ドル円は１０８円台に戻す そろそろ下げ一服の雰囲気も＝ＮＹ為替概況

　きょうのＮＹ為替市場でドル円は買い戻しの動きが優勢となり、１０８円台に戻している。本日も戻り売りが先行し、一時１０７．６５円付近まで下落していた。フィボナッチ３８．２％戻しの水準が１０７．７５円付近に来ているが、その水準を下回ると押し目買いも活発に入る模様。本日のドル円は１０８円台を維持して大方の取引を終えている。

　一部からは米国債利回りの下げが一服し始めており、ドル円も下げ一服感が出てもおかしくなはいとの指摘も聞かれる。過熱感を測るテクニカル指標であるＲＳＩは４０付近で推移しており、まだ下げ過ぎ感はない。ただ、４月に入って以降、一本調子の下げが続いていることから、そろそろという雰囲気も出てきているのかもしれない。

　ドル反転への期待もあるようだ。ドルインデックスは４月に入ってからの下落で、すでに１－３月期の上げの約半分を失っており、反転までにはそう時間がかからないとの指摘も聞かれる。急速なワクチン展開とバイデン政権の積極財政により、今年と来年の米経済は他の主要国経済を大きくアウトパフォームすることが予想され、そのれに伴ってＦＲＢの出口戦略も促される。ＦＲＢは２３年に利上げを開始する前に、年内にも資産購入ペース縮小など出口戦略の開始を発表する可能性があるという。相対的の強い米成長と金利差を考慮すれば、ドルへの支援的な資金フローが見込まれると指摘している。

　一方、先週はバイデン政権の富裕層へのキャピタルゲイン増税のニュースが駆け巡った。市場はリスク回避の雰囲気を強めたものの、１日で収束している。ただ、一部からは、キャピタルゲイン増税の提案は、ドル安を誘発する可能性が高いとの指摘も聞かれる。僅かではあるが、厳格な財政政策は、ＦＲＢがより長く金融緩和を保つことを促し、米国債売却（利回り上昇）の警戒を和らげる可能性があるという。

　今週はＦＯＭＣが予定されており、その結果を見極めたい雰囲気もある。しかし、ＦＲＢはインフレ上昇は一時的との見方を変える雰囲気はなく、従来の慎重姿勢を堅持するものとみられている。いずれにしろ、ＦＯＭＣの反応を確認したいところではある。

　ユーロドルは１．２０ドル台に値を落としたものの、後半に買い戻しが優勢となり、１．２０９５ドル付近まで戻している。アジア時間には１．２１ドル台で推移していた。先週のＥＣＢ理事会を受けて市場からは、ＥＣＢはパンデミック緊急購入プログラム（ＰＥＰＰ）に基づく現行の資産購入ペースを第３四半期まで延長する可能性も指摘されている。

　ＥＣＢは６月の理事会でＰＥＰＰの資産購入ペースについて協議することを明らかにしており、市場は購入ペースの段階的縮小および終了の目安を示唆すると期待している。しかし、市場の一部からは、ＥＵの財政刺激策に伴う支払いが第４四半期にずれ込むリスクがあり、これは現在の資産購入ペースをさらに３カ月続けることを正当化する可能性があるという。また、ＥＣＢはワクチン接種率７０％の目標達成を待ってから、ＰＥＰＰを段階的に廃止するとの見方も出ているようだ。現在の接種率からすると、達成は第３四半期が有力視される。

　そのほか、ＥＣＢは９月のドイツ総選挙の結果を確認する可能性もあるという。ラガルド総裁は先週の会見で、ＥＣＢは少なくとも選挙が予定されている秋まで、その緩和姿勢を変えないという重要なポイントを伝えていたと指摘している。

　ポンドドルは１．３８ドル台に再び値を落としたものの、後半になって再び１．３９ドル台に戻している。本日１．３８２０ドル付近に来ている２１日線より上の水準は維持しており、リバウンドの流れは継続している。

　先週発表の４月の英ＰＭＩ速報値は成長と企業のモメンタムが持続的改善を示し、力強い回復が進行中であることが示された。これらを受けて英中銀の出口戦略着手への期待も高まっているが、市場の一部からは資産購入ペースの縮小は５月の政策委員会よりも６月のほうが可能性が高いとの指摘も聞かれる。これは予想される経済の完全な再開と一致するという。英中銀は、主要国中銀の中で最初に資産購入を停止する可能性も指摘されている。

MINKABU PRESS編集部　野沢卓美