為替相場まとめ7月3日から7月7日の週
3日からの週は、円買いにドル円やクロス円が下押しされた。円買いの背景には世界的な株式市場の調整の動きがある。中国や欧州の景気関連指標が弱含んだことが景気減速への警戒感を広げたほか、中国の金属輸出規制をめぐって米中が対立していることなどが株式相場を不安定化させた。米英欧など主要中銀のインフレ抑制に対する姿勢は引き続き強く、円相場にとっては金利差拡大観測からの円売り圧力はあるものの、この週はリスク回避の円買いに押される展開だった。木曜日に発表された米ADP雇用統計や米ISM非製造業景気指数が強含んだ時の市場反応も、米株安を受けた動きとなっており、リスク動向に敏感な相場の地合いが示されていた。週末の米雇用統計では非農業部門雇用者数(NFP)が20.9万人増と予想を下回った。これを受けてFRBのタカ派姿勢が緩むのではとの期待から、為替市場ではドル売りの反応が見られた。
(3日)
東京市場で、ドル円は144円台で振幅。先週末に145円台をつけたことで一端の達成感もあり、朝方は調整に144.23近辺まで下落。その後は再び上昇。中国本土株や香港株などが軒並み大幅高、日経平均の堅調な動きなどでリスク選好の円売りが入った。ドル円は144.69近辺まで上昇。午後には本邦10年債利回りが6月16日以来の0.4%台に乗せる動きが円買いにつながり144.50割れに。ユーロドルは朝から落ち着いた動き。1.0901-1.0918の17ポイントレンジとなっている。ユーロ円はドル円の反発もあり、昼前に157円80銭台まで上昇。その後は調整売りが入っている。豪ドルは明日の豪中銀金融政策会合での金利据え置き期待もあり、朝方売りが優勢となった。対ドルで0.6637、対円で96円を割り込む動きを見せたが、米中関係の改善期待が豪ドルの買いを誘い急反発。豪ドル円は96.40台を一時回復。豪ドルドルも0.6670台を付けた。
ロンドン市場は、ドルに買戻しが入っている。このあとのNY市場で米ISM製造業景気指数の発表を控えており、先週末のドル売りに調整が入る形となっている。ドル円は144円台で振幅を伴いながらの上昇。ロンドン序盤にかけて144.88近辺まで高値を伸ばしたあとは144.50台に反落するなど神経質な動き。145円台に接近すると介入警戒感が上値を抑えやすくなっているもよう。ただ、流れ自体は上向きとなっている。米債利回りの上昇傾向が下支えとなっていた。ユーロドルは1.0920付近が重くなると、一時1.0871近辺まで下落。その後1.09付近へと下げ渋っている。ポンドドルも1.27付近から一時1.2659近辺まで下落、その後の反発は限定的。この日発表されたユーロ圏製造業PMI確報値は43.4と速報値43.6から下方修正された。一方、英PMI確報値は46.2から46.5へと上方修正された。いずれも景気判断分岐点の50を下回っており、両通貨の上値は重かった。このあとのNY市場では明日の米独立記念日祝日を控えて株式・債券市場が短縮取引となる。
NY市場では、弱いISMでドル売り反応もすぐに戻す展開。ISM製造業景気指数が予想を下回る弱い内容となったことで、ドル円は一時144円ちょうど付近まで下落する場面が見られた。しかし、売りが一巡すると直ぐに買い戻しが入り、144円台後半に戻す展開。下押す気配は全くないようだ。先週末に発表になった米商品先物協会(CFTC)の建玉報告によると、ドルロングの解消が続いていることが判明も、それ以上の円ショートが拡大、投機筋の円売り越しは2018年以来の水準に拡大していた。ユーロドルは1.09付近で一進一退。6月のECB理事会や消費者物価指数(HICP)の発表を受けて概ね材料が出揃い、市場は次の材料を待っている状況のようだ。ポンドドルは方向感のない展開が続き、1.26台後半での振幅に終始。足元の英雇用統計や消費者物価指数(CPI)の予想外の強さから、英中銀はFRBやECBよりも長期に渡って利上げを続けると見込まれている。しかし、ポンドは以前ほどのポジティブな反応は見せていない。為替市場が金融政策の動向に左右されるのではなく、いずれファンダメンタルズ主導に切り替われば、ポンドは苦戦する可能性があるとの指摘が出ている。
(4日)
東京市場は、米休場を控えて落ち着いた値動き。ドル円は朝方に144.40台に軟化も、その後は144.60台まで買い戻され揉み合いに。本日は米国が独立記念日で祝日となっており、取引参加者が少ないこともあって、上下ともにやや動きにくい展開。下値しっかり感が意識されているものの、145円を超えてのドル買い円売りをためすだけの勢いが見られず。ユーロドルは1.0900前後で落ち着いた動き。朝は1.0910台での推移。その後は少し上値が重くなっているものの、値幅は抑えられている。豪中銀金融政策会合は大方の予想通り政策金利を据え置いた。発表後は豪ドル売りとなった。豪ドルドルは0.6680前後から0.6640台まで軟化。豪ドル円も96.70前後から96.00台まで一時下落。先週の豪消費者物価指数発表までは利上げ期待が大勢を占め、直近でも一部で利上げ期待が残っていたようだ。
