為替相場まとめ11月10日から11月14日の週
10日からの週は、米政府機関閉鎖の解除期待が相場を牽引した。週初からつなぎ予算成立への期待がリスク警戒感を後退させ、円売りを誘った。11日の米上院可決、13日の米下院可決と進展するにつれてリスク選好ムードが強まり、週全体を通じた円安の流れを決定づけた。この円安の背景には、日米の金融政策の方向性がある。市場ではFRBの利下げ期待が後退する一方、日銀の早期利上げ観測も後退した。この「日米金利差の縮小期待の後退」が、低金利の円を売って高金利通貨を買う「円キャリー取引」を活発化させ、ドル円を155円台(2月以来の高値)まで押し上げ、ユーロ円やスイス円は史上最高値を更新した。一方、英国の固有材料はポンド売りの要因となった。11日に発表された英雇用統計が悪化したことで、英中銀の12月利下げ観測が強まり、ポンドは急落した。英GDPが弱含んだことも加わった。また、英国内の政治不安に関する報道や、秋季予算案を控えて英首相と財務相が増税方針を取り下げと報じられたことなどがポンドの上値を重くした。一方、米経済指標については、週次のADP雇用統計の悪化が一時的なドル売りを誘った程度で、影響は限定的だった。週末にかけては調整の動きが入った。一連の米金融当局者から12月利下げについて慎重な見方が示されたことが、米株式市場の調整売りを促した。今後、政府機関再開を受けた米主要経済指標の発表日程が注目される。
(10日)
東京市場では、米連邦政府機関の閉鎖解除期待からリスク警戒感が後退し、円売りが優勢となった。共和党上院幹部がつなぎ予算成立の見通しを示したことでドル買い・円売りが進行。ドル円は153.36付近で始まり、一時154円台に乗せ、午後には154.07付近まで上昇した。リスク選好ムードでクロス円も軒並み上昇。ユーロ円は177.20前後から178.09付近へ、ポンド円は201.50前後から202.62付近まで上昇した。一方、ユーロドルは、米政府機関閉鎖回避期待によるドル買いと、対円でのユーロ買いが交錯し、1.15ドル台半ばでのもみ合いとなった。
ロンドン市場では円売りが優勢。米上院でつなぎ予算案の動議が可決されたことを受け、米政府機関閉鎖の解除期待が高まった。欧州株や米株先物が堅調に推移し、リスク選好ムードが強まったことが円安の主因。また、日銀の早期利上げ観測が後退し、円キャリー取引が強まりやすい状況も背景にある。ドル円は154円台を回復し、154.25付近まで高値を伸ばした。ユーロ円は178.45付近へ、ポンド円は一時203円台に乗せるなど、クロス円も堅調だった。一方、ユーロドルは1.15ドル台後半、ポンドドルは1.31ドル台後半を軸に売買が交錯し、ドル相場自体の方向感は限定的だった。
NY市場では、41日目を迎えた米政府機関閉鎖が終了に向かうとの期待から、ドル円は再び154円台を回復した。米上院が一部民主党の賛成を得て、来年1月30日までのつなぎ予算案を含む手続き上の採決を可決し、大きく前進した。ドル円は11月以降、154円台半ばで上値を抑えられており、155円を試す展開になるか注目される。一方、ユーロドルは1.15ドル台で上下動したが、下げトレンドが継続。ユーロ円は178円台半ばまで上昇した。ポンドドルはロンドン時間に1.32ドル台を試す場面もあったが、NY時間には1.31ドル台半ばに伸び悩んだ。
(11日)
東京市場では、米上院が1月30日までのつなぎ予算案を本会議で可決したことを受け、ドル買い円売りが先行。ドル円は直近高値154.48付近をわずかに更新し、154.49付近(今年2月以来のドル高・円安)を付けた。ただ、政府機関再開後も経済指標の発表には時間がかかるとの見方や、日経平均の調整もあり、午後は154.09付近まで押し戻されるなど上値は重かった。ユーロ円は円売りで一時178.40付近まで上昇したが、その後調整。ポンド円は204.28付近まで上昇後、高値圏でもみ合った。ユーロドルやポンドドルは、海外市場のレンジ内での狭い値動きに終始した。
