。1.14台には上値抵抗が形成されているようだが、下押す動きまではない中、再び上値を試す動きが出ている。レーン・アイルランド中銀総裁の発言が伝わっていたが、米貿易関税によりインフレが2%の目標を下回る可能性があり、これが追加利下げの理由となる可能性があると指摘。必要に応じて、大幅利下げを排除すべきではないことも述べていた。ポンドドルは上値追いが続いており、1.34台を回復。再び昨年以来の高値水準に上昇している。ポンドは対ユーロでも上昇。ポンドは力強い動きが続いているが、今週は目立った英経済指標の発表もなく、外部要因に左右されそうだ。
(29日)
東京市場は昭和の日の祝日のため休場。
ロンドン市場では、ドル買いが優勢。トランプ関税をめぐる前向きな動きが期待されているようだ。28日にトランプ米大統領が海外で製造された米国製自動車向け部品などの関税を緩和すること検討と報じられた。また、きょうは中国商務省が米国企業との正常な協力を支援する用意があるとしており、ボーイング機の受け入れ停止措置が緩和されることが示唆されたと市場は受け止めている。インド政府はワシントンでと両国の当局者が会談を行い、貿易交渉は前向きに進展しているとした。為替市場ではドルが買われており、米国売りの裏返しの動きがみられている。ドル円は142円付近から142.70台へと上昇。ユーロドルは1.14台前半から1.13台後半へ、ポンドドルは1.34台半ばから1.33台後半へと軟化している。欧州株や米株先物・時間外取引が堅調に推移し、ユーロ円やポンド円もロンドン序盤には162円台後半や191円台前半まで買われる場面があった。ただ、足元ではドル買いの面が強まっており、クロス円には売り戻しが入っている。このあとのベッセント米財務長官やルトニック商務長官の記者会見が注目されている。トランプ大統領の就任100日記念演説は日本時間明日午前が予定されている。
NY市場では、ドル円が一時141円台に下落。ただ、142円付近にはオプション絡みの買いオーダーが観測されていたほか、過度に積み上がっている円ロングの巻き戻しも観測され、きょうのところは142円台をかろうじて維持している。ただ、下値攻めの流れは継続している状況。本日の市場は米株式市場が上昇し、米国債も買われ、利回りが低下するなど、全体的に落ち着いていた。しかし、為替市場ではドル安も円高も続いている。ーロドルは1.14台に上昇したものの、終盤に1.13台に伸び悩む展開。 エコノミストから、ECBは将来の供給ショックとインフレ急上昇に対し、より迅速に対応すべきだとの指摘が出ていた。ポンドドルは、ドル安優勢の中で、さらに軟調に推移。1.34台では売りに押された。エコノミストから、英経済成長に暗雲が漂う中、英中銀は慎重な利下げ姿勢を維持できるとの指摘が出ている。
(30日)
東京市場で、ドル円は朝からしっかりとした動き。142円台前半から半ばでの揉み合いを経て、142.70台へと買われた。警戒感のあったミシガン州でのトランプ大統領の就任100日記念集会演説が無難なものとなったことや、米国の自動車関税について除外条件などの方針が示されたことなどが背景。中国が対米関税の除外リストを示したことなども米中関係改善期待などにつながりドル買い・円売りとなった。ユーロ円も141.70台を安値に162.40台まで買われた。ユーロドルは1.13台半ばから後半で下に往って来い。
ロンドン市場では、円安の動きが優勢。それにドル高の動きも加わっている。昨日のトランプ演説を無難に通過したことが市場に安ど感を広げている。いわゆる米国売りの動きは後退しており、ドルが買われやすくなっている。欧州株などが堅調に推移しており、リスク警戒後退の円売りが続いている。ドル円は東京朝方の142円台前半からロンドン時間には143円台を回復。クロス円も買われ、ユーロ円は161円台後半から162円台後半へ、ポンド円は190円台後半から191円台乗せへと上昇。ただ、米関税の実体経済に与える影響はこれからで、一連の企業決算での見通しが参考になりそうだ。この日発表された第1四半期の独仏GDP速報値はいずれも前期比がマイナスからプラスへと転じていた。しかし、トランプ関税の影響はまだ織り込み切れておらず、市場反応は限定的だった。
NY市場では、ドルが上下動。序盤に発表された一連の米経済指標が弱含んだことでドル売りの動きがみられたが、全般に市場のムードが回復していることで買い戻されている。 この日は4月のADP雇用統計と第1四半期の米GDP速報値、そしてPCE価格指数が発表された。ADP雇用統計は予想を大きく下回った。米GDPは予想以上のマイナス成長となった。個人消費の鈍化は予想ほどではなかったものの、輸入が急増し、純輸出が大きく低下。全体を圧迫した。関税賦課を前にした駆け込みの需要があった可能性も推察される。PCEコア価格指数も予想を大きく上回っており、根強いインフレの兆候を見せている。いずれにしろ、米経済の減速を示す内容ではあり、為替市場はドル安の反応を見せた。ドル円は一時142円台半ばまで下落したが、その後は143円台に戻している。ユーロドルは1.13台で神経質に振幅も、次第にドル買いに押された。ポンドドルは1.33台前半まで下押しされた。
