為替相場まとめ7月6日から7月10日の週
6日からの週は、日本の政策スタンスと中東情勢、米金融政策の思惑が複雑に絡み合い、円主導で大きく振れた一週間となった。週初は前週末の米NFPの弱さでドル円が160円台へ急落したものの、「骨太の方針2026」による日銀利上げ牽制観測や高市首相の積極財政姿勢が円売りを誘発し、ドル円は162円台へ急反発。日本国債利回りは急上昇し、日本株・国債・円のトリプル安が進行した。週央には城内経済財政相が利上げ牽制観測を否定したことで一時円買いが強まったが、中東情勢の緊迫化で有事のドル買いが再燃し、ドル円は162円台半ばへ戻した。NZ中銀のタカ派利上げでNZドルが急伸する場面もあった。週後半は米中央軍の攻撃休止報道で原油が反落しドル高が一服、ドル円は162円前半へ調整。さらにトランプ大統領が「イラン側から合意を求める連絡」と述べると地政学リスクが後退し、ドル売りが優勢に。ポンドは英中銀の利上げ観測と政治不透明感の後退が支えとなり、ポンド円は2008年以来の高値を更新した。金曜日には片山財務相の「日銀巡る骨太方針の記述、与党で調整中」「GPIFなど年金基金による日本の金融資産投資を後押しする」などの発言が円買いを誘った。全体としては、日本売りと地政学リスクが円を圧迫しつつも、要人発言や原油・金利の変動で方向感が揺れ動く展開だった。
(6日)
東京市場では、前週末の米雇用統計(NFP)弱含みによる利上げ期待後退でドル円は一時160.49円まで急落したが、週明けの東京市場では円売りが優勢となった。政府の「骨太の方針2026」で日銀への利上げ牽制表現が見られたことに加え、昼過ぎに高市首相が参議院決算委員会で「経済成長と財政持続可能性のバランス」や「国内投資の不足」に言及し、経済成長への強い姿勢を示したことで円売りが加速。ドル円は162.27円まで上値を伸ばし、朝方の安値から1円以上もドル高円安が進んだ。高市首相の発言は財政への思惑を呼び、日本国債10年物利回りは2.77%台から2.819%まで上昇。クロス円も軒並み円安が進み、ユーロ円は185.30円台、ポンド円は216.29円まで値を上げた。ユーロドルは1.14台前半で推移し値幅は限定的だった。
ロンドン市場は、東京市場からの円売りの流れを引き継ぎ、ドル高の動きも加わった。日米金利差による円キャリー需要に加え、高市政権の積極財政方針を受けた財政リスクへの意識が円のリスクプレミアムを押し上げる要因となった。ドル円は東京早朝の安値161.20付近から一貫して買われ、162.40付近まで高値を更新。その後も高値圏で維持された。為替介入警戒水域ではあるものの、市場に特段の神経質な動きは見られなかった。クロス円も堅調に推移し、ユーロ円は185.41、ポンド円は216.64まで高値を伸ばした。ロンドン入り後はドル円の上昇に伴うドル高圧力も広がり、ユーロドルは1.1410、ポンドドルは1.3329まで下落して安値を更新した。週明けの外国為替市場は、円相場主導の円売りトレンドが維持される展開となった。
NY市場では、NY時間の後半にかけてドル売りが再び優勢となり、ドル円は162円台半ばへの買い戻しから162円ちょうど付近に伸び悩んだ。前週の米雇用統計を受けて市場ではFRBの利上げ期待が後退し、最初の利上げ時期の織り込みが10月から12月へ後ずれした。ただ、日米金利差縮小の気配はなく、円キャリー取引への期待から下値では押し目買いが強い。米大手証券は、日本の財政悪化懸念や日銀の緩やかな利上げペースを背景に、ドル円の予想を165円に引き上げた。ユーロドルは1.14ドル台半ばに戻したが、ECBの9月追加利上げ確率が約70%とされユーロを支えた。ポンドドルは1.34ドル付近へ戻し、ポンド円は217円台へ上昇して2008年以来の高値を更新。英財政への懸念や英中銀の据え置き予想がポンドの重しとの指摘もあった。
(7日)
東京市場では、円買いが先行した。午前は城内経済財政相が、政府の「骨太の方針」原案が日銀の利上げを牽制しているとの見方を「誤解であり低金利誘導の事実もない」と否定した。これを受けて円買いが強まり、ドル円は162.10円前後から161.70円前後へ急落。午後には日本国債30年物の入札が好調(応札倍率4.55倍)だったことから国債売り警戒が後退し、円買い優勢でドル円は161.68円まで下落した。しかしその後、中東情勢をにらんだ有事のドル買いが入り反発。イランのアラグチ外相がトランプ米大統領の発言に反発したことが背景。ユーロドルは1.1425ドル、ポンドドルは1.3375ドルまで下落。ユーロ円は城内発言で急落後、午後は株安によるリスク警戒の円買いなども加わり184.94円まで押し下げられた。ポンド円も216.53円まで下落後に買い戻された。
ロンドン市場は、円買いとドル買いが交錯し、明確な方向感を欠く神経質な振幅となった。ドル円は東京午前の城内発言による円買いを経て、ロンドン朝方に162円台を回復したが、再び161.67付近まで下落。162.00に設定された大規模なNYカット・オプションが強い引き寄せ効果を発揮し、値動きが抑制された。ドル相場はややドル高に振れ、ユーロドルは1.1423付近、ポンドドルは1.3370付近へ小幅に軟化したが、それぞれ1.1400や1.3360のオプションに阻まれ限定的な値幅に留まった。中東の緊張再燃でNY原油先物が69ドル台、米10年債利回りは一時4.50%台へ上昇。英中銀が金融安定報告を公表し、レバレッジの高まりを警告しつつも家計や企業の強靭性を指摘したが、ベイリー総裁会見を含めポンドの反応は限定的だった。
NY市場は、緩やかにドル高が優勢となり、終盤に買いが強まったドル円は162円台を回復した。米財務省が、ホルムズ海峡でのタンカー攻撃を受けてイラン石油に関する制裁緩和措置を撤回し、新たな取引を認めないと発表。中東情勢の再悪化への懸念から原油先物(WTI)が72ドル台へ急騰し、米国債利回りも上昇したことがドルを押し上げた。翌日公表のFOMC議事録へのタカ派警戒もドルをサポート。ユーロドルは1.14ドル台を維持したが21日線に上値を抑えられ、ユーロ円は100日線を挟んで方向感を欠いた。オプション市場ではサマーラルを見込む声もありボラティリティは低下。ポンドドルは1.33ドル台半ばへ下落。英中銀の金融安定報告では、金融システムの強靭性が示され、資本要件の緩和案が協議されたが、ポンドの反応は限定的だった。
(8日)
東京市場では、前日海外市場からの米中央軍によるイラン攻撃報道を受けた有事のドル買いに加え、国内では「骨太の方針2026」への警戒感から日本株安、国債安、円安のトリプル安(日本売り)が進行した。新発10年債利回りは1996年以来の高水準となる2.862%まで上昇し、日経平均は1100円超下落。この流れからドル円は朝方の162.03円から162.46円まで上昇した。クロス円も軒並み円安となり、ユーロ円は185.38円、ポンド円は216.88円を付けた。ユーロドルとポンドドルは、海外市場での下げを引き継ぎ午前中にそれぞれ1.1399ドル、1.3342ドルの安値を付けた後、午後にやや反発した。また、NZ中銀が大方の予想通り約3年ぶりとなる0.25%の利上げを実施し、声明が予想以上にタカ派だったことから、NZドルが対ドル・対円で急上昇した。
ロンドン市場では、トランプ米大統領が「イランとの停戦は終わり、今夜も激しく攻撃するだろう」と発言したことで地政学リスクが再燃し、主要通貨に対してドルが全面高となった。東京時間の「日本売り」で162.46円まで上昇していたドル円は、ロンドン序盤に原油反落や米金利低下で162円前後へ一時押し戻され調整の動きを見せていたが、トランプ発言を受けて一気にドル買いが強まり、本日高値となる162.56付近まで急伸した。原油は75ドル台へ急騰し、米10年債利回りも4.58%台へ上昇、欧州株は下げ幅を拡大した。ドル高に伴いユーロドルは1.1396付近、ポンドドルは1.3322付近の本日安値を更新。クロス円は東京時間の円安地合いを引き継ぎ、ユーロ円は185円台前半、ポンド円は216円台後半の高値圏で売買が交錯しつつ高止まりした。
NY市場では、中東情勢の緊迫化を背景に、ドル円は一時162.70円付近まで上昇したものの、その後は162円台半ばに伸び悩んだ。トランプ大統領の「イランとの停戦は終わった、今夜も激しく攻撃する」との発言でWTI原油先物が76ドル台へ急騰、米国債利回りも上昇し、序盤はドル高を誘発した。午後に公表された6月分のFOMC議事録では、全員が据え置きを支持する一方、数人が利上げの根拠を指摘し、大半がAIによるインフレ高止まりを警戒。しかし明確なヒントが欠け、為替の反応は限定的だった。ユーロドルは1.14ドル台で落ち着いた動き。ポンドドルは1.34ドル付近へ上昇したが、200日線付近で上値が重かった。ポンド円は217円台後半へ上昇し2008年以来の高値を更新。ただ、英新政権の財政余力への懸念からポンド下落リスクを指摘する声もあった。
(9日)
東京市場では、有事のドル買いが一服し、ドル円はやや上値の重い展開となった。前日海外市場で162.71円を付けた後、東京午前には162.62円の高値圏でスタート。株式市場の堅調さから日本売りが一服するとの期待もあり、午前中に162.30円台へ下押しする場面もあったが、すぐに162.50円台に戻すなど下値は慎重だった。午後に入ると、米中央軍が今回の攻撃をいったん終了したと示したことで、原油価格が74.50ドル前後から73.00ドルまで下落。これに伴いドル高が一服し、ドル円は午前の安値を割り込んで162.32円までじりじりと値を下げた。ユーロドルは1.14台前半から半ばで底堅く推移し、ユーロ円は185.53〜185.71円の狭いレンジで方向感を欠いた。ポンドドルは1.3425ドルまで上昇、ポンド円は217.89円まで上値を伸ばした。
ロンドン市場では、ドル安が一服。東京市場からのドル売りの流れがロンドン朝方にかけて先行した。米中央軍の攻撃休止報道により原油相場が反落し、米債利回りが低下したことが背景。ドル円は162.25付近まで下落し、ユーロドルは1.1449付近、ポンドドルは1.3431付近まで買われた。しかし、ロンドン勢の本格参入後は原油が下げ渋り、米債利回りも低下前の水準に戻したことで、ドル売りが一服して買い戻しが優勢となった。ドル円は162円台半ばへ下げ渋り、ユーロドルは1.1420台、ポンドドルは1.34トビ台へと失速した。欧州株や米株先物は不安定な動きで方向感を欠いた。ユーロ円は185.53から185.78の非常に狭いレンジで神経質な揉み合いが継続。ポンド円は217.55から218.01のレンジで上下動し、最近のポンド高地合いが維持された。
NY市場では、イラン情勢への過度な懸念が後退したことで、前日まで上昇していたドルに戻り売りが優勢となった。トランプ大統領が「イラン側から合意を求める連絡があった」と述べ、軍事衝突のエスカレートが回避されるとの見方から市場は落ち着きを取り戻し、ドル円は162円台前半に値を落とした。また、前日のFOMC議事録がバランスの取れた内容だったことでFRBの年内利上げ期待が後退したこともドル売りを誘った。ユーロドルはECBの9月追加利上げ期待や米欧金利差の縮小を背景に、一時1.14ドル台半ばへ買い戻された。ポンドドルは底堅く推移し1.34ドル台を回復。中東対立によるインフレ圧力を背景に英中銀の利上げ観測が強まったことや、英政治不透明感の緩和が支援し、ポンド円は一時218円台へ上昇して2008年以来の高値を更新した。
(10日)
東京市場は、ドル円が朝方の162.40円前後から片山財務相らの発言をきっかけに161.29円まで大幅下落した。閣僚会見で片山財務相が骨太方針の与党調整やGPIF等の年金基金による国内投資後押しを表明し、城内経財相も日銀の自主性を尊重したことで、前日に2.9%を付けた10年債利回りは2.75%台へ急低下(債券高)。従来の日本売りの巻き戻しから株高・債券高・円買いが同時進行した。クロス円もユーロ円が184.74円、ポンド円が216.85円まで下落するなど軒並み円高となり、ドル円の下げを主導にユーロドルが1.1461ドル、ポンドドルが1.3452ドルまで上昇する場面もみられた。引けにかけてもドル円は161.41円を付けるなど上値が重く、全般に円買い・ドル安が優勢な展開となった。
ロンドン市場は、静かな取引。ドル円は東京午前に片山財務相の「日銀巡る骨太方針の記述を与党で調整中」「GPIFの国内投資後押し」との発言で162円台前半から161円台前半へ急落したが、ロンドン時間にかけてじりじりと値を戻し161円台後半で推移している。クロス円も下げ一服でユーロ円は184円台後半、ポンド円は217円を挟み揉み合う。ドル売りも解消されユーロドルやポンドドルは前日NY終値付近へ回帰。「米イラン技術協議継続」の報道で中東情勢が一服したほか、欧州時間は注目統計もなく動意薄となった。米国市場での韓国SKハイニックス取引開始後の動向や、21時半発表のカナダ雇用統計待ちとなっている。
NY市場は、全体的に様子見の雰囲気が広がる中、ドル円は161円台での推移。東京時間に円高が強まり、一時161円台前半に下落。その後は買い戻されているものの、161円台での推移を続けた。イラン情勢は再び緊迫化しているものの、トランプ大統領の発言などからも、以前のようにエスカレートする気配もないことから、市場は比較的楽観的にみている。
執筆者 : MINKABU PRESS
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