為替相場まとめ1月15日から1月19日の週
15日からの週は、ドル高と円安が進行した。市場に米FOMCの早期利下げ開始観測が広がるなかで、米金融当局者からはこれをけん制する発言が相次いだ。次第に市場観測も後ずれしてきており、米債利回りの上昇とともにドル高の動きにつながった。米小売売上高、新規失業保険申請件数などが強い内容となったこともドル高を支援した。ダボス会議が開催されるなかで、ECB当局者らからは米国と同様に市場の3月利下げ開始観測を時期尚早とする見方が相次いだ。来週の日銀決定会合では、能登半島地震の影響もあってマイナス金利解除は見送られるとの見方が強まっており、日米や日欧などの金利差に着目した円売りが広がった。英国はインフレ指標が上振れする一方で、小売指標が下振れるなどまちまちだったが、全般的には英中銀の利下げ開始が後ずれするとの見方が優勢になっている。ポンド相場は対円や対ユーロなどでの買いが鮮明だった。中東での地政学リスクが広がりをみせていることで、原油先物などが上昇。世界的にインフレ圧力が対する不透明感も増した。
(15日)
東京市場は、円安の動き。ドル円は先週末終値144.90付近で取引を開始、その後ドル高の動きに。前週末の米ダウ平均の弱さから慎重に始まった東京株式市場は前場引けにかけて日経平均が上昇。親米派の勝利で警戒感のあった台湾加権指数がしっかりした動きとなったことなども好感し、リスク選好の円売りとなった。ドル円は午前中に145.20台まで上昇、昼にかけて一服したあと、午後には再び高値付近に。今日は米国市場が休場ということで、上値追いに慎重な姿勢が見られたが、下値はしっかりとなっている。ユーロ円も158円台後半から一時159.20近辺まで買われた。ユーロドルは1.0940台から1.0960台に上昇。週明け対円でのユーロ買いに支えられて少ししっかり。先週来の1.09台での取引にとどまった。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。きょうはキング牧師記念日で米債券市場が休場となる手掛かり難ではあるが、ドル相場は堅調に推移。先週の一連の米インフレ指標を通過して、市場での米早期利下げ観測がやや後退したことが影響しているようだ。ドル円とともにユーロドルやポンドドルなどでもドルが買われた。一方、東京市場でみられたクロス円の上昇の矛先はやや鈍っている。ドル円は145.82近辺と先週末の高値を上回った。ユーロドルは1.09台での取引が続くなかで、1.09台後半から前半へと反落、安値を1.0930台に広げている。ポンドドルも1.27台後半から前半に下げており、安値を1.2710台に更新した。ユーロ円は159.50台、ポンド円は185.50台に本日の高値を伸ばしたが、足元では伸びを欠いている。ただ、東京市場からの円安の流れには目立った調整は入らず。先週から引き続き、ドル円の上昇の流れが目立つ格好に。欧州株や米株先物はやや売りに押されており、調整ムード。ドイツは2023年通年の成長率が-0.3%となった。第3四半期成長が横ばいと上方改定されたことで、第4四半期との2期連続のマイナス成長は回避されたが、通年でのマイナス成長はドイツにとって頭の痛い状況だ。
NY市場はキング牧師記念日のため休場。
(16日)
東京市場は、ドルがほぼ全面高。ドル円は朝方に145.60付近まで軟化したあと、その後は反発。仲値関連のドル買いなどで146円台に上昇。仲値後に売買が交錯したが、米債利回りの上昇などでドル高の流れが再開、午前中には146.20付近まで買われた。午後も底堅く推移し、一時146.27近辺に高値を伸ばした。米10年債利回りは3.98%付近から4.01%付近へ上昇。ユーロドルは朝方の1.0950付近から1.0913近辺まで下落。引き続き1.09台は抜け出せず。ユーロ円は日経平均の冴えない動きに円買いが入り、159.60台から159.24近辺まで下落。しかし、すぐに反転して下落分を取り戻した。
ロンドン市場は、ドル高が進行。ドル円はロンドン時間に入ると146.75近辺に高値を更新。昨年12月7日以来の高値水準に。引き続き日銀のマイナス金利解除観測の後退や新NISA関連の外貨買い需要などの思惑が広がった。その他通貨でもドル買いの動きが広がった。ユーロドルは1.09台を下抜けして1.0870台に下押し。ポンドドルは1.27台割れから1.2620付近へと下落。ポンドにとってはロンドン朝方発表の英雇用統計で、賃金の伸びが予想以上に鈍化したことも売りを誘った。また、ユーロにとっては最新のECB消費者インフレ期待が1年先、3年先ともに前回から下振れしたことが重石となった。独ZEW景況感は予想以上に改善していたが、現状指数は引き続き低迷。ZEWの回答者の過半はECBや米FRBの早期利下げ開始を期待していた。しかし、このあとのNY市場で予定されているウォラー米FRB理事の講演に注目が集まるなかで、市場ではタカ派の発言内容が警戒される面もあるようだ。欧州株および米株先物は軟調に推移。
