強い米経済指標でドル買い戻し 2回の利上げを織り込む動きも=NY為替概況
強い米経済指標でドル買い戻し 2回の利上げを織り込む動きも=NY為替概況
きょうのドル円はNY時間に入って買い戻しが強まり、一時144.65円付近まで戻す場面も見られた。きょうの市場はリスク回避の雰囲気が強まっており、株式市場もきつい下げとなっている。リスク回避の円高がドル円の利益確定売りを加速させ、一時143.60円付近まで下落する場面も見られた。
ただ、NY時間に入って発表になったADP雇用統計で雇用者数が予想外の増加となったことや、ISM非製造業景気指数も予想を上回り、FRBのタカ派姿勢を再確認する内容だったことで、米国債利回りの上昇と伴にドル買いが優勢となっている。
FRBは年内あと2回の利上げの可能性を示唆しているが、市場はあと1回を有力視していた。しかし、きょうの強い指標を受けて2回の可能性も織り込み始めている模様。いまのところ確率は45%程度で2回の利上げを織り込んでいる。
目先は144円台をこのまま維持できるか注目される。143.90円を完全にブレイクして今週を終えるようであれば、テクニカル的に一旦戻り売りのサインとの指摘も出ている。
ユーロドルはこの日発表のドイツの製造業受注が予想以上の大幅な増加を示したこともあり、ロンドン時間に1.09ドルちょうど付近まで上昇していた。ただ、NY時間に入ってドル買いが優勢となったことで、ユーロドルは1.08ドル台での推移となっている。21日線が1.0885ドル付近に来ているが、その付近での推移が続いており、次の展開待ちの雰囲気に変化はない。
本日はロンドン時間に5月のドイツ製造業新規受注が公表され、予想外の強さを示した。ドイツ経済が不況から脱却するにつれて、製造業の不振が緩和される兆しを見せている。自動車が好調で、特に船舶から軍需品までを含む「その他の輸送用機器」のカテゴリーの受注は137%急増した。ただ、中国からの需要不振により、ドイツ製造業の受注が継続的な回復を見せるかは不透明との声も根強い。
ドイツ製造業新規受注(5月)15:00
結果 6.4%
予想 2.4% 前回 0.2%(-0.4%から修正)(前月比)
結果 -4.3%
予想 N/A 前回 -9.3%(-9.9%から修正)(前年比)
ポンドドルはNY時間に入って再び戻り売りが優勢となり、一時1.26ドル台に下落する場面が見られた。ただ、本日の21日線が1.2695ドル付近に来ているが、その水準は維持されており、なお上向きの流れを堅持している状況。
強い英雇用統計と英消費者物価指数(CPI)から英中銀の利上げ期待はどの主要中銀よりも高まっている。英中銀は再び0.50%ポイントの大幅利上げを年内に実施するのではとの見方も出ている状況。ただ、その割にはポンドの上値は重い。急速な利上げによる景気後退の可能性のほうを市場は警戒しているようだ。
一部からは、金利上昇により金融機関の融資の債務不履行(デフォルト)の比率が拡大しても、英銀の融資の損失は抑制されたままである可能性が高いとの指摘が出ている。現在の住宅ローンの融資比率は2008年の金融危機時よりもかなり低下しており、英国での高い就業率と相まって、銀行ローンの返済を支えるはずだという。しかし、現在の高金利は英住宅ローンを借りている家計のうち5%が返済に苦しむ可能性があることを意味するという。金融危機時には2.8%であった。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。