ドル円に緩やかな戻り売りも、上値追いのモメンタムは維持=NY為替概況
きょうもNY為替市場はドルの戻り売りが優勢となる中、ドル円も緩やかな戻り売りに押された。しかし、114円台は堅持しており上値追いのモメンタムは維持している模様。前日は一時113円台に下落する場面がみられたものの、しっかりと下値をサポートされたことで、ロング勢も上値への自信を深めているようで、心理的節目の115円を視野に入れた動きが続いている。
先週以降、ドルは戻り売りが優勢となっているが、リスク志向の高まりでドルの逃避買い需要が後退していることが要因とみられる。ただ、年末にかけてのインフレ懸念やサプライチェーン問題、そして、人材不足などがFRBの利上げ期待を高めることから、この動きは長続きしないという見方も依然として多い。
一方、ドル高一服の動きはバイデン大統領がパウエルFRB議長を再任させるか不透明になっている点も要因として指摘されている。パウエル議長は再任に前向きとも言われているが、2人の地区連銀総裁による疑わしい金融取引が再任の見通しに暗雲を投げかけている。また、ここに来て、パウエル議長自身が昨年10月に保有していた株式投資信託を最大500万ドル売却していたと報じられている。FRBの倫理規定には該当していないようだが、新型ウイルスの追加経済対策を巡る調整が難航していた時期でもあり、道義的責任を追及される可能性もありそうだ。
ユーロドルはリバウンドの動きが続いており、1.16ドル台半ばに上昇。目先は前日の高値1.1670ドル近辺が上値メドとして意識される。きょうの上げで日足のローソク足は21日線の上に完全に出ており、このまま買戻しの流れが持続できるか注目される。ただ、FRBや英中銀と比べてECBは緩和策解除に慎重とみられている中、リバウンド相場は長続きしないとの見方も根強いようだ。
本日ドイツ連銀のバイトマン総裁が12月31日付で辞任すると発表した。個人的な理由としている。バイトマン総裁はECB理事の中でもタカ派の急先鋒でECBの緩和策に批判的だった1人。高インフレ見通し、集団免疫、そして、パンデミック前の水準を回復しつつある経済は各国の中銀に刺激策解除の強い議論を生み出している。恐らく12月の理事会で決定されるであろう資産購入縮小開始は同総裁の最後の仕事になりそうだ。もっとも、後継の総裁の名前はまだ出てきていないが、ドイツ連銀は伝統的にタカ派色の強い総裁が多い。
ポンドドルはロンドン時間に1.3740ドル付近まで値を落としていたが、NY時間にかけて買い戻しが膨らんでおり、1.38ドル台に戻している。ロンドン時間に発表された9月の英消費者物価指数(CPI)が予想を下回ったことでポンド買いが一服していたようだ。ただ、年内の英利上げ期待が強まる中で、下値では押し目買いオーダーが並んでいるようだ。
英CPIについては、8月の数字が9年ぶりの上昇率を記録していたこともあり、英中銀にとってはひと時の休息といったところであろう。レストランやホテルといった外食レジャー産業の鈍化が相殺していた。ただ、輸送や住宅に牽引された物価上昇圧力は依然として拡大しており、市場の早期利上げ期待に変化はなない。一部からは過熱気味との指摘も出ているが、11月の利上げ開始を織り込む動きも出ている。いずれにしろ、英中銀は主要国の中で最初の利上げを実施する中銀になる可能性が濃厚。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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