米雇用統計を受け、ドル円は136円台に上昇=NY為替概況
きょうのNY為替市場でドル円は買いを加速させ、136円台に上昇。一時136.55円付近まで上昇する場面が見られた。ただ、このところのドル円は底堅さを堅持し高値圏での取引を続けているものの、積極的に140円を試そうという動きまではなく、上値に慎重になっている雰囲気もうかがえる。きょうもその雰囲気は続いており、136円台では戻り待ちの売りも活発に出るようだ。
買いのきっかけは朝方発表になった米雇用統計だが、前回からは伸びが緩んだものの、予想は上回るなど依然として力強さは堅持している。市場は今月のFOMCで0.75%ポイントの利上げを期待しているが、その期待を十分に正当化する内容ではある。短期金融市場では0.75%ポイントの利上げ確率を95%で織り込んでいる。
ただ、FRBの積極利上げについては市場での認識が十分に広がっており、むしろ、関心はリセッション(景気後退)の可能性に移っている。その点ではきょうの米雇用統計はその可能性を後退させる内容ではある。
ユーロドルはNY時間にかけて買い戻しが強まった。ロンドン時間の朝方には1.00ドル台まで下落していたものの、NY時間にかけてショートカバーが強まっている。朝方発表の米雇用統計は、米労働市場の力強さが維持されていることが示され、FRBの積極利上げへの市場の期待感を裏付ける内容となった。しかし、市場はリスク回避の雰囲気を強めておらず、その動きもユーロドルの買い戻しをサポートしている模様。
しかし、ユーロドルがパリティ(1.00ドル)を下回るとの見方は根強い。FRBの利上げ期待がECBのそれを上回り、さらにユーロ圏のエネルギー価格が高騰していることからユーロドルは下値模索が続くと見ているようだ。また、世界経済の下振れリスクが顕在化した場合、ECBはFRBよりも早期に利上げ計画を撤回する可能性が高く、そうなれば、ユーロドルはさらに売りが加速する可能性があるという。加えて、ロシアが欧州向け天然ガス輸出を完全に停止する恐れがあり、ユーロ圏の交易条件と経常収支を悪化させる可能性があるとも指摘している。
ポンドドルはロンドン時間に1.19ドル台前半まで下落していたが、NY時間にかけて1.20ドル台に買い戻されている。前日はジョンソン英首相の退陣のニュースが市場を駆け巡ったが、ポンドの反応はポジティブだった。
ただ、ジョンソン首相の退陣はポンドにとって最大の要因ではないとの指摘も聞かれる。首相の辞任は政治的安定をもたらし、EUに対する友好的路線の可能性は企業投資をサポートするかもしれない。しかし、インフレが10%を超え、経済成長が著しく鈍化することが予想される現在の経済状況のほうが、ポンドを語る上でより重要な問題だという。
ジョンソン首相辞任のニュースが流れたとき、ポンドは買いで反応したが、政治はポンドの方向性を決める主要なプレーヤーではない。不況への不安からドルが上昇し、ポンドはここ数日の損失を取り戻しただけだとしている。なお、スナク前財務相が与党保守党の党首選への出馬を表明した。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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