NY市場は、ドル買いが優勢。ドル円は147円台まで上げ幅を拡大、1カ月ぶりの高値水準を更新。ウォラーFRB理事が「インフレ再燃しなければ、今年の利下げ可能」と述べる一方で、「以前ほど迅速に利下げしたり急いだりする理由ない」と述べたことも、ドル円を押し上げたようだ。本日は米国債利回りが上昇するなど、市場は早期利下げ期待を後退させている。市場は少し先走り過ぎたとの指摘が出ているほか、米国債利回りは当面、現行水準から低下することはないと思われるといった声も。ユーロドルは1.08台に下落、ポンドドルは1.26台前半に下落とドル買いが広がった。ECB理事の発言も複数伝わっていたが、ビルロワドガロー仏中銀総裁は、「ECBは今年利下げに踏み切る可能性が高いが、時期は未定」と述べていた。インフレとの闘いでの勝利宣言は時期尚早だが、ECBは今年利下げを実施する可能性が高いという。この日の英雇用統計では週平均賃金の伸び鈍化がポンド売りを誘っていたが、依然としてインフレを上回る水準、失業率も4.2%で低位安定。英中銀の早期利下げを妨げる可能性が指摘されていた。
(17日)
東京市場は、ドル高が継続。ドル円は朝に147.50近くまで上昇。その後、米10年債利回りが4.075%前後から4.035%近くへ下げる中で、いったん147.10台へと調整売りが入ったものの、NY午後と同様に147円台を維持したこともあって、午後にはドル買いが再び強まり147.70台まで上昇。先週末の米生産者物価指数発表後に80%強だった3月の米利下げ見通しが65%程度まで低下、ドル買いにつながっている。ユーロドルは1.0885近辺まで買われたあとは、売りが再開、午後には1.0850台と昨日安値を割り込んだ。ユーロ円はドル円の上昇に支えられて160.51近辺まで上値を伸ばした。ユーロドルの下げに比べてドル円の上昇の勢いが強く、クロス円はしっかり。
ロンドン市場は、ドル円、クロス円が上昇。米早期利下げ開始観測の後退に加えて、この日発表された英消費者物価指数の伸びが予想外に上昇したことがポンド買いを誘った。市場では今年の英中銀の利下げ幅見通しが12月以降で最小となっている。また、一連のECB当局者発言が報じられるなかで、3月など早期の利下げ開始は時期尚早との見方が相次いだ。ラガルドECB総裁は夏の利下げ可能性が高いとして、早期利下げ観測をけん制している。ユーロ相場もポンドにつれ高。ドル円は147円台前半から後半へと上昇、昨年12月初頭以来の高値水準に。ポンド買いが主導するなかでポンド円は186円付近から187円台前半へと上伸。ユーロ円は160円台前半から後半へと買われている。ドル相場はまちまち。米債利回りが上昇一服で揉み合うなか序盤はドル買いが先行したが、次第にその動きは一服。ポンドドルは1.26付近から1.27台手前へと買われている。ユーロドルは1.08台半ばから後半での振幅。欧州株は軟調。中国・香港株が人民銀の利下げ見送りを受けて大幅安となったことや、英欧の早期利下げ観測が後退したことなどが重石に。
NY市場では、ドル円の上値追いが継続。12月の米小売売上高が予想を上回る内容となったこともあり、米国債利回りの上昇と伴にドル円も上げ幅を拡大、148円台半ばまで買われた。市場ではFRBの早期利下げ期待が後退しており、短期金融市場での3月までの利下げ開始確率は一時50%に接近する場面も見られた。エコノミストなどからは3月利下げ開始は行き過ぎとの声も多かったが、市場も改めて認識し始めているようだ。ユーロドルは下げ渋ったものの、買い戻しの機運も高まらず、1.08台での推移を続けている。市場は、FRBの3月利下げの可能性を大きく後退させているが、ECBについても3月利下げの可能性は大きく後退させている。利下げ開始は4月との見方を有力視している状況。FRBは5月が有力になりつつあるようだ。ポンドドルは1.26台後半まで買い戻された。ロンドン早朝に英消費者物価指数が予想外の伸びを示したことで、根強いインフレ圧力が認識されている。市場の一部からは、英中銀は自らのガイダンスに沿って、1月に物価が再び下がらなければ、利上げを行う必要があるとの声まで出ている。
(18日)
