ドル円は依然上値重い FOMC受けドル買い戻しも流れに変化なし=NY為替概況
きょうもNY為替市場はドル売りが続く中で、ドル円は売りが優勢となった。一時104.80円近辺まで下落する場面も見られ下値模索が続いている。下値では月末絡みの実需買いも観測され、105円台に押し戻す動きも見られたものの、依然として上値は重い。
ドル売りについては、米国での感染第2波の拡大が続いており、1日の死亡者数も過去最多に増加する中で、米経済は期待ほど早期に回復しないのではとの先行き不安が強まっている。FRBの緩和政策も想定上に長期化することも予想され、市場ではマイナス金利を織り込む動きも出ている状況。
一方、欧州の感染第2波はいまのところ、米国ほどの悪化は見せておらず、これまで米国のほうが早期に回復すると見ていた向きも、見通しの修正を迫られているのかもしれない。また、米10年債利回りは0.6%を割り込んでいるが、期待インフレを考慮した実質利回りはマイナス圏で推移していることもドルを圧迫しているとの指摘も聞かれる。
米中対立もエスカレートしており、しばらくドル円は上値の重い展開が続くとの見方が増えつつあるようだ。
午後になってFOMCの結果が発表され、声明は前回の内容をほぼ踏襲し、「ウイルスは著しいリスクもたらす」と指摘した。パウエルFRB議長の会見でも、必要ならなば追加緩和の可能性を示し、大方の期待通りに慎重姿勢は見せたものの、ウイルス感染や財政の動向次第といった雰囲気も滲ませており、期待ほど追加緩和の可能性を強調していない印象も出たのかもしれない。最初はドル売りの反応が見られたものの、急速にドルの買い戻しがみられた。ただ、ドル安の流れに変化はない。
ユーロドルは上値追いを再開。前日は過熱感も出ていたことから、利益確定売りが出ていたが、きょうは1.18ドル台に上昇する場面も見られた。
このところの急上昇で、2018年以来続いてきたユーロドルの長期下降トレンドは終了したとの見方も出ている。今回のEU復興基金をきっかけに、EUの財政政策に対するこれまでの姿勢に大きな変化がもたらされれば、ユーロドルは向こう複数年に渡って上昇が見込まれるとの声も聞かれる。その場合、2010年から14年の水準に戻る可能性があるという。同期間のユーロドルの平均水準は1.33ドルにあたる。
ポンドドルも上値追いが続いている。一時1.30ドル台に上昇しする場面も見られた。ドル安が強まる中でもポンドドルはEUとの貿易交渉への不透明感からユーロに比べて上げが鈍かった。ユーロドルの上げに過熱感が見られる中で、ポンドドルに見直し買いが入っているのかもしれない。
ただ、そのEU貿易交渉で両者が妥協を見せない中で、依然として難航しており、年末の合意なき離脱への懸念は根強い。新型ウイルス感染の影響と相まって、市場でも弱気が見方は引き続き多く見られ、ポンドドルは第4四半期に1.17ドルまで下落するとの弱気な見方も出ている。上値警戒感も高まっているのか、オプション市場では翌日物のボラティリティが1ヵ月半ぶりの水準に上昇しており、波乱の展開の予兆との指摘も出ていた。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

執筆者 : MINKABU PRESS
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