ドル円は138円後半で底堅い推移 140円にはなお慎重も、試しそうな気配も=NY為替概況
きょうのNY為替市場はドル買いが一服しているものの、ドル円は底堅い推移が続いている。依然として140円には慎重な雰囲気があるものの、試しそうな気配は続いている状況。
短期的にドル買いが続く可能性を指摘する向きは多い。FRBの積極利上げ、欧州のエネルギー危機、中国の予想より遅い回復でドル買いがさらに強まる可能性があるという。しかし、ドルは過大に評価されている面もあり、同時に今後6ヵ月で頭打ちとなる可能性にも言及している。
この日は日本の7月の小売売上高と鉱工業生産、消費者信頼感が発表され、それぞれ堅調な数字が示されていた。日本経済は脆弱ながらも回復を続けていることが示されたが、それでも日銀が他国の中銀と伴に引き締めに転じるには、まだ長い道のりがあるという。日本のインフレは他国に比べて遥かに低水準に留まっており、日銀がなお景気刺激策に主眼を置くことを可能にしている。
そのような中、ドル円は依然として日米の金利差に翻弄され、一時139円台まで戻す展開を見せている。財務省の介入も可能性が低いと見られる中、ドル円は140円を試すとの見方は根強いようだ。
ユーロドルは1.00ドル台半ばまで急速に上昇。ロンドンフィキシングにかけて月末のフローが活発に入ったようだ。この日は8月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)が発表され、総合指数で9.1%まで上昇していた。それに伴ってECBの利上げ期待も高まっており、短期金融市場では、中銀預金金利が10月までに1.25%まで上昇する可能性を織り込む動きが出ている。9月か10月の理事会での0.75%利上げの可能性を意味する。
ユーロ圏のインフレは9月もさらに加速する見込みで、エネルギー価格の高騰により、次の数カ月はインフレが10%を超える可能性が高いとも見られている。ドイツでは公共交通機関の9ユーロチケットと燃料非割戻しの両方の措置が失効するが、それだけでも、インフレを0.3%ポイント以上押し上げるという。
来年、エネルギー価格が安定すればインフレは徐々に低下すると思われるが、多くの企業が生産コストの上昇をまだ消費者に十分に転嫁していないことから、消費者物価の上昇圧力は続く。インフレを持続的に2%弱まで押し下げるというECBの目標はまだ先のことになりそうだ。
ポンドドルも下げ渋る動きを見せているものの、本日は一時1.16ドルちょうど付近まで下落するなど下値模索が続いている。英インフレへの警戒感も高まっているが、前日に米大手銀から、天然ガス価格が今後数カ月間高止まりした場合、英インフレは来年に22%を超える可能性が指摘されていた。ガス価格がこのままの水準で推移すれば、英国は1月にエネルギー価格の上限をさらに80%引き上げざるを得なくなるという。
そうなれば、インフレ率は22.4%に上昇し、GDPは3.4%縮小することになる。例えエネルギー価格が緩やかになったとしても、1月のインフレのピークは14.8%になるという。それでも英国を景気後退に追い込むには十分ではある。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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