米運輸株の下落は経済弱体化の予兆
米株式市場では米運輸株のパフォーマンスが冴えない。運輸株は景気敏感株の位置づけもあり、潜在的な景気後退に対する投資家の懸念の高まりを反映しているとも言われる。航空、鉄道、トラック輸送など米大手20社を対象にしたダウ・ジョーンズ運輸株平均は、2月初旬以来、ダウ平均をアンダーパフォームしている。商品、資材、旅行への需要が鈍化する景気後退期には、より早く売られることも多い。
市場からは、投資家は米運輸業界に否定的な見方をしているが、最終的にはその正しさが証明されると思うといった声も聞かれる。3月の米トラック貨物輸送量は、パンデミック開始以来最も減少し、貨物が不況に陥っていることを明確に示している。
米景気後退への懸念は最近になってさらに強まっている。先月のSVBの破綻や地銀へのストレスの高まりは、銀行の融資に対する潜在的なひずみや、企業の雇用意欲、家計の消費意欲に対する不安を駆り立てた。一方で高インフレの粘着性への懸念が想定以上に根強く残っており、足元ではFRBが市場の想定以上に利上げを行うのではとの見方が広がっている。
月曜日の引け後にトラック輸送大手のJBハント<JBHT>が1-3月期(第1四半期)の決算を発表していた。決算発表後の株価はまちまちといった反応だったが、決算自体は需要低迷に直面していることを示唆していた。シンプソンCEOは「われわれは厳しい運賃環境にあり、インフレのコスト圧力に直面し続けている一方で、運賃にはデフレ圧力がある。簡単に言えば、われわれは貨物不況に陥っている」と述べていた。
投資家やアナリストの中には、景気後退が間近に迫っているという考え方に異を唱える人もいる。労働市場と個人消費が底堅さを保ってきたことが大きな背景と考えられる。ただ、少なくとも最近の運輸株の下落はそれを物語ってはいない。
参照銘柄
エクスペディターズ<EXPD>
ハブ<HUBG>
JBハント<JBHT>
ランドスター<LSTR>
ライダー・システム<R>
参考:ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
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執筆者 : MINKABU PRESS
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