【これからの見通し】ドル相場の方向性は混とんと、円高リスクを警戒へ
昨日発表された8月米消費者物価指数は前年比+5.3%など引き続き高水準だったが、前月比の伸び鈍化などピークアウト感もみられていた。発表後の初動は米債利回りの急低下とともに、ドル売りの動きだった。
しかし、NY市場が深まるにつれてリスク回避の動きが前面に押し出され、米株安とともに円高方向に流れが転じた。ドル円は109円台後半で上値が重いままだが、ユーロドル、ポンドドルなどでは米消費者物価発表直後の上昇を消して、ドル高方向へと流れが転換した。
今日の東京市場でもその影響は残っており、総じて株安となるなかで、ドル円やクロス円が軟調に推移している。この後のロンドン・NY市場においても、ドル相場の方向性が混とんとするなかで、株式市場動向をにらんだ円高圧力が気がかりだ。
昨日の米消費者物価指数の結果を受けて、9月22日の米FOMC会合でのテーパリング開始宣言は見送られるとの見方が広がっている。一方で、年内の開始についての見方は根強く残っており、11月との見通しが有力になっている。
個人的には今回の数字だけで消費者物価の伸びがピークアウトしたと決めつけてよいものかどうか疑問がある。多少の水準低下となったとしても、依然として高水準のインフレであることは事実だ。来月の米消費者物価指数にも引き続き注目したい。
一方で、新型コロナの不確定要素があるだけに、FOMCはテーパリング開始宣言を行うにしても、なんらかのハト派色は残しそうだ。株式市場が崩れないように細心の注意が払われるだろう。
この後の海外市場で発表される経済指標は、ユーロ圏鉱工業生産指数(7月)、南アフリカ実質小売売上高(7月)、米MBA住宅ローン申請指数(10日までの週)、米ニューヨーク連銀製造業景気指数(9月)、米輸入物価指数(8月)、米鉱工業生産指数・設備稼働率(8月)、カナダ消費者物価指数(8月)など。
発言イベント関連では、シュナーベルECB理事のECB債券マーケットコンタクトグループ年次オンライン会議での挨拶、レーンECBチーフエコノミストのECB戦略レビューについてウェブ講演などが予定されている。原油相場関連では米週間石油在庫統計が発表される。
minkabu PRESS編集部 松木秀明
執筆者 : MINKABU PRESS
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