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為替相場まとめ11月18日から11月22日の週

為替 

 18日からの週は、根強いドル高の動きが続いている。トランプトレードがドル買い材料となるなかで、やや調整が入る展開もみられた。しかし、ウクライナ情勢が一段と緊迫化するなかで、リスク回避的なドル買いの動きが加わり、ドル買いが再び勢い付いた。リスク動向に敏感な豪ドルやNZドルに売り圧力が掛かりドル高に、また、地理的にウクライナやロシアに近いユーロ、ポンドなどにも売り圧力がみられ、側面からドル高を支えた。ドル円には日銀の12月利上げ観測がでており、局面ごとに円買いが交錯した。しかし、ドル買いの動きにブレーキをかけられて、一方的な円高進行とはなっていない。週末のユーロ圏PMIの弱い結果を受けて、ECBの12月大幅利下げ観測が高まった。ドル円は153円台から156円台で激しく振幅した。ユーロドルは1.06付近から1.03台へ、ポンドドルは1.27台から1.25付近へと水準を下げ、ドル買い圧力に押された。ドル指数は年初来高値を更新した。クロス円はドル円とともに神経質に上下動したが、総じて上値を抑えられている。ユーロ円は164円台から一時159円台へと下落、ポンド円は198円付近が重く、194円台割れとなる場面があった。ユーロ対ポンドではウクライナに地理的に近い欧州とあってユーロが軟調だった。

(18日)
 東京市場では、ドル円が一時155円台を回復。午前にいったん154円台を割り込む場面があったが、その後は、この日の安値から1円以上の円安水準となる155.14付近まで上昇した。植田日銀総裁が金融経済懇談会で追加利上げのタイミングについて、「先行きの経済・物価・金融情報次第」と発言したことから、早期の追加利上げ観測がやや後退し、円が売られた。ただ、午後は円売りが続かず、154円台前半まで押し戻されている。植田日銀総裁は、午後の会見でも追加利上げはデータ次第という姿勢を示すにとどまり、市場への影響は限定的となった。クロス円はドル円同様に伸び悩み。ユーロ円は163円台半ばまで上昇したあと163円割れに沈んだ。ポンド円は午前につけたこの日の高値196円ちょうど付近から、午後には195円ちょうど付近まで押し戻された。ユーロドルは1.05台前半から半ばで揉み合い。

 ロンドン市場では、ややドル高の動き。ロンドン序盤はユーロドルが1.05台前半から後半へと買われるなど、先週末からみられたドル高調整の動きが入った。しかし、米10年債利回りが4.42%付近から4.46%付近へと上昇するとともに、ドル買い圧力が優勢となり1.0530台へと押し戻されている。ポンドドルは1.26台前半で売買が交錯しているが、足元では1.2610台へと軟化とドル買いに押されている。ドル円は再び155円台に乗せる場面も。クロス円は東京午後からロンドン朝方にかけては上値重く推移も、ロンドン時間に入るとドル円の上昇とともに上昇。ユーロ円は163円台後半に高値を伸ばしている。ポンド円はユーロ円と比較するとやや上値が抑えられており、195円台後半へと小高く推移。欧州株は高安まちまちと方向性は希薄。ECB当局者らからは、トランプ関税の影響を警戒する声が複数みられた。ただ、その影響に対する見方は様々で依然として不透明感は高い。

 NY市場では、ドル高が一服。ドル円は海外時間に入って買い戻しが優勢となり155円より上のゾーンを試す展開が見られたものの、結局、154.65円付近に押し戻されている。米国債利回りが下げに転じたこともドル円を圧迫した。市場はドル高を一服させており、次のヒントを探っている。先週のパウエルFRB議長の「利下げは急がない」との発言から12月のFOMCでの利下げについては五分五分と見られている。今週は米住宅指標以外は重要なデータも少なく手掛かり材料に乏しい。ユーロドルは買い戻しが優勢となり、一時1.06台に上昇する場面も見られた。しかし、上値が重い雰囲気に変化はない。ユーロ圏の先行き不透明感から、ユーロドルは1.01ドルまで下落するとの見方が出ている。トランプ氏が提案する貿易関税がユーロ圏経済に大きな影響を与え、ユーロドルは最近の下落をさらに拡大する可能性があるという。ポンドドルは一時1.2685ドル付近まで買い戻された。欧州はトランプ関税の影響を警戒しているが、英国はトランプ関税計画の影響を受けにくいことから、ポンドが上昇する可能性があるとの見方が一部から出ている。