ロンドン市場では、英雇用統計の弱含みを受けてポンド売りが目立った。7-9月期の英ILO失業率が5.0%に上昇し、賃金の伸びも鈍化したことで、12月の英中銀利下げ観測が高まった。ポンドドルは1.31台後半から1.3117付近まで急落。ポンド円も203円台から202.34付近まで下落した。このポンド売りを受け、ユーロは対ポンドで上昇し、対ドルでも1.15台後半(1.1578付近)へ、対円でも178.57付近へと買われた。一方、ドル円は154円台前半でのもみ合いが続き、動意薄。NY市場がベテランズデーで米債券市場が休場となるため、手掛かり難だった。
NY市場では、週次のADP民間雇用統計で雇用者数の減少が示されたことから、一時ドル売りが強まり、ドル円は153.65付近まで下落した。しかし、米政府機関閉鎖の終結が近いとの楽観論や根強い円安地合いに支えられ、まもなく154円台を回復した。ただ、11月以降の上値抵抗となっている154円台半ばは依然として重い。経済指標の発表再開が待たれるが、10月分データは12月FOMCに間に合わない可能性も指摘された。ユーロドルは買い戻され、一時1.16ドル台を回復。ユーロ円はユーロ発足以来の高値に並ぶ178.75付近まで上昇した。
(12日)
東京市場では円安が進行。米下院でつなぎ予算案が日本時間13日早朝に採決され、政府機関閉鎖が解除される見通しとなったことで、リスク警戒感が後退した。ドル円は、上値を抑えていた154.50前後を突破し、ストップロスを巻き込んで154.79付近(2月12日以来の高値)まで上昇した。クロス円も軒並み上昇し、ユーロ円は史上初となる179円台に乗せ、179.15付近を付けた。スイス円も193.28付近と史上最高値を更新。ポンド円も203.27付近まで上昇した。一方、ユーロドルはドル高とユーロ高が相殺され、1.15ドル台後半での小幅なレンジ取引に終始した。
ロンドン市場でも、リスク選好の円売りが継続した。米下院でのつなぎ予算案採決(日本時間13日早朝)を控え、市場は可決・成立を織り込む形で円が全面的に売られた。ドル円は155円の大台に迫る154.90付近まで上昇。直近の上値抵抗だった154.50付近を上抜けたことで円売りに勢いがついた。ユーロ円も179.29付近まで買われ、史上最高値を更新した。一方、ユーロドルは1.15ドル台後半で方向感に欠ける展開。ポンドは、英労働党スターマー首相の解任画策との報道で一時売られ、ポンドドルは1.3111付近まで下落した。
NY市場では、ドル円が一時155円台を付け、2月以来の高値となった。155円付近ではオプション関連の売りも観測されて伸び悩んだが、上昇期待は根強い。市場ではFRBの12月利下げ期待が後退する一方、日銀は利上げに慎重との見方から、日米金利差縮小が想定より遅れるとの思惑が円キャリー取引を支えている。米政府機関閉鎖は終結に向かっているが、ホワイトハウス報道官は10月分の米雇用統計とCPIが発表されない可能性が高いと述べた。ユーロ円は179円台半ばまで上昇し、史上最高値を更新した。
(13日)
東京市場では、米下院がつなぎ予算案を可決し、政府機関閉鎖解除が決定したことを受け、リスク選好の円売りが先行。ドル円は海外時間に続き、一時155.01付近と二日続けて155円台を付けた。ただ、前日の高値155.04付近を超えられず、材料出尽くし感もあって154.63付近まで調整する場面もあった。しかし、押し目買い意欲は強く、午後に再び155.00前後まで上昇。日米金利差縮小の期待後退による円キャリー取引が相場を支えている。ユーロ円は180円手前で上値が重く、179円台半ばでの推移。ユーロドルは1.15ドル台後半で小動きだった。
ロンドン市場はドル売りが先行し、ユーロドルは1.16台、ポンドドルは1.31台後半へ上昇、ドル円は154円台前半へ反落した。その後ドル売りは一服し、ドル円は154円台後半へ戻し、ユーロドルは1.16近くへ小反落した。米10年債利回りは4.0%台後半で上下動。欧州株はまちまち、米株先物はマイナス圏で調整含みとなっている。米つなぎ予算成立で一段落し、今後は政府機関閉鎖の経済影響が焦点となる。再開される米経済指標の確認が必要だが、ホワイトハウスは10月の雇用やインフレ指標を発表できない可能性を指摘。今後の指標日程や9月米雇用統計の発表が待たれる。
NY市場はドル安優勢。米政府機関は再開したが、政府閉鎖による経済的打撃への懸念からリスク回避ムードが強まった。FOMC委員は利下げに慎重姿勢だが、12月利下げ確率は50%を下回っている。10月の米雇用統計は失業率が公表されない可能性が指摘された。ドル円は155円の抵抗が重く、ロング勢の利益確定売りに押されて一時154.15円へ下落。一方、ユーロドルは1.16ドル台半ばへ上昇。ECBが利下げを終了したのに対し、FRBは追加利下げ観測があるため、来年1.22ドルへの上昇予測も出ている。ユーロ円は179円台後半で史上最高値を更新した。ポンドドルは上値が重い。第3四半期英GDPが予想を下回り、12月の英利下げ確率が85%に達したことが影響した。ただ、ポンド円はドル円の下落に反し204円台へ上昇する場面もあった。
(14日)
東京市場では、ポンド以外は小動きにとどまった。ドル円は東京朝方にNY市場からの反発の流れで154.74円まで上昇したが、その後は154円半ばで膠着。155円台でのドル買いには慎重さがみられている。ユーロドルは海外市場のドル安で1.16台を回復。レンジが切り上がった印象で底堅く推移。ユーロ円も179円台後半で堅調地合いを維持している。一方、ポンドは急落。英FT紙が「英与党が示唆していた所得増税を断念した」と報じたことが材料視された。増税をしないとの公約に違反するとの批判はあったが、市場は増税断念による財源不足を懸念。ポンドドルは1.3199から1.3130台へ急落し安値圏で推移。ポンド円も204円台から一時202円台まで連れ安となった。
ロンドン市場は、静かな取引ながらややドル高で推移。ドル円は東京市場からのレンジ(154.31-154.74)内で動き、足元は154.70付近と小幅なドル高水準となっている。ユーロドルも1.1620ドルへじり安となっているが、値動きは限定的。一方、ポンドドルは英予算案をめぐる報道に神経質に反応した。財政見通し改善で所得税増税は回避できるとの見通しと、代替的な施策によって実質的な増税措置が検討されるとの内容が伝わり、1.3108ドルへ下落後、一時1.3200ドルへ急反発。しかし買いは続かず、再び1.3150台へ下げるなど、不安定に振幅し上値は重い。市場は主要な米経済指標の発表待ちのムードが強く、米株先物や欧州株が軟調に推移しており、週末の調整圧力も意識されている。
NY市場で、ドル円は下に往って来いの展開。序盤はドル安が優勢となり、ドル円も153円台に下落。前日や前々日の動きで155円台の上値抵抗が強いことが確認され、市場にリスク回避の雰囲気が流れていたこともあり、ドル円もロングの調整が出ていた。しかし、円キャリー取引への期待は根強く、下値では押し目を拾う動きも見られていた。そのような中、次第にドル円は買い戻され、朝方の下げを取り戻す展開。米株式市場でIT・ハイテク株に買戻しが入り、ナスダックが大幅安からプラスに転じる中、ドル円も下げ渋っている。
執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。