ロンドン市場は、方向感に欠ける取引となっている。欧州株はほぼ横ばいで取引を開始したあと、米株先物が小幅調整に押されたことを受けて、上値が次第に重くなっている。ドル円は144.60台から一時144.30付近へと軟化。ユーロドルは1.0815近辺に買われたあとは1.0890付近へと軟化。ユーロ円は157円台後半から157.30付近に軟化。一方で、ポンドは堅調に推移。対ドルでは1.27台割れから1.2710台へ、ポンド円は183.20台に下押しされるも183.60台へと反発している。ユーロ売り・ポンド買いのフローが持ち込まれている。ただ、目立った材料はみられず、NY休場を前にポジション調整が入る格好となっている。
NY市場は米独立記念日のため債券・株式市場が休場。
(5日)
東京市場は、材料難で値動きは限定的。ドル円は144円台での推移が続き、144.40付近から144.60台までの値動き。前日と同様の水準にとどまった。ユーロドルは朝方1.0890台まで上昇も、その後は1.0870割れと先週金曜日以来の安値を付けた。こちらも様子見ムードが強い中、値幅自体は小さいものの、やや上値が重い印象。ユーロ円は157円台前半での推移。158円ちょうど前後が重くなっている。人民元は中国人民銀行による対ドル基準値のドル安設定などで、7.21台を付けるなど朝はドル安元高となった。しかし、中国財新PMIが弱かったことで、一転して元売りに。午後も7.23台後半のドル高・人民元安値圏でのもみ合いが続いた。
ロンドン市場は、リスク警戒の円買いが優勢。中国財新非製造業PMIに続いて、欧州時間にはスウェーデン、スペイン、イタリアなどの非製造業PMIが悪化した。ユーロ圏非製造業PMI確報値も下方改定されている。ナーゲル独連銀総裁は追加利上げの必要性を繰り返した。一方で、ECB消費者インフレ期待は前回から低下している。ビスコ伊中銀総裁は、イタリアのGDP回復は鈍化しているとして、利上げに慎重な姿勢を示した。市場では次第に利上げ継続の負の面が意識されてきている印象。ドル円144.70台まで買われていたが、ロンドン時間に入ると売りに転じて、安値を144.20付近に広げた。ユーロ円は157.70台まで買いが先行も、一連のPMIの悪化で反転下落、安値を156.80近辺に更新。ポンド円は184円付近までの買いで上値を止められると、183.15近辺まで安値を広げた。リスク動向に敏感な豪ドル、NZドル、カナダドルなども円買い圧力を受けて下落した。ドル相場はややドル買いが優勢だが、ユーロドルは1.08台後半から1.09台乗せでの振幅。ポンドドルは1.27台割れから1.27台前半での振幅。神経質な値動きも方向性には欠けている。円相場主導の展開となっている。
NY市場では、米FOMC議事録への反応は限定的だった。午後にFOMC議事録が公表され、FOMC委員のほぼ全員が一時停止を適切または容認できると判断した一方、大半の委員が年内の追加利上げを予想していたことが明らかになった。タカ派な利上げ一時停止だったことを確認する内容ではあるが、目新しい内容もない。一部の委員は利上げを支持していた。タイトな労働市場のほか、インフレが2%目標に向かって減速している兆しが比較的乏しいことを理由に挙げていた。為替市場は発表直後はややドル売りの反応を見せたものの、次第にドル買いに転じている。ただ、大きな反応には至っていない。ドル円は144円台での上下動が続いている。次第に膠着感が強まってきているが、週末の米雇用統計を始めとした米経済指標を確認したい意向が強いものと見られる。ユーロドルは1.08台後半で上値重く推移。ユーロドルのボラティリティーは6%台に低下しているが、今後の変動を警戒する声も出始めていた。ポンドドルは1.27付近で一進一退。今週のポンドは主要なイベントもなく、米経済指標を受けたドルの反応に左右される展開も予想されている。
(6日)
