ドル円は144円台に上昇 予想外に強い米指標をきっかけに買い加速=NY為替概況
きょうのドル円はNY時間に入って買いが加速し144円台に上昇。この日発表の米経済指標が予想外に強かったことで、米国債利回りの上昇と伴にドル円も買い戻しが膨らんだ。
今週はポルトガルのシントラでECBフォーラムが行われているが、ラガルドECB総裁を始め、植田日銀総裁、パウエルFRB議長、ベイリー英中銀総裁が明日のフォーラムで討論会を行う。現地時間の午後、日本時間では28日22時半頃に討論会は始まる。日銀以外は当初の想定以上に利上げを継続するタカ派姿勢を強調している一方、日銀は緩和姿勢の継続を強調している。その格差を確認する内容となるか注目される。
財務省による円安けん制発言が意識されている。前年は145円で介入を実施していたが、今回は昨年とは状況が違うことから、145円説はまだ少数派のようだ。現状を考えれば、円安を止める介入が日本経済にとって有意義な行動かどうかは疑問符が付くところではあるものの、これまで過度な動きには対応するというスタンスで、為替介入に対して海外から理解を得てきただけに、急激に動けば実施せざるを得ないとの指摘も聞かれる。
この日発表の米経済指標が強い内容となったことで、NY時間に入ってドル買い戻しの動きが見られているものの、本日のユーロドルは買い戻しが続いており、1.10ドル台を再び試しそうな気配が見られている。
きょうはラガルドECB総裁がECBのフォーラムでスピーチを行い、「昨年7月以来、累計で4.00%ポイント上昇したECBの利上げの影響はまだ完全には表れておらず、ECBの仕事はまだ終わっていない」と述べた。また、「インフレの持続性に関する不確実性に基づいて金利水準は時間をかけて継続的に見直される必要がある」とも語った。
ユーロ圏は2000年代半ば以降、利上げを実施していなかっため、政策伝達の強さについても不確実性があるという。このような状況下では近い将来に、ターミナルレート(最終到達点)に達したと自信を持って言えるようになる可能性は低いとも付け加えていた。
ポンドドルは緩やかに1.27ドル台半ばまで買い戻される展開。先週から調整が続いていたが、きょうはその動きも一服している。予想以上に雇用とインフレ指標の強さに英中銀の追加利上げ期待が強まっており、短期金融市場ではあと累計で1.00%の利上げを織り込む動きが出ている。しかし、エコノミストの間では英中銀が十分な利上げを行い、インフレを抑制できるかどうかに対する懐疑的な見方も強まっている。そのためポンドは下落の可能性があるとの指摘も出ている状況。
英中銀は積極的な金融政策でインフレと闘うのではなく、インフレの進展を追いかけているようだ。市場は年末までに計1.00%ポイントの利上げを織り込んでいるが、英中銀の躊躇的なスタンスからすれば、その可能性は低いという。物価上昇圧力が今後数カ月で緩和され、英中銀は利上げを打ち切る可能性のほうが高いとも指摘した。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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