東京市場では、やや調整の動き。ドル円は前日NY市場で148円台半ばまで買われたあと、148円台前半で伸び悩んだ経緯があった。東京市場では米10年債利回りが4.08%付近まで低下、ドル高の反動もあって148円台を割り込んだ。午後には147.70台まで一時下落した。ユーロ円は161円台前半、ポンド円は187円台後半での推移。ユーロドルは1.09付近で上値を抑えられている。豪ドル円は、午前に発表された12月の豪雇用統計の弱い結果を受け、いったん96.72付近まで弱含んだが、午後は前日終値付近まで戻しての小動き。
ロンドン市場は、ドル高や円安の流れが一服。米10年債利回りが4.07%付近まで低下。新たな金融当局者発言や市場に影響を与えるような経済統計発表はみられず、調整の動きが中心となっているようだ。ドル円は148円台前半から軟化、ロンドン時間には147.66近辺に安値を広げた。クロス円も上値が重く、ユーロ円は160.80近辺、ポンド円は187.35近辺まで反落する場面があった。ただ、下押しの動きも足元では落ち着いている。ドル相場も前日までの上昇の流れは一服。ユーロドルは1.09台、ポンドドルは1.27台に乗せる場面があった。ただ、その流れも一巡してユーロドルは1.08台後半、ポンドドルは1.26台後半で揉み合っている。
NY市場では、ドル買いが再燃。この日発表の米新規失業保険申請件数が予想以上に減少し、米労働市場の底堅さを示したことで、米国債利回りが上昇に転じ、ドル円は148円台を回復している。このところの急ピッチな上昇で高値警戒感も出ており、上値での利益確定売りも活発に出始めているようだ。調整が出てもおかしくはないが、一方で戻りを試す気配もいまのところない。市場ではFRBの早期利下げ期待が後退している。FRBの利下げを巡る市場の楽観論は巻き戻される可能性が高く、それがドル高に拍車をかけ、ドル円は上昇が続くとの見方があった。ユーロドルは1.0850付近まで一時軟化。ポンドドルは1.26台後半で上下動した。ECB議事録が公表されていたが、金利上昇の効果の大部分はまだ実際に表れておらず、影響が最も表れるのは今年初めだと述べていた。今週発表の英雇用統計や消費者物価指数(CPI)を受けて、英中銀の早期利下げ期待が後退しており、現在、短期金融市場では6月の利下げ開始を最有力視している。
(19日)
東京市場では、円売りが優勢。ドル円は午前に日経平均の大幅高などリスク選好の動きで円が売られると148円台半ばまで買われた。その後、昼前に鈴木財務相の「為替相場を注視している」という発言が伝わると伸び悩み、上げを帳消しにする場面があった。もっとも反応は限定的で、午後に入って再び円売りが強まり、昨年11月末以来およそ1カ月半ぶりの高値となる148.74付近まで水準を切り上げた。。米10年債利回りは一時4.16%台まで上昇。ユーロ円も昨年11月末以来、およそ1カ月半ぶり高値となる161.80付近まで買われた。ポンド円は2015年8月以来8年5か月ぶりの高値となる188.85付近まで上昇。
ロンドン市場は、ドル買いが一服している。ドル円は一時147円台後半に下落。米10年債利回りが4.17%付近から4.13%付近へと低下したことに反応。今週は市場の先走った早期利下げ期待に金融当局者がブレーキをかける動きが相次いだが、その動きも今日は落ち着いている。これまでのところ、目立った金融当局者発言はみられていない。あすから米金融当局者がブラックアウト期間に入る。このあとのNY時間でのグールズビー・シカゴ連銀総裁、デイリー・サンフランシスコ連銀総裁の発言予定が待たれる。そのなかで、ポンド売りが目立った。ロンドン朝方に発表された12月英小売売上高が予想以上に落ち込んだことに反応。ポンドドルは1.26台後半、ポンド円は187円台半ばへと軟化した。ユーロドルは1.08台後半での揉み合い、ユーロ円は一時161円台割れとポンド円の下落につれ安。クロス円が軟調で円高の動き。今週の円安の流れに週末調整が入る面も指摘される。
NY市場は一時148円50銭台を付けるなど、ドル高基調が優勢となったが、週末を前に動きが続かず、その後調整が入った。押し目は148円03銭までにとどまっており、ドル高円安基調が継続。堅調な米株式市場動向などもドル買い円売りを誘った。ただ週末を前に上値追いにも慎重で、午後は動きが膠着した。0時に発表された米ミシガン大学消費者信頼感は予想を大きく上回る好結果となったが、同時に発表さたインフレ見通しが低下したことや、同時刻に発表となった中古住宅販売件数が弱めの結果となったことで一時ドル売りとなった。ただ、下がったところではすぐにドル買いが出ていた。ユーロドルは1.08台後半での落ち着いた推移が続いた。ユーロ円はドル円の上昇などに支えらえて、ロンドン市場での安値から買いが入ったが、161円台半ば前後までの動きにとどまった。

執筆者 : MINKABU PRESS
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