【来週の注目ポイント】米インフレターゲットの対象指標は小幅反発見込み=米PCE価格指数
【来週の注目ポイント】米インフレターゲットの対象指標は小幅反発見込み=米PCE価格指数
30日に7月の米個人消費支出(PCE)価格指数が発表されます。米国の物価統計は消費者物価指数(CPI)の注目度が高いですが、インフレターゲットの対象指標はあくまでこのPCE価格指数となっています(同系統の指標で変化傾向が似ているため、速報性の高いCPIのほうが注目を集めやすいです)。
14日に発表された7月の米CPIはほぼ予想通りながら前年比が+2.9%と6月の+3.0%から鈍化しました。コア前年比も+3.2%と6月の+3.3%から鈍化しています。総合指数は4カ月連続での鈍化で、3%割れは約3年ぶりとなります。ガソリンが前年比-2.2%と2カ月連続でマイナス圏。自動車も新車が-1.0%と6カ月連続でマイナス圏、中古車は-10.9%と2カ月連続で10%を超えるマイナスとなっています。CPI全体を100としたとき、その36.2%を占める大きな項目である住居費は前年比+5.1%と6月の+5.2%から鈍化しましたが、水準的にはまだかなり高くなっています。また、医療サービスが+3.3%と高い水準で横ばい、自動車保険が+18.6%と6月の+19.5%ほどではなくても高く、同項目を含んだ輸送サービスも高めです。
前日13日に発表された米生産者物価指数(PPI)は6月だけでなく、市場予想と比べても鈍化が見られました。また、PPIの中で今回のPCE価格指数の計測に利用される項目である診療費や航空運賃の鈍化も見られていました。
こうした状況があるものの、今回のPCE価格指数は前年比+2.6%と6月の+2.5%から反発見込みです。コアPCE前年比も+2.7%と6月の+2.6%から上昇見込みです。CPIに比べて全体に占める割合がかなり高い医療費がCPIで6月と同水準となったことなどが全体を支えるとみられます。
もっとも、想定範囲内の反発であり、予想通りであれば9月の利下げ期待に大きな変化はなさそうです。今月2日の7月米雇用統計の弱い伸びを受けて一時広がった9月に0.5%の大幅利下げを行うとの見方については、15日の7月米小売売上高の力強い伸びを受けて少数派となりました。それ以降、先週水曜日の米労働省労働統計局(BLS)による2024年3月までの1年間での雇用者数81.8万人の下方修正や、金曜日のジャクソンホール会議でのパウエル米FRB議長による金融調整の「時は来た」、その方向性は明確などのハト派発言を受けても少数派となっており、今回のPCEの結果で市場の見方がで大きく変化するとは考えにくいです。
注目は見方の分かれる年内利下げ見通しの変化となりそうです。
今のところ短期金利市場、金利先物市場はともに年内1%の利下げを織り込む動きとなっています。年内あと3回しかFOMCの開催予定はありませんから、9月が0.25%となった場合、11月6日、7日の会合か12月17日、18日の会合での0.5%利下げの実施となります。
予想を下回る伸びにとどまり大幅利下げ期待が広がるとドル売り、予想を超える伸びとなり年内0.25%利下げが続くとの見通しが広がるとドル買いが期待されます。
その他指標はそれほど大きなものはありませんが、注意しておきたいのが28日に発表される米第2四半期GDP改定値。速報値ほどのインパクトは在りませんが、ブレがそれなりに出ることがあります。特に雇用統計の弱さを受けて米GDPの約7割を示る個人消費への警戒感が出ている点には要注意です。個人消費の速報値+2.3%から大きく鈍化し、GDP全体も押し下げてくるようだと、9月はともかく、11月の大幅利下げ期待につながる可能性があります。この場合ドル売りに拍車がかかる可能性が高いです。パウエル議長のハト派的な姿勢もあり、弱めの指標にやや反応しやすい地合いになっているとみられますので、注意が必要です。
MINKABU PRESS 山岡和雅
執筆者 : MINKABU PRESS
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