ドル円は上値追いの動き 終盤に一服もリスク選好の円安優勢に=NY為替概況
きょうのNY為替市場、終盤に入って一服したものの、リスク選好の円安の動きが見られ、ドル円は106.70円付近まで一時上昇した。終盤の一服については、共和党のマコネル上院院内総務が「米景気対策の交渉は行き詰まっている」とFOXニュースで発言したことで、リスク選好の雰囲気が後退した。
ただ、ドル安の流れは根強いものの、きょうは円安の動きが優勢となり、ドル安を相殺している。終盤になって下げに転じたものの、米株式市場でダウ平均が大幅に8日続伸していたことで、株高が円安を誘発したようだ。協議が難航している追加経済対策への期待感が株高をフォローしており、トランプ大統領がきのう、キャピタルゲイン課税の減税と中間所得層の所得税減税に言及したことで市場は期待感を更に高めた模様。
トランプ大統領は「キャピタルゲイン課税の減税で、さらに多くの雇用が創出される」と述べていた。キャピタルゲイン課税の引き下げには議会の承認が必要だが、一部の顧問が大統領に対して、インフレ調整を通じた減税の大統領令なら発令可能だと助言している。資産売却時に取得価格を物価調整し、インフレによる値上がり分については減額するもので、長期保有の富裕層の投資家にとってはメリットが大きいとも言われている。
更に懐疑的な見方が少なくないものの、ロシア政府が世界初のワクチンを承認したと表明したことも雰囲気を改善しているようだ。ロシアは国内外での大規模接種を目指しているという。プーチン大統領は「ワクチンの大量提供を間もなく始められるようなると期待する」とし、自身の娘の1人に接種済みだとも話した。
ドル安の流れが根強い中で、ドル円の上昇継続には疑問符が多いものの、夏休みで市場参加者が少なくなる中、ドル円は21日線の水準を回復した。
ユーロドルは上げが一服したものの、底堅さは堅持している。ただ、このところの上昇から過熱感も高まる中、ユーロドルは調整の動きが続いており、1.18ドル台の上値抵抗も強まりつつあるようだ。本日の21日線は1.1660ドル付近に来ているが、まだ調整余地はありそうだ。ユーロドルの上げはドル安が主因だが、ドイツ経済の回復もサポートしているものと思われる。ただ、リアルタイムの指標からは、ドイツの回復は既にかなり進んでおり、回復余地も無くなりつつあるとの指摘も聞かれる。
ポンドドルはNY時間に入って伸び悩んだものの、きょうは1.31ドル台まで一時上昇し、買い戻しの流れは続いている。ドル安がポンドドルを押し上げているが、先週の英中銀金融政策委員会(MPC)を経て市場は利下げ期待を後退させており、ポンド買いのフォローとなっている面もあるようだ。
ただ、市場の追加緩和期待は強い。きょうはラムスデン英中銀副総裁のインタビューが伝わり、英経済が再び減速した場合に量的緩和(QE)を強化するとの認識を示していたが、市場からは、11月のMPCで量的緩和(QE)を実施する可能性があるとの期待は強い。市場では利下げ期待は後退しているものの、1000億ポンドの資産購入枠拡大観測はなお根強いようだ。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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