(19日)
 東京市場は、ドル円が振幅。午前は売りが先行し、154円台後半から154円割れまで下押しされた。海外勢を中心に来月の日銀金融政策決定会合での利上げ実施期待が残っており、短期金利市場での織り込みが52.6%と過半数を超えていることなども円買いを誘った。ただ、昨日の安値153.84レベル届かずに午後は154.50台まで反発した。日経平均や香港ハンセン指数などのしっかりした動きが円売りを誘ったとみられる。ユーロ円は朝の163.90台から昼前後には163.12近辺まで下落。ドル円の反発とともに午後には買いが強まり163.60台を付けた。ユーロドルは、1.0600超えでのユーロ買いに慎重も、下がると買いが出る流れ。1.0590台を中心とした推移が続いた。

 ロンドン市場では、円買いが強まっている。ロシアとウクライナをめぐる緊張が高まったことに反応。まず、ロシア側から「プーチン氏、核兵器使用の拡大を承認 最新の核ドクトリンで」との一報が流れた。ドル円は154円台後半から一気に153円台前半まで下落した。その後、154円を回復したところにウクライナ側から「ロシア領内に向けた初のATACMSミサイル攻撃実施」と報じられ、ドル円は再び153.50割れへと下落した。その後は売買交錯も153円台後半で推移している。報道前からは引き続き1円近い円高水準となっている。市場全体にリスク回避の動きが広がっており、米債利回りや独債利回りが低下、欧州株や米株先物が下落。為替市場では円のほかにはスイスフランも買われている。ユーロやポンドは軟調。ユーロドルは1.05台後半から前半へ、ポンドドルは1.26台後半から前半へと下押しされている。ユーロ円は163円台後半から161円台半ばまで、ポンド円は195円台後半から193円台半ばまで一時急落した。その後は、ドル円とともにやや下げ渋りとなっている。この日はECBや英中銀当局者らの発言も多かったが、地政学リスク主導の展開になっている。

 NY市場では、ドル円が154円台後半に買い戻された。ウクライナ情勢の不透明感が高まったことで、ロンドン午前には153円台前半まで一時下落も、下げて始まった米株式市場に買い戻しが見られていることもあり、ドル円は154円台後半へと反発した。いまのところウクライナ情勢については、市場も静観しているようだ。米株式市場の買戻しについては、明日の引け後に決算発表を控えたエヌビディアが上昇していることが支援しているとの声も聞かれる。ただ、地政学リスクについては、この先も頻繁に意識されるとの見方も根強い。ユーロドルは下に往って来いの展開。地政学的リスクを再燃で、ロンドン時間に1.05台前半まで下落したものの、NY時間に入って1.06ちょうど付近まで買い戻された。12月ECB理事会については一部から大幅利下げの期待が出ているが、ECB理事はその観測を否定しているようだ。ポンドドルも一旦1.26台前半に下落したものの、NY時間に入って買い戻しが膨らみ1.26台後半に戻している。本日はベイリー英中銀総裁を始め、複数の英中銀委員が議会証言を行っていた。ベイリー総裁はインフレは両方にリスクがあり、段階的なアプローチが有効との認識を示し、慎重姿勢も垣間見せていた。 一方、9月に政策委員に就任したテイラー委員は、経済が低迷した場合、金利は予想よりも速いペースで引き下げられる可能性があることを示していた。

(20日)
 東京市場では、ドル円が再び155円台に乗せている。朝方に154.50台へと下押しも、その後はドル買い・円売りに転じた。午前中はいったん155.00手前で上値を抑える場面が見られたが、昼過ぎに大台を超えると、その後は上値を伸ばし155.40近辺までで上昇。昨日の高値155.36レベルを上回った。米10年債利回りが4.38%台から4.41%前後まで上昇する中でドルが買われた。ユーロドルは1.0600を挟んでの推移。今朝は1.0610を付ける場面も、1.06超えでのユーロ買いには慎重だった。ユーロ円は163円台後半から164.50台まで上昇。昨日はウクライナ情勢緊迫化ではユーロ売り・円買い両面から売りが出ていたが、その後の反発で下値しっかり感が広がった。中国は市場予想通り政策金利である最優遇貸出金利を現状維持とした。相場への影響は限定的だった。

 ロンドン市場では、根強いドル高の動きが続いている。ドル円は一時155.85近辺と東京朝方の安値からは約1.3円の上昇。ユーロドルは1.06台を割り込むと、1.0550割れ水準へと下落。米10年債利回りは4.39%付近から4.42%付近へと上昇している。ロンドン時間はドル買い圧力が前面に押し出されている。欧州株や米株先物・時間外取引が堅調に推移しており、NY引け後に発表される半導体大手エヌビディア決算への期待感があるようだ。ユーロ円は164.70台まで高値を伸ばしたあとは164円台前半に上昇一服。個別通貨ではポンドが堅調。10月の英消費者物価指数が前年比+2.3%と予想以上の伸びを示したことに反応。コア前年比は+3.3%、サービス価格は+5.0%ととインフレが予想外に加速した。短期金融市場での英12月利下げ織り込みは1割程度と低くなっている。ポンドドルは1.27台乗せへと上伸したが、ドル買い圧力には抗せず1.2650割れへと軟化した。ポンド円は197円台後半まで買われたあとは、197円台前半と買い一服。ただ、対ユーロでは引き続きポンド高水準を維持している。

 NY市場では、総じてドルが堅調。そのなかで、ドル円は155円台前半まで伸び悩んだ。ロンドン時間までは一本調子の買い戻しを見せ、155円台後半まで回復していた。ドル円は再び155-160円のゾーンに復帰しようとしているが、ウクライナ軍が英国製の巡航ミサイル「ストーム・シャドー」をロシア領内の軍事目標に初めて発射したと伝わったことで、地政学リスクへの警戒感が再び高まった。ただ、市場は静観しており、ドル円は155円台は維持した。日米の金融政策に対する見方に変化はなく、FRBの12月利下げの可能性は五分五分、日銀は12月か1月の決定会合での利上げ実施と見ているようだ。この先の経済データ待ちといった雰囲気。ユーロドルは売りが加速し、一時1.05台前半に下落。本日はユーロ圏の賃金に関する重要な指標が発表になっていた。ECBがこの日発表した7-9月期の妥結賃金は前年比で5.4%上昇と、前四半期の3.5%から上昇が加速している。主にドイツが上昇をけん引していたが、これは金融緩和を進めようとしているECBの仕事をさらに複雑にする。ポンドドルも売りが優勢となり、1.26台半ばに下落。一方、ポンドは対ユーロでは上昇。ロンドン朝方発表の英インフレ指標の上振れの影響が残った。

(21日)
 東京市場では、円買いが強まった。ドル円は、東京午前に日経平均の下落などからリスク回避の動きで円が買われ、155円台を割り込んだ。その後は下げ渋り、155.20台まで戻す場面があったが、午後は再び円高に振れ、この日の安値となる154.56付近まで急落した。植田日銀総裁が午後の講演で「12月会合前に多くのデータが出る」「12月会合の結果を予測するのは不可能」と発言したことをきっかけに、円が買われた。クロス円も終盤に急落。ユーロ円は163.13付近まで、ポンド円は195.62付近まで水準を切り下げた。ユーロドルはドル安傾向となり、一時1.0555付近まで上昇した。

 ロンドン市場では、円買いが優勢。植田日銀総裁が「次回12月の日銀金融政策決定会合までにより多くのデータが得られる」と述べたことに、市場は12月追加利上げへの思惑を強めたもよう。さらに、ウクライナ情勢の緊迫化がリスク回避の円買いやドル買いにつながった。昨日はウクライナが米国製ミサイルに続いて英国製ミサイルもロシア領内に発射した。これに対してロシア側はICBMをウクライナの目標に向けて発射している。ICBMは核弾頭を装着可能とみられており、強いメッセージ性がある。欧州株が軟調に推移、米債利回りもやや低下、ドル円は155円付近から154円台割れ目前まで下落した。ユーロ円は163円台半ばから162円台割れ目前へ、ポンド円は196円台前半から194円台半ばまで下落した。ユーロドルは1.05台半ばから前半へ、ポンドドルは1.26台半ばから前半へと下押し。その後、やや値動きが落ち着く中で、英CBI製造業受注指数が予想以上に改善するとポンドは反発。対ユーロでのポンド買いが強まっている。

 NY市場では、ドル円が上下動。ドル買いの流れは続いていたものの、円高の動きからドル円は戻り売りに押され、154円台割れに下落する場面が見られた。ウクライナ戦争はさらにエスカレートしつつあるものの、市場は引き続き落ち着いた反応を見せ、米株式市場でダウ平均が大幅高となる中、ドル円も154円台に買い戻されている。次第に方向感もなくなり、日替わり相場の様相を見せる中、前日に回復した155-160円のゾーンから再び下に出ている。ユーロドルは1.05台を割り込んだ。ストップを巻き込んで1.0475付近まで一時下落。すぐに1.05ドル台を復帰できないようであれば、来年にかけてパリティ(1.00)を目指す展開も警戒される。ウクライナ情勢の悪化は米国や日本よりもユーロ圏への影響の方が大きい。ポンドも対ドル、対円で下落し、ポンドドルは今月サポートされていた1.26台を割り込んだ。ポンド円も194円台半ばまで下落し、再び200日線の水準に顔合わせしている。

(22日)
 東京市場は、円高が先行も、その後は反発している。ドル円は朝方に154円台半ばから154円台割れへと下落、ウクライナ情勢への警戒感がリスク回避の円買いを誘った。しかし、前日にロシアがウクライナにICBMを発射と報じられたことについて、プーチン大統領が新型の中型ミサイルでICBMではないと否定した。核への警戒感が後退し、ドル円はロンドン朝方にかけて154円台後半まで反発した。ユーロ円も161円台前半に下押しされたあと、162円台乗せへと買われている。ユーロ円は1.04台後半での揉み合いと前日からの安値付近で推移も、動意に欠けた。来週のNZ中銀大幅利下げが観測され、NZドルは対豪ドルでストップを発動しながら急落する場面があった。

 ロンドン市場では、ユーロ相場が急落した。フランス、ドイツ、ユーロ圏などのPMI速報値が予想を下回ったことが景気への不透明感を広げた。12月ECB理事会での50bp大幅利下げ観測が約5割に高まっている。独2年債利回りは一時2022年以来の低水準に低下。ユーロ相場はストップを巻き込んで急落している。ユーロドルは1.04台後半から1.03台前半へ、ユーロ円は162円台割れから一時160円台割れまで急落した。英PMI速報値も弱含み、ポンドも軟調。対ドルは一時1.25台割れ、対円は194円台から193円台割れまで下落。ユーロ対ポンドではユーロ売りが先行も戻している。ドル指数は年初来高値水準を更新している。欧州株や米株先物・時間外取引は軟調に推移している。ラガルドECB総裁やデギンドスECB副総裁からは米関税引き上げに対する警戒感が示された。ドル円は154円台での上下動に終始しており、この時間帯は欧州通貨に主導権が移っている。

 NY市場は、ドル買いの流れは相変わらず続いていたものの、ドル円は円買いの動きもあり、方向感なく154円台で上下動した。155-160円のゾーンは上値が重くなっている一方、150円の方向に下押す動きも見られていない。155円を軸に次の展開待ちといった雰囲気となっている。今週はウクライナ情勢に絡んだ地政学リスクへの警戒感が高まったが、米株式市場が底堅く推移したこともあり、ドル円は下値をサポートされている。一方、日米の金融政策は状況に変化はなく、FRBはデータ次第でどちらの方向にもオープンと姿勢を強調しており、市場は12月利下げを五分五分と見ている状況。日銀も同様で、各会合ごとに最新のデータと情報を点検しているとし、12月の追加利上げの可能性も捨て切れなくなっている模様。そのような中で、ドル円も方向感を出しづらい雰囲気となっているようだ。

MINKABU PRESS

執筆者 : MINKABU PRESS

資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。

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