東京市場は、リスク回避の円買いが強まった。ドル円は前日海外市場で144円ちょうど付近まで下落も、その後は144円台後半に買い戻されていた。東京市場では、日経平均やアジア株の軟調な推移を背景に再び売りが強まった。午後には節目の144円を割り込み、前日比1円近いドル安・円高の143.68近辺まで下値を広げた。ユーロ円も午後には156円台割れから155.85付近まで下落。ポンド円は182.57近辺に下落し、約1週間ぶりの安値水準となった。ユーロドルは午後に6月15日以来3週間ぶりの安値となる1.0834付近まで弱含んだあと、下げを帳消しにしている。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。東京市場での円買いの動きが一服するなかで、ドル円単体だったドル売りの動きは豪ドル、ユーロ、ポンドなどその他主要通貨にも広がっている。このあとのNY市場ではADP雇用統計、新規失業保険申請件数、非製造業PMI、ISM非製造業景気指数、貿易統計など一連の米経済統計の発表を控えており、前日のドル高に調整が入る面があったようだ。欧州株や米株先物は軟調に推移。英国では根強いインフレ圧力が追加利上げ観測を高めている。英中銀調査では1年先のインフレ率予測がやや引き下げられる一方で、3年先は引き上げられている。市場では英中銀政策金利が6.5%まで引き上げられることを織り込んだ。英国とドイツの建設業PMIはいずれも過去最低水準に準じる低水準となった。度重なる利上げの悪影響がみられ始めた面も指摘される。ただ、ベイリー英中銀総裁はインフレを抑え込むこと最重要課題との姿勢を示している。ポンドドルは1.27付近から1.2780付近に上伸。ポンド円は182.50付近の安値から183円台後半へ上伸。ユーロドルは1.08台前半から1.0890付近に上昇。ユーロ円は156円台割れから買われて156.70台まで買い戻されている。ドル円はロンドン序盤には143.56近辺まで安値を広げた。その後は一時144円台を回復も再び143円台後半と落ち着かない値動きに。
NY市場では、ドル買いが強まった。ADP雇用統計で雇用者数が予想外の増加となったことや、ISM非製造業景気指数も予想を上回り、FRBのタカ派姿勢を再確認する内容だったことで、米国債利回りの上昇と伴にドル買いが優勢となっている。東京・ロンドン市場でドル円は売りが強まり、143.50台まで下落したが、強い米指標結果を受けて144.65付近まで反発する場面がみられた。今日の強い指標を受けて市場では45%程度の確率で年内あと2回の利上げを織り込んでいる。ロンドン時間に買われていたユーロドルは1.09付近から1.08台前半まで一時下落。その後は1.08台後半に落ち着いた。ポンドドルはロンドン時間に1.27台後半まで上伸する場面があったが、強い米指標で1.26台後半まで急反落。その後は1.27台前半まで買い戻された。ポンド相場は強い利上げ期待と景気後退の可能性の狭間で神経質に売買が交錯している。
(7日)
東京市場は、円買いが優勢。ドル円は朝方に143.80台に下落したあと144.20近辺まで買われる神経質な値動きをみせた。その後は日経平均やアジア株などの下落がリスク警戒の円買いにつながり上値の重い展開となった。午後には144円付近での揉み合いを下放れて、前日安値を下回ると安値を143.53近辺まで広げた。ユーロ円も156.90台を高値に156.20台まで下落。ポンド円は183.50台から182.80台に下落。市場の期待する中国の景気支援策について、中国首相が的を絞った政策を実施と発言も、具体的な案に触れず、期待後退の動きが広がったことがリスク警戒につながった。
ロンドン市場は、リスク警戒の円買いが先行。欧州株や米株先物の下落とともに、円買い圧力が広がった。ドル円はロンドン序盤には142.88近辺まで安値を広げた。しかし、注目の米雇用統計発表を控えて欧州株の下げは一服、米債利回りが再び上昇となると143円台を回復。戻りは鈍いもののクロス円も下げ一服。ユーロ円は155.44近辺を安値に156円付近へ、ポンド円は182.02近辺を安値に182.円台後半へと下げ渋っている。ただ、東京市場からの下げを戻す動きには至っていない。ユーロドルは1.0870付近から1.09ちょうど付近での上下動。ポンドドルは1.2726近辺に下げたあとは1.2770付近に上昇と小高い。対ユーロでもポンド買いとなっている。前日に6.5%までの英政策金利上昇が市場に織り込まれたこともあって、ポンドには買い圧力がかかってるようだ。一方、ECB高官の見方は分かれている。デギンドス副総裁は、データ次第としながらも我々の仕事はまだ終わっていないとタカ派姿勢を堅持。一方、ストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁は、物価と賃金のスパイラルはまだ発生していない、として金融政策の慎重さを求めた。
NY市場でドル円はNY時間に入って戻り売りを加速させ、142円台前半まで下げ足を速めた。本日は高値から一気に200ポイント超下落し、本日142.60付近に来ている21日線も下抜けている。この日は米雇用統計が発表され、非農業部門雇用者数(NFP)が20.9万人増と予想を下回った。これを受けてFRBのタカ派姿勢が緩むのではとの期待から、為替市場ではドル売りの反応が見られた。

執筆者 : MINKABU PRESS
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