今週のまとめ10月28日から11月1日の週
28日からの週は、リスク警戒感が再燃した。米FOMCをはじめとして雇用統計など米国関連の経済イベントが目白押しの週だったが、米中貿易戦争をめぐる新たな報道に市場に関心が引き戻された格好。中国がトランプ米大統領との長期的な通商合意について疑問視、との関係者発言が報じられたことがきっかけとなり、市場は株安・円高とリスク回避の動きに転じた。米FOMCでは事前予想通り0.25%利下げが発表された。今後の見通しについては、追加緩和を示唆する文言が削除されており、いったんドル買いが強まる場面があった。しかし、今後の経済状況次第では利下げの可能性がある、としており、ドル売りの動きに転じた。日銀は決定会合でフォワードガイダンスを変更、緩和の方向性をより明確化した。ただ、市場は反応薄だった。ドル円は109円台から108円割れへ、ユーロドルは1.10台後半から1.11台後半へ、ポンドドルは1.28台前半から1.29台後半へといずれもドル売り方向に動いた。クロス円は週前半は堅調だったが、米中貿易関連のリスク警戒で反落した。10月の米雇用統計は雇用者数の伸びが12.8万人と事前予想を上回り、ドル買いの反応がみられた。前回値も上方修正された。一方で、失業率は3.6%に上昇した。市場では、米利下げ休止の裏付けとなる結果との見方もあった。
(28日)
東京市場は、小動き。ドル円は108円台後半で取引されており、レンジは12銭にとどまっている。今週半ばからの米国の経済指標・イベント予定(FOMC、第3四半期GDP速報値、雇用統計、ISM製造業景気指数など)を前に、週明けは様子見ムードが広がった。日経平均が6営業日続伸も、109円手前の売りを崩す勢いには欠けている。ユーロやポンドも小動き。ポンドはこの後、英下院で解散総選挙動議が採決される見込みも、否決見通しがほぼ確定的(任期固定法により三分の2の賛成が必要)で、波乱要素は少ない。
ロンドン市場は、ややドル売りが優勢。ポンドドルやユーロドルが買われたほか、豪ドル/ドルも堅調な推移。ドル円は108円台後半で弱保ち合い。先週末までのドル高の動きに調整が入る格好。序盤はポンド買いが先行した。フランスが英国のEU離脱期限を来年1月31日まで延期することに合意したとの報道がきっかけ。その後、EU大統領もこれを確認した。ただ、ポンド買いは続かず対ドルで1.28台前半から半ば、対円で139円半ばから後半にかけての振幅にとどまっている。この間に、ユーロドルはじり高の動きを続けており、一時1.11台を回復、ユーロ円は120円台後半へと小高い動き。豪ドルは対ドルで0.68台前半、対円で74円台前半で買いが優勢。欧州株は前週末終値を挟んだ小動き。米債利回りはやや上昇。リスク動向は落ち着いている。
NY市場は、株高・円安の動き。ドル円は109円台に一時上昇。米株式市場でS&P500指数が最高値を更新するなど、リスク選好の動きが円売り圧力に。トランプ大統領が、米中貿易協議が予定より少し早く進んでいると述べ、11月にチリで開催されるAPEC首脳会合の際の米中首脳会談での部分的合意の署名に自信を示した。米企業決算結果もまずまず。ユーロドルは1.10台に軟化したあと、1.11近辺に戻した。ポンドは買い戻しが優勢。ポンド円は140円台を回復した。ジョンソン英首相の総選挙動議は、下院で3分の2の賛成を得られず否決された。ただ、あすにも12月12日の総選挙を求める新法案を提出する意向を示した。自由民主党やスコットランド国民党などに働きかけるもよう。
(29日)
東京市場は、ドル円が小高い動き。一時109.07レベルと、前日高値109.04レベルをわずかながら更新した。もっとも今日・明日のFOMC、明日の米第3四半期GDP速報値などを前に、積極的なドル買いにも慎重姿勢が見られ、上値追いもそこまで。株高の動きが続く中で、下値はしっかりも高値圏もみ合いに。ユーロドルは狭いレンジでもみ合い、若干のドル高基調も値幅は12ポイント。ポンドは、EU離脱問題をにらむ展開で、午前中に少し値を落とす場面も午後は様子見ムード。
ロンドン市場は、ポンド相場が振幅した。序盤は欧州株安などを受けて円買い・ドル買いの動きが先行。しかし、各英報道機関から、コービン英労働党党首が総選挙法案支持へ、合意なき離脱リスクが遠のく、と報じられたことでポンド買いが強まり、円安・ドル安方向に押し戻された。ドル円、クロス円は下に往って来いとなった。ポンドドルは1.28台で、ポンド円は139円台半ばから140円台前半で振幅。ユーロドルは1.10台後半、ユーロ円は120円台後半で振幅後、対ポンドでのユーロ売り圧力が重石に。ドル円は108.80-90での小動き。前日のジョンソン英首相の総選挙動議は英議会で否決されたが、きょうは再び総選挙法案の採決が実施される予定。英保守党がスコットランド独立党や自由民主党と協調して法案を提出しており、これに労働党も支持を表明したことで、12月の早期総選挙にゴーサインが出る可能性が高まった。
NY市場は、材料多くも値動きは限定的だった。ドル円は109円手前での小動き。明日の米FOMCの結果発表待ちのムード。一部報道で、チリでのAPECでの米中首脳会談では通商協議の部分合意について署名は無い可能性が指摘された。ドル円は108.70台まで下落したが、すぐに値を戻した。ユーロドルは1.11台を回復。ドラギECB総裁は、退任を前に独首相、仏大統領などに対して財政政策の必要性を訴えかけた。独財政刺激策への期待が高まった。ポンドドルは1.28台前半から1.29手前へと反発。最大野党の労働党がきょう、これまでの姿勢を一転させ解散総選挙を支持する方針を表明した。これにより12月の総選挙の可能性が一気に高まり、NY時間の終盤になって英議会は12月12日の早期総選挙の実施を承認した。
(30日)
東京市場は、様子見ムード。ドル円のレンジはわずか9銭にとどまった。ユーロドルなども目立った動きを見せていない。米FOMCの結果発表や、米GDP速報値、米ADP雇用統計などのイベントを控えて相場は膠着した。前日の英下院で12月12日の総選挙で合意したが、ポンド相場も静かな展開だった。その中では、トルコリラ売りが目立った。米下院がトルコに対する制裁措置を発表したことが背景。ドルリラはシリア停戦などを受けてのドル安リラ高の動きが今月半ばから続いていたが、足元では下げ止まっており、今後の反動につながる可能性が指摘されている。
ロンドン市場は、小幅の値動きにとどまった。NY市場で予定されている米ADP雇用統計、GDP速報値、FOMCの結果発表およびパウエルFRB議長会見などの注目イベントを控えており、様子見ムードが広がった。欧州株や米株先物、米債利回りなど方向性に欠ける取引が続いている。ドル円は108.80-90レベルで膠着。ユーロドルやポンドドルが小幅に高値を広げており、ややドル売りの動きが優勢だが、特段のドル売り材料は出ていない。ユーロドルは1.1127レベル、ポンドドルは1.2906レベルまで一時上昇した。ユーロ円は121.12レベル、ポンド円は140.48レベルまで買われる場面があった。いずれも値幅は数十ポイント程度と小動き。米FOMCでは0.25%利下げが市場に織り込み済みとなっている。焦点はパウエル議長会見で、今後も追加利下げが続くのか、あるいはいったん打ち止めとなるのか、いずれかが示唆されることが期待されている。
NY市場は、FOMCの結果発表を受けてドル相場が振幅した。政策金利は予想通りに0.25%の利下げを発表した。一方、声明では「適切に行動」との文言を削除し、「不確実性は残る。適切な金利の道筋を精査」と言及していた。2名のFOMCメンバーが据え置きを主張したこともあり、その後のパウエルFRB議長の会見でも「いまの政策スタンスが適切であり続ける可能性」と述べたことで市場は、12月の追加緩和の可能性をやや後退させ、為替市場はドル買いの反応が見られた。しかし、買い一巡後は中立スタンスとの見方が次第に強まり、今度はドルの戻り売りが強まった。非常事態の場合には、FRBは対応することを示唆しているとの見方も出ている模様。ドル円は109.30円近辺まで一時上昇し、200日線を上回っていたが、維持できずに108円台後半に戻す展開。ユーロドルは一時1.11台割れも、その後は1.11台半ばまで上昇した。米株は上昇しており、ユーロ円は121円近辺から121円台半ばへと上昇。米GDP速報値は予想を上回ったが、前回からはやや鈍化。ADP雇用統計は予想を上回ったが、前回値は下方修正された。カナダ中銀は予想通り政策金利を据え置いたが、声明で「政策金利は刺激的」との文言を削除しており、「カナダ経済の回復力が益々試される」と言及。ハト派の内容でカナダドルは売られた。
(31日)
東京市場は、ドル円がやや上値重く推移。朝方に108.80台から108.50台まで軟化し、その後の戻りは鈍く、弱保ち合いとなっている。ユーロドルが1.1150近辺から1.1170台を付けるなど、ドルはほぼ全面安に。前日の米FOMC後のドル売り圧力が継続する形となった。そうした中、特に対ドルでの買いが目立ったのがオセアニア通貨。同地域大手金融機関のウェストパックが11月のNZ中銀の政策金利見通しを利下げから据え置きに変更したことがきっかけでNZドルが買われた。米FOMCの利下げ打ち止めで世界的な利下げ合戦も一服との期待感もあり、来年2月の豪中銀の利下げ期待も後退した。豪ドル/ドルは0.69台を回復、NZドル/ドルは0.64台乗せへと上昇。
ロンドン市場は、円買いが優勢。リスク警戒ムードに転じている。北朝鮮の飛翔体発射の報道には反応薄だったマーケットだが、中国がトランプ米大統領との長期的な通商合意について疑問視、との関係者発言に反応した。欧州株や米株先物が下落に転じ、米債利回りも前日比マイナス圏へと低下。米FOMCを通過して、市場の関心があすの米雇用統計に移行している矢先に、再び米中貿易戦争に視線を引き戻された格好。一方、中国外務省は、米中通商交渉は日程通り行うとしたが、円買い圧力は払しょくされず。ドル円は108円台後半から報道を受けて一気に108円台前半へ下落。ユーロ円は120円台後半、ポンド円は140円近辺、豪ドル円は74円台半ばへと安値を広げ、前日のFOMC前の水準へと押し戻された。ユーロドルは1.11台後半、ポンドドルは1.29台半ばとFOMC後のドル売り傾向を維持している。ユーロ圏GDP、消費者物価、失業率など経済統計には反応薄だった。
NY市場で、ドル円は一時108円台を割り込んだ。米国との包括的かつ長期的な貿易合意に達することが可能かどうか、中国の当局者らは疑念を抱いている」との報道をきっかけに、きょうの市場はリスク回避のムードに包まれ、米株と伴にドル円も戻り売りを強めている。両国は第1段階の貿易協定調印に近づいているが、中国は構造問題など最重要課題で譲歩する意向はないという。ドル売りが優勢となり、ユーロドルは1.1175近辺まで、ポンドドルは1.2975近辺まで買われた。ポンドにとっては英総選挙を控えた世論調査で、保守党の優勢が伝えられたことも買い安心感に。ユーロにとっては11月からECBのラガルド新体制に移行することで、新たな政策への不安と期待が交錯している面も。米下院がトランプ大統領の弾劾調査の賛否問う採決を実施し、232対196で可決した。ただ、市場の反応は限定的。共和党は大統領の弾劾に反対しており、最終的に弾劾には共和党が多数を占める上院の3分の2の賛成が必要でハードルは高いと見られている。
(1日)
東京市場は、小動き。ドル円は午前中に107.89レベルまで下落、前日安値を下回った。その後は海外市場で米雇用統計など重要指標の発表を控えていることもあり、ドル売りも続かず。108円ちょうど近辺まで戻して揉み合いとなった。ユーロドルが1.1150近辺から1.1167を付けるなど、ドルは全般にやや軟調。米中協議懸念がドル全般の売りを誘っている。日経平均は週末調整もあって76円安と反落して引けた。
ロンドン市場は、小動き。米雇用統計の発表を控えてロンドン序盤は小幅の調整が入る程度の値動き。ドル円は108円近辺での揉み合い。米10年債利回りが前日終値水準を挟んだ上下動にとどまっており、方向性は希薄。欧州株は小幅高となっており、前日からのリスク警戒の動きは一服している。ユーロドルやポンドドルは東京市場での上昇分を消しており、ドル高方向への調整の動きがみられている。ユーロドルは1.1160台から1.1140台へ、ポンドドルは1.2970近辺から1.2940近辺へと小幅の下げ。ポンドに関してはこの日発表された10月英製造業PMIが予想外の改善を示したことが買いを誘う場面もあった。ブレグジットに備えた駆け込み在庫需要が背景と報じられており、ポンド買いの動きも限定的。
NY市場はリスク選好の雰囲気が強まる中、ドル円は108円台に戻した。ただ、21日線が来ている108.30付近は上値抵抗となっている模様。円安の動きが見られるものの、ドル売りがドル円の上値を抑えているようだ。9月にはリスク回避のドル買いが見られていたが、10月以降その動きが巻き返されおり、11月相場に入ってもその流れが続いている模様。
執筆者 : MINKABU PRESS
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