(1日)
東京市場では、円が全面安となった。昼頃に発表された日銀金融政策決定会合の結果では、政策金利は市場予想通り据え置きとなった。また、経済・物価情勢の展望(展望レポート)では、25、26年度の実質GDPと消費者物価指数の見通しが前回1月時点から下方修正され、2%の物価安定目標の実現時期は従来よりも1年程度先送りされた。さらに25、26年度の経済物価見通しは下振れリスクの方が大きいと指摘され、市場ではハト派と受け止められた。ドル円は円安が進行し、143円付近から144.30付近まで買われた。クロス円も軒並み円安となるなかで、ユーロ円は162円台割れから163円台乗せへと上昇。ユーロドルはドル買いが波及し1.13台前半から1.12台後半へと軟化した。
ロンドン市場は、円安水準での取引が続いている。この日の日銀決定会合で政策金利は予想通り据え置かれた。展望レポートで成長およびインフレ見通しが下方修正され、物価2%目標達成時期についても1年程度後ずれした。さらにロンドン朝方にかけての植田日銀総裁会見では、米関税をめぐる不確実性が極めて高いとしており、当面の利上げ可能性が後退している。市場では年内利上げ観測が3割を下回った。東京市場から円売りを受けて、ロンドン朝方にもドル円は高値を144.74近辺まで伸ばした。ただ、その後は米債利回り低下とともにドル売り圧力がかり、144円台前半に落ち着いた。東京朝方からは1円超の円安水準を維持している。クロス円はロンドン時間に入ってからも高値を伸ばしており、ユーロ円は163.50台、ポンド円は192.50付近に上昇。ドル相場は東京時間の買いが一服しており、ユーロドルは1.13台割れから1.13台前半へ、ポンドドルは1.32台後半から1.33台前半へと反発している。欧州勢がメーデーのため休場となるなかで、やや動意薄となるなかで、円売りの根強さが目立つ展開になっている。
NY市場では、ドル高とともに円安が強まった。ドル円は一時145.65近辺まで高値を伸ばした。5月相場に入って市場が落ち着きを取り戻しており、ドルの買い戻しが出ているほか、この日の日銀決定会合をきっかけに円安の動きも強まっている。日銀の決定は概ね事前の予想範囲内だったとは思われるが、4月のトランプ関税に絡んだ市場の迷走も一旦落ち着く中、過去最高水準に積み上がった円ロングの解消が活発に出ているものと思われる。ユーロドルは1.12台に伸び悩んだ。21日線が1.1265付近に来ており、その水準に一時顔合わせした。ポンドドルも戻り売りに押され、一時1.3260近辺まで下落する場面も見られた。本日の21日線が1.3175付近に来ているが、その水準が目先の下値メドとして意識される。
(2日)
東京市場は、ドル円が上下動。前日の日銀決定会合後の円安で145円台半ばで取引を開始、午前に中国商務省が米国との通商協議の可能性を現在検討中との報道官談話を発表すると145.92近辺まで一段と高値を伸ばした。しかし、買いは続かず昼過ぎには145.10台まで反落した。人民元高・ドル安の動きが全般的にドル売り圧力に波及したことが背景。ユーロドルは1.1274近辺を安値に1.1320台まで買われた。ユーロ円は164.60台まで上昇後は、164.30付近で売買が交錯した。
ロンドン市場は、ドル安・円高の動き。米雇用統計の結果を見極めたいとして前日から東京朝方にかけてのドル高・円安の動きに調整が入る格好となっている。東京市場では「中国商務省 米国との貿易交渉の可能性を検討中、貿易交渉開始に向けた米国の申し出を評価」との報道が円売り反応を強め、ドル円は146円手前水準まで買われた。しかし、人民元が対ドルで買われると、ドル安の動きが波及、ドル円は上げを帳消しにした経緯がある。ロンドン時間に入ってからもオフショア人民元が買われ、ドル売りが継続。145円台割れからのストップ注文を交えて一時144.44近辺まで下押しされた。クロス円も円買いが優勢。ユーロ円は164円台割れ、ポンド円は192円台前半へと下落している。メーデー明けの欧州株は堅調に推移。米中貿易戦争緩和期待は各市場でまちまちな動きにつながっている。ドル相場は軟調。ユーロドルは東京市場からの流れが継続して、高値を1.1350台まで伸ばした。一方、ポンドドルは不安定な動きで、1.33台に乗せるもロンドン時間には1.3280台まで反落する動き。ユーロ圏製造業PMIは上方修正され、ユーロ圏CPI速報は前年比、コア前年比ともに予想を上回る上昇となった。
NY市場でドル円は下に往って来いの展開が見られた。この日発表の米雇用統計は予想を上回る内容となったものの、ドルは次第に売りが優勢となった。ドル円も144円台後半から143円台後半に1円以上下落したが、米国債利回りが上昇しているほか、米株式市場も上げを継続していることから、次第にドル買いが復活し、ドル円も序盤の下げを取り戻した。145円台まで買い戻されている。

執筆者 : MINKABU PRESS
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