リスク回避のドル買いが続く 議事録への反応限定的=NY為替概況
きょうのNY為替市場でドル円は買い戻しが膨らみ、136円ちょうど付近まで買い戻されている。リスク回避の雰囲気が依然として続く中で、序盤は134円台まで値を落とす場面も見られていた。しかし、この日発表のISM非製造業景気指数の発表を機に米国債利回りの上昇と伴に買い戻しが強まった。値動きから見て、指標通過を機にまとまった買いが入った可能性もありそうだ。
午後に入ってFOMC議事録が公表されたが、それ自体の為替市場の反応は限定的。議事録では、7月FOMCで0.50%または0.75%ポイントの引き上げの可能性に言及し、全体的なタカ派期待を裏付ける内容ではあったものの市場は、今月のFOMCでの0.75%ポイントの利上げを確実視するなどFRBの積極利上げ自体をかなり織り込んでおり、反応は限定的となったものと見られる。
市場からは、世界的な景気後退への懸念とFRBの引き締めでドルは上昇を拡大する可能性も指摘されている。市場は安全資産への需要を高め、FRBは依然として積極利上げへの姿勢を堅持し続けることから、ドルはしばらく上昇を続けるとの見方が根強い。
投資家は世界経済の成長見通しを低く見積もり続けており、これは直近の米国債の逆イールドやコモディティ価格急落に反映されている。逆イールドは現在の環境下ではドル高に働く。FRBが引き締め姿勢を堅持しそうな中で現在の流れは夏場も続きそうだという。
ユーロドルはきょうも下値模索が強め、1.01ドル台に下落している。一時1.0160ドル付近まで下落し、20年ぶりの安値水準を更新。一向に下値メドが見えず、パリティ(1.00ドル)を目指すとの声も多い。
欧州のエネルギー供給問題や、ECBによる加盟国の国債市場の断片化(フラグメンテーション)への対応計画を懸念し、ユーロは今夏も事実上買えない状態が続くとの見方も出ている。
欧州のロシアへのエネルギー依存度は低下しているが、パイプラインが閉鎖された場合に不況を回避できるほどの早さはない。一方、予想されるECBの利上げによるユーロ支援は断片化懸念によって損なわれ、ECBの信用は利回り格差拡大に過剰反応することで損なわれる。ユーロは政治危機が高まっているポンドに対してさえも買いを入れるには不十分だという。
ポンドドルも下値模索が続き、一時1.18ドル台まで下げ幅を拡大し、2020年3月以来の安値水準を更新した。
前日辞任したスナク英財務相の後任となったザハウィ新財務相は、低迷する景気にてこ入れすべく、速やかに減税に動く意向を示唆した。同相はマスコミとのインタビューで「減税をより進めていく決意だ」と述べた。また、計画されている法人税増税撤回については、「あらゆる選択肢を排除しない」と述べたうえで、「財政規律を維持しつつ可能な限りの競争力を持ちたい」と言明している。
ジョンソン首相への退陣要求が政権内から強まっている。前日はスナク前財務相やジャビド前保健相が辞任したが、本日はクワーテング英民間企業相も退陣が必要と党幹事長に提言したほか、側近のシャップス運輸相も首相に退陣を求め官邸入りしている。しかし、ジョンソン首相は閣僚に対して辞任の意向がないことを閣僚に伝えたと報じられている。
パーティ疑惑を巡って英国民の不満が非常に高まっており、世論調査では、ジョンソン首相は責任を取るべきとの回答が69%に上っている。ただ、これに対してポンド自体は比較的落ち着いた反応を見せており、対ドルや円では下落しているものの、ユーロに対しては上昇の動きを見せている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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