ドル円は140円台前半に伸び悩む ECB理事会を受けユーロが上昇=NY為替概況
ドル円は140円台前半に伸び悩む ECB理事会を受けユーロが上昇=NY為替概況
きょうのドル円はNY時間に入って140円台前半に伸び悩んだ。NY時間に入ってドル売りが強まり、ドル円を圧迫。この日は米小売売上高や米新規失業保険申請件数が発表になっていたが、米小売売上高は予想外の増加を示したものの、米新規失業保険申請件数は米労働市場の緩和を示す弱い内容となったことから、ドルの戻り売りが強まった。また、この日のECB理事会を受けて、ドルがユーロに対して下落していたこともドルを圧迫。
しかし、本日のドル円は上値追いを加速させ、一時141円台半ばまで上昇する場面も見られた。ドル買いというよりも円安がドル円を押し上げていた。前日のFOMCを受けてFRBがあと2回の追加利上げの可能性を示す一方で、パウエル議長は利上げペースについては慎重さを覗かせていた。これまでは毎会合ごとに急速な利上げを実施してきたが、利上げサイクルも8合目まで来ており、この先は経済指標を確認しながら、慎重に頂上にアプローチしたいという意図もあるのかもしれない。
市場も7月については0.25%ポイントの利上げの可能性を有力視しているものの、それ以降については未知数といった状況で、2回目の追加利上げを積極的に織り込む動きまではまだ出ていない。
そのような中で、市場は明日の日銀決定会合に注目している。今回は据え置きをほぼ確実視しているようで、むしろ7月に何らかの変化があるのではとの見方も多いようだ。中には7月よりも今回の方が政策変更をしやすいとの意見もあるようだが、少数派ではある。ただし、将来のイールドカーブコントロール(YCC)政策の変更について、植田総裁から何らかのヒントが出る可能性は排除できない。
この日のECB理事会を受けてユーロ買いが強まり、ユーロドルは1.09ドル台半ばまで上昇したほか、対ポンド、円でも上昇。ユーロ円は153円台半ばに上昇しており、08年9月以来の高値を更新した。
ECBは中銀預金金利を0.25%ポイント引き上げたほか、追加利上げの可能性も示唆した。ラガルド総裁は理事会後の会見で「7月の利上げの可能性は高い」と7月利上げを明確に示していた。7月利上げについては市場も織り込み済みといったところで、関心はその先がどうなるのかに集まっている。ブルームバーグが関係者の話として伝えたところによると、ECBは7月の理事会で利上げを実施したうえで、9月利上げが必要かどうかの厳しい議論を予想しているという。数人の理事は7月利上げが最後になることを望んでいるが、反発も予想しているとしている。
きょうのECB理事会のタカ派姿勢を受けて、市場は9月もECBは利上げを続け、中銀預金金利を4.00%まで引き上げるとの見方をかなり織り込んでいる。
ポンドドルは上値追いが加速し、1.27ドル台後半まで上げ幅を拡大。昨年の4月以来の高値水準に上昇。きょうの上げで上へのレベルシフトの感も出ており、来週にかけて1.30ドルを試しに行くか注目される。
ポンドに関しては、重要イベントが来週に控えている。21日に英消費者物価指数(CPI)の発表、そして、翌22日に英中銀金融政策委員会(MPC)が予定されている。今週はFOMC、ECB理事会の結果が発表され、予想以上にタカ派な雰囲気が広がっている。その中で英中銀もタカ派色が強い内容になると見られているようだ。英CPIの数字次第のところもあるが、市場は今回を含めて年内あと5回のすべてのMPCで0.25%ポイントの利上げを見込んでいる。その期待を裏付ける内容となるか注目される。
ただ、英国債利回りの上昇は経済に引き締め効果をもたらし始めており、住宅ローン市場の苦境が最も直接的な例だが、最近の引き締め期待の復活を受けて、主要な金融機関が金利を引き上げ、一部は住宅ローンの募集を停止している。しかし市場からは、そのことや住宅市場への影響がポンドに反映されるのはまだ先との指摘も出ている状況。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。