ドル円は110円台後半での推移が続く 米国債利回り上昇がサポート=NY為替後半
NY時間の終盤に入ってドル円は110円台後半での推移が続いている。きょうのNY為替市場でドル円は戻り売りが先行し、一時110.50円近辺まで下落する場面がみられた。朝方発表のPCEデフレータが予想範囲内に留まったことが売りを誘った面もあったようだ。しかし、ロンドンフィキシングにかけて買い戻しが出て110円台後半まで戻している。NY時間に入って米国債利回りの上昇が強まり、ドル買いがドル円を押し上げた。ただ、111円台に慎重な雰囲気は継続している。
米国債利回りの上昇がドル円をサポートしている格好となっているが、米10年債は一時1.54%台まで上昇した。6月期末が接近しており、ポジションの巻き戻しとの見方がある一方で、レートロックに伴うヘッジ売りで利回りは上昇しているとの指摘も聞かれる。レートロックとは大型の起債がある際に、利回り上昇に備えたヘッジとして米国債などが売られること。来週はフランスやスペイン、そして、EUの長期ゾーンの国債の入札が予定されている。
きょうはミシガン大消費者信頼感指数の確報値が発表になっていたが、その中で1年先のインフレ期待が前回の4.6%から4.2%に低下していた。市場からは、インフレの急上昇は一時的というFRBのメッセージが一般消費者にも広まっている証拠との見方も出ていた。消費者は一時的なインフレ上昇とのFRBの見方に賛同しているという。また、この先のFRBの緩和解除予想も反映している可能性があるという。経済の力強さの高まりで、消費者のほぼ4分の3が、今後1年の間に金利上昇を予想していることを意味するという。
ユーロドルは序盤は緩やかな買い戻しが見られ、1.1975ドル付近まで一時上昇していたものの、次第にドル買いが優勢となっていることから、1.1940ドル付近に伸び悩んでいる。
ただ、FOMC後の急速な下げも落ち着いて来ており、ユーロドルも買い戻しが入っている。しかし、戻りは鈍い印象で、1.20ドルにかけての売り圧力が強いほか、買いのモメンタムもさほど強まらず、動意薄ではある。FRBがタカ派に傾斜し始めた中で、ECBは引き続き、ハト派スタンスを堅持している。市場では、ECBが9月にも示すであろう戦略見直しは、正常化が依然として遠い道のりにあることを強調するはずだとの声も出ている。FRBとECBの金融政策スタンスへの格差がユーロの上値を重くしているようだ。
2020年3月以降、ユーロドルは上昇波が続いている。それに伴って長期スタンスの投資家もロングポジションを大量に築き上げてきた。しかし、先週のFOMCを受けて、それらの投資家もロングポジションを一部解消せざるを得なかったようだ。それがボラティリティを高めていたとも言われているが、次第にポジション解消の動きも一段落し、ボラティリティも低下している。ただ、築き上げられたロングポジションは依然として大量に残っているという。ユーロドルは調整色を強めてはいるものの、まだ、中長期的には上昇トレンドにある。長期スタンスの投資家からすれば、まだ我慢できる範囲だという。それらの投資家がポジションを解消せざるを得ないポイントとしては、1.17ドルや1.1050ドルといった水準が想定されるとの指摘も聞かれる。
ポンドドルは1.38ドル台に下落。前日の英中銀金融政策委員会(MPC)後の安値付近での推移が続いており、ポンドの上値は重くなっている。市場は前日の英MPCでのタカ派シフトを期待していたが、資産購入枠の縮小を主張したのはホールデン委員1人だけで、その他の8名のメンバーは政策の据え置きを主張していた。市場の期待は完全に外された格好となり、ポンドは失望売りが強まっている。
しかし、英MPC後の下げは限定的になるとの見方も出ている。タカ派への変化は実現しなかったが、英中銀は確かにその方向に進んでいるという。英中銀は第2四半期の成長と今年のインフレの両方の見通しを上方修正していたが、それは中期的なインフレ期待に影響を与える可能性があるとしている。次回は8月5日にMPCが予定されているが、そこでは金融政策報告も公表され、最新の予測が公表される。それと伴に資産購入枠縮小やガイダンス変更を実施せざるを得なく可能性があると指摘した。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

執筆者 : MINKABU PRESS
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