ドル円は150円台を維持 米GDPは想定以上に強い内容も反応は逆=NY為替概況
ドル円は150円台を維持 米GDPは想定以上に強い内容も反応は逆=NY為替概況
きょうのNY為替市場でドル円は150円台を維持して取引された。この日発表の第3四半期の米GDP速報値は個人消費がけん引し、4.9%増と強い内容となった。強かった事前予想をさらに上回り、2021年以来の急成長となった。
しかし、市場では米国債利回りが下げ、為替市場はドル売りの反応を見せている。多くのエコノミストは、借入コストが高額商品の購入を制限し、学生ローン返済も再開されるため、第4四半期の成長は鈍化を予想している。今回の強い数字をもってしても、来週のFOMCでの金利据え置くとの市場の見方に変化はないようで、短期金融市場でも据え置きをほぼ確実視している。そのような中で、事前に強い内容で織り込んでいたこともあり、材料出尽くし感が出たのかもしれない。ドル円は発表直後に150円台前半に伸び悩んだ。
ただ、ドル円は来週の日銀決定会合に向けて上値への警戒感も根強い。展望レポートでインフレ見通しの上方修正は確実視されているようだが、それに伴ってイールドカーブ・コントロール(YCC)の再修正も実施してくるのではとの観測も出ている。しかし、7月に修正を行ったばかりで、現段階で政策修正の見込みは薄いとの見方も一部で出ている。日銀が政策変更を行わず、ドルが堅調な米経済指標を手掛かりに上昇基調を維持すれば、ドル円は152円を試す可能性もあるという。
ユーロドルは1.05ドル台前半まで一時値を落としたが、1.0560ドル付近まで買い戻されている。ただ、本日21日線は1.0560ドル付近に来ているが、その付近での上値抵抗は強いようだ。
この日はECB理事会が開催され、予想通りに中銀預金金利を4.00%に据え置いた。ECBは声明で「金利をこの水準で十分に長く維持すれば、インフレを目標の2%に戻すことに大きく貢献するだろう」とあらためて強調し、2022年7月から10回連続の利上げサイクルの終了を示唆している。ただ、ECBは金利据え置きは今後の利上げは一切ないという意味ではないと説明したが、市場は終了と見ているようだ。
市場の注目はパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)で購入した資産の早期縮小だったが、こちらも議論はしなかったとし、2024年末の再投資停止を再確認と繰り返し述べていた。再投資で恩恵を受けているイタリア債が上昇(利回り低下)し、ドイツ債の利回り格差は2.00%ポイント未満に縮小した。利下げについては時期尚早と否定。
ポンドドルはNY時間に入って下げ渋る動きを見せ、1.21ドル台に戻した。一時1.20ドル台に下落し、21日線を下放れる展開も見せていた。来週は英中銀金融政策委員会(MPC)が予定され、据え置きがほぼ確実視されている。短期金融市場では追加利上げの可能性を30%程度で見ている状況だが、英インフレはなお高水準ではあるものの、徐々に鈍化傾向を見せており、雇用も同様の傾向を見せ始めている。このことから市場は、利上げはこれ以上必要がなく、英中銀は今後、様子見の段階に入ると見ているようだ。なお、次回MPCの前にカンリフ副総裁が退任する意向を示した。
一方、英中銀は複数回の利下げを正当化するのに十分な証拠が出るまで、長期に渡って金利を据え置く可能性が高いとの見方も出ている。しかし、一旦利下げが始まれば、想定以上に深い利下げになる可能性があるという。いまのところ、計0.85%ポイントの利下げを予想しており、現在の市場は今後2年間の利下げ規模を過小評価していると指摘。最新の英経済指標は景気後退の危機に瀕していることを示しているという。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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