ダフィー長官、NASAに月面の小型原子炉配備を指示 中国やロシアより前に
米運輸長官で、現在NASAの暫定長官を務めるダフィー氏がNASAの職員に、中国とロシアに先んじて月面に小型原子炉を配備すべきだと指示した。ダフィー氏は7月31日付の指令書で、遅くとも2029年末(2030会計年度第1四半期)までに月面に原子炉を打ち上げる準備を整えるようNASAに要請。中国とロシアは2030年代半ばまでに共同基地に電力を供給するための原子炉を月面に設置する計画を公言している。
ダフィー氏は「最初に原子炉を設置した国は排他的な進入禁止区域を宣言する可能性があり、アルテミス計画の妨げになる恐れがある」と警告している。アルテミス計画とは2017年に発表されたNASAの月探査プロジェクト。
指令によれば、60日以内に産業界に対して提案依頼書を発行し、最低100キロワットの電力を生み出す能力を持つ原子炉を開発すべきとしている。この原子炉は、最大15トンのペイロード(ロケットの中身または荷物)を運べる大型ランダー(天体着陸機)に搭載して輸送される予定。
なお、100キロワットの電力は米国の平均的な家庭約80戸分に相当。一方、米国内の商用原子炉の平均出力は70万戸以上に電力を供給できる規模。
このNASAのプロジェクトは「核分裂地表電力」と呼ばれ、マイクロリアクター技術を用いる予定だが、米原子力規制委員会(NRC)による認可を受けたマイクロリアクターはまだ存在していない。
また、この指令はトランプ政権がNASA予算を大幅削減する提案を進めている中でのもの。NASAは現在、上院の承認を受けた正式な長官が不在で、トランプ大統領は5月にマスク氏との対立を理由に本来の長官候補を撤回し、ダフィー氏を暫定長官に任命している。

執筆者 : MINKABU PRESS
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