為替相場まとめ4月8日から4月12日の週
8日からの週は、ドル高が進行した。この週の注目イベントは米消費者物価指数(CPI)とECB理事会だった。10日発表の米CPIは予想を上振れる結果となり、年内の米利下げ観測が大幅に後退した。米債利回りが急上昇、ドル買いが強まった。11日発表の米生産者物価指数(PPI)は前年比が予想を下回るも、コア前年比は上回るまちまちの結果だった。ややドル売り反応もみられたが、前日のドル買いの流れには目立った影響を与えなかった。同日にはECB理事会が政策金利を予想通りに据え置いた。注目の声明やラガルドECB総裁会見では、6月利下げについて否定的な見方は示されず、市場はこれをゴーサインと受け止めた。ドル買いとともにユーロ売り圧力が広がった。前日の強い米CPIを受けて英欧債利回りも上昇反応をみせていたが、ラガルド総裁や金曜日にはギリシャ中銀総裁などから米FRBとECBの金融政策スタンスの差が指摘され、米金融当局には影響されない点が強調された。市場はECBの6月利下げ開始に確信を深めている。ドル円は152円の壁を上抜けて153円台へと上昇、34年ぶりのドル高・円安水準となった。市場では介入水準に達したとの警戒感が高まった。ドル円が上昇する一方で、クロス円は全般的に円高圧力に押された。
(8日)
東京市場は、小動き。ドル円は151円台後半で、朝からのレンジは24銭にとどまった。先週末の米雇用統計の好結果を受けたドル高水準。加えて中東情勢緊迫の一服もあり、リスク選好からの円売りも。週明け東京株式市場では日経平均が上昇した。ドル円は一時151.81近辺まで買われ、先週金曜日の高値をわずかに上回った。ユーロ円は164円台前半から半ば、ユーロドルは1.08台前半で推移した。
ロンドン市場は、ドル円がじり高の動き。週明け東京早朝は151.60付近で取引を開始。その後は買いが継続している。ロンドン序盤にかけては米10年債が4.45%付近まで上昇、ドル円も151.92近辺まで買われた。ただ、152円を付けるには至らず買い一服に。先週末の強い米雇用統計のあと、米株が買われた流れを受けて、週明けの各株式市場も堅調。欧州株も買われており、リスク警戒の後退が円売りにつながる面もあった。ロンドン時間にユーロ円164円台半ば超え、ポンド円191円台後半、豪ドル円100円台乗せなどに高値を伸ばしている。ドルストレートは小動き。ユーロドルは1.08台前半、ポンドドルは1.26台前半での取引に終始している。ドル指数は東京午前に低下したあとは、ロンドン序盤にかけては上昇。先週末からのレンジ内での揉み合いとなっている。2月独鉱工業生産や4月ユーロ圏・センセックス投資家信頼感などが予想を上回ったが、ユーロ相場に目立った反応はみられなかった。10日発表の米消費者物価指数待ちのムードも。
NY市場でも、ドル円は151円台後半で推移した。先週の予想外に強い米雇用統計を受けて米国債利回りが上昇を続けており、ドル円は上値追いの動きを継続しているようだ。ただ、財務省による介入警戒感もあり、152円に心理的な壁が形成されている。クロス円も上昇し、円安の動きは続いている。キャリー取引に絡んだ動きとの指摘も出ていた。ユーロドルはNY時間に入ってやや買い戻され1.08台半ばで推移した。ECBは今週の理事会で6月利下げに向けた議論を活発化させるものと見られているポンドドルも1.26台半ばへとやや上昇。ここに来てFRBよりも英中銀のほうが早く利下げを実施するのではとの見方が浮上している。短期金融市場では5月はまだ少数派だが、6月の利下げ期待を70%程度で織り込む動きが見られている。一方、FRBの方は先週の強い米雇用統計を受けて6月利下げ期待を後退させており、現在は7月開始にコンセンサスが後退している状況。
(9日)
東京市場で、ドル円は引き続き151円台後半での推移。米債利回り上昇もあって、一時151.92近辺まで上昇。その後は、前セントルイス連銀総裁のブラード氏が年内3回の利下げが基本路線と発言したことなどを受けて米債利回りが低下。ドル高一服となった。下押しは151.80台までにとどまった。ユーロ円は一時164.90台まで上昇も、165円台には届かず、164円台後半での推移が続いた。ユーロドルは1.08台半ばで10ポイントレンジと膠着。
ロンドン市場は、米債利回り低下で、ややドル売りに押された。ユーロドルは1.08台半ばでサポートされると1.0870付近へ、ポンドドルも1.26台半ばから1.2690付近へと上昇。ドル円は植田日銀総裁の緩和姿勢が確認されたこともあり、151.90台まで買われた。しかし、一部報道で次回日銀会合で好調な賃上げを受けて、24年度物価見通しの上方修正を議論へとしたことで151.70台まで失速した。クロス円は円安の動きが優勢で、ドル円も151円台後半の高値圏を維持。ユーロ円は一時165円台に乗せる場面があった。ポンド円は192円台後半へ、豪ドル円は100円台半ばへと上昇。米10年債利回りは4.43%付近から4.38%付近まで一時低下した。ただ、全般的には明日の米消費者物価指数待ちのムードで、各通貨ペアの値幅は限られていた。
NY市場では、やや円高の動き。ドル円はNY時間にかけて戻り売りに押された。151円台の水準はしっかりと堅持し、152円台をうかがう動きを続けている。財務省による介入警戒感もあり、152円に心理的な壁が形成されているが、152円台に入ってもすぐには財務省は介入に動かないのではとの見方も海外勢からは出ていた。本日は一時的に米株式市場の下げが強まったことで、リスク回避の円高の動きも見られていた。特にユーロ円やポンド円などクロス円が下げた。ユーロドルは1.08台前半、ポンドドルは1.26台に反落と戻り売りに押された。
(10日)
東京市場は、小動き。米消費者物価指数発表を控えて様子見ムードが広がった。ドル円は151円台後半で14銭レンジ。植田日銀総裁が昨日の参議院に続いて、午前に衆議院に出席し答弁を行ったが、相場への影響は目立たなかった。ユーロドルは朝からのレンジがわずか9ポイント。ポンドドルが11ポイントにとどまった。日経平均に利益確定売りも、香港ハンセンが2%前後の上昇とアジア株がまちまちでリスク関連の動きにも乏しい。クロス円も小動きだった。NZ準備銀行は市場予想通り政策金利を据え置いた。声明やサマリーで従来通り当面の引き締め姿勢維持を示したことで、NZドルが買われた。ただ、対ドルでの上昇幅は20ポイント程度にとどまった。
ロンドン市場は、やや円安の動き。ドル円、クロス円が緩やかに上昇した。欧州株が堅調に推移するなど、リスク警戒感の後退が影響しているもよう。ただ、日本時間午後9時30分には今週で最も注目度の高い経済指標である3月米消費者物価指数(CPI)の発表を控えている。全般的には様子見ムードが漂っている。ドル円は連日、152円手前で上昇を抑えられるパターンが続いている。きょうも151.70付近から151.88近辺まで買われたが、一段の上値追いは見られず。ユーロ円は164.65近辺を安値に165円手前へとじり高の動き。ポンド円は192.25付近から192.90付近へと買われている。ユーロドルは1.0850割れ水準から1.0860台での振幅。ポンドドルは1.2670付近を安値に、1.27台乗せまで買われている。対ユーロでもポンドは堅調。ただ、明確なポンド買い材料は見当たらない。今週11日にはECB理事会の発表が予定されており、ECBのハト派姿勢が意識されて、ユーロ売り・ポンド買いの圧力がみられている面も。
NY市場では、ドル買いが強まった。米CPIが予想を上回る結果となったことに反応。市場ではFRBの利下げ期待が更に後退させている。FRBが注目しているとされる住居費・食品・エネルギーを除いたサービスインフレ、いわゆるスーパーコアも前月比0.6%、前年比4.8%上昇と、2023年4月以来で最も加速していた。短期金融市場でも6月利下げの可能性を20%以下まで低下させたほか、年内は2回の利下げに留まるとの見方をさらに強めている。ドル円は152円を突破し、1990年以来の高値水準を更新。米国債利回りも上昇を加速させる中、一気に153円台をうかがう展開を見せている。152円台は介入警戒ゾーンとして意識されている水準だが、NY時間での財務省の介入は無かった。岸田首相が訪米中で本日は日米首脳会談が行われていたこともあったのかもしれない。ただ、かなり急激に進んだので要警戒ではある。ユーロドルは戻り売りが強まり、一時1.07台前半まで100ポイント超急落した。明日はECB理事会が開催されるが、ドル買いのみならず、それに向けたユーロ売りも指摘されている。ポンドドルも一時1.25台前半まで急落し、200日線もブレイクした。
(11日)
東京市場は、やや調整入るもドル高圏を維持。ドル円は午前に日本政府・日銀による円買い介入への警戒感から153円を割り込み、一時152.76付近まで下落した。神田財務官は朝方に為替相場について「年初からの動きはかなりの変動幅」「行き過ぎた動きにはあらゆる手段を排除せず適切に対応」などと発言したことが、円買いにつながった。しかし、午後は下げ渋りをみせると、東京終盤には153円台を回復する場面があった。クロス円も同様の動きで、ユーロ円は164.14近辺、ポンド円は191円台半ばまで下げたあとやや値を戻している。ユーロドルは1.0740台を中心に、朝から12ポイントレンジにとどまった。
ロンドン市場は、ドル高水準での取引が継続。前日の米債利回り急上昇を受けて、きょうは英欧債利回りも上昇、英中銀やECBの年内利下げ織り込み幅が縮小している。買い先行で始まった欧州株はマイナス圏に失速している。為替市場では前日からのドル高水準で神経質な動き。ドル円は高値を153.29近辺に伸ばしたあとは、153円台前半で高止まり。ユーロドルは1.0720台から1.0750付近で、ポンドドルは1.2530付近から1.2570付近での振幅。いずれも前日NYクローズを挟んでの取引となっている。ドル指数は一時昨年11月14日以来の高水準をつけるなど、前日からのドル高の流れには変化はみられず。クロス円も上下動。東京市場後半からの円安を受けて買いが先行したが、ドル高にユーロドルなどが上値を抑えられるとクロス円も反落している。ユーロ円は164.20付近から164.70付近で上に往って来い。ポンド円も191.60付近から192.60付近で振幅した。このあとはECB理事会結果発表、米生産者物価指数などの発表が控えている。この時間帯は、イベント前で方向性つかみにくい面もあった。
NY市場では、米PPIを受けて一時ドル売りも、その後戻す展開。米生産者物価指数(PPI)が予想を下回ったことで、序盤はドル売りが優勢となり、ドル円も152円台に一時下落した。しかし、動きは一時的で、まもなく153円台に戻している。米PPIは総合指数で前月比0.2%の上昇、前年比で2.1%の上昇となったが、コア指数の前年比は2.4%の上昇と、こちらは予想を上回っていた。本日の米PPIは前日のCPIを受けた動きを一服させていたようだが、前日の米CPIで形成された利下げへのセンチメント後退を取り戻すまでの材料ともならず、次第に前日の雰囲気に戻している。きょうも何人かのFOMC委員の発言が伝わっていたが、早期利下げには消極的な発言を述べており、もう少し時間をかけて確認したい意向を示していた。ユーロドルは1.07台半ばまで戻していたものの、再び上値が重くなり、瞬間的に1.07を割り込む場面も見られた。本日はECB理事会の結果が発表され、政策金利は予想通りに据え置かれた。ECBは声明で「基調的インフレの大半の指標は緩和しつつある」と述べていた。その後のラガルド総裁の会見では、6月に公表される最新の経済予測でインフレが2%に確実に向かっていることが明らかになれば、利下げする方針を示していた。短期金融市場ではいまのところ6月利下げを80%程度の確率で織り込んでいる。ポンドドルは1.25台で上下動。市場は、英中銀の早期利下げ期待を高めており、6月の利下げ開始期待も台頭している。確率は40%程度。ただ、この日はグリーン英中銀委員の英FT紙への寄稿が伝わり、市場の早期利下げ期待をけん制していた。
(12日)
東京市場で、ドル円は下に往って来い。昨日の海外市場で1990年以来34年ぶりの高値水準となる153.32近辺まで一時上昇した。その後も高値圏を維持して東京朝を迎えたが、鈴木財務相が朝方に円安けん制発言を行ったことから日本政府・日銀による円買い介入への警戒感が強まり、一時153円台を割り込む場面があった。米10年債利回りが一時4.55%台まで低下したことも重石となった。しかし、その後は米10年債利回りの低下が一服したことからややドル買い優勢となり、午前の下げを帳消しにして、153.20台まで戻した。ユーロドルは午後に入ってドル買いが優勢となると、一時1.0705付近まで軟化。クロス円は概ね円買いが優勢で、ユーロ円は午後に164円ちょうど付近へと下落、この日の安値を更新した。
ロンドン市場は、ドルが全面高となっている。米欧金融当局のスタンスの差が意識されているもよう。今週は米消費者物価指数が予想を上回る結果だったことを受けて、年内の米利下げ観測が後退している。一方、ECB理事会ではインフレ鈍化を背景に、6月利下げ開始観測が示されており、対照的な内容となっている。昨日のラガルドECB総裁会見や今日の一連のECB高官らからは、FRBの動向にECBは影響されずと表明されている。これを受けて欧州債や英国債などの利回りが低下している。ユーロドルは1.07台割れから1.06台前半へ、ポンドドルは1.25台半ばから1.24台後半へとほぼ一方通行で下落している。その他主要通貨もドルに対して弱い動きとなっている。そのなかで、ドル円は153円台前半に高止まり。一時153.39近辺と34年ぶり高値水準を更新も、値動きは限定的。これに伴ってクロス円は下落しており、円安と円高が混在している。これまでのところ、政府・日銀の介入の動きは観測されていない。
NY市場は朝方に一気に円高となる場面が見られた。米ホワイトハウス報道官が、イスラエルが2日以内のイランから国土への攻撃に備えていると報じ、中東情勢緊迫化についての警戒感が広がった。ドル円は153円台から152円59銭まで急落。ユーロ円が163円台から162円28銭、ポンド円が191円台から190円ちょうど前後を付けるなど、円買いが進んだ。ドル円以外ではドル買いも見られ、その前から売りが出ていたユーロドルの下げが強まり1.0623を付けるなどの動きを見せた。
ドル円はユーロドルなどでのドル買いもあって、安値から切り返し、下げ分を解消する動きを見せた。ユーロドルなどが安値圏でもみ合ったことで、クロス円はドル円ほどの戻りを見せず、戻りが抑えられた。
執筆者 : MINKABU